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[MOM4500]徳島市立DF川村琥太郎(3年)_高校ラストイヤーに急成長を遂げたCBが大仕事! 新たな“夢”に向かって走る男が希望を繋ぐ逆転弾

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DF川村琥太郎

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.4 選手権徳島県予選準決勝 徳島市立高 2-1 徳島商高 徳島市民球技場メイン]
 
 ボール支配率で上回りながらもゴールが奪えない。PK失敗の直後には警戒していた相手のエースに最終ラインを破られ、先制弾を決められた。直後に追い付いたとはいえ、このままでは終われない。最後の最後に巡ってきたチャンスを逃さなかった。

 負ければ2年連続の選手権出場を逃し、先輩たちが繋いできた10年連続の決勝進出の記録も途絶えてしまう。残された時間はアディショナルタイムのみ。土壇場で徳島市立高を救ったのはCB川村琥太郎(3年=STFC.Partida)だった。

 1-1で迎えた後半アディショナルタイム5分。残されたプレータイムはほとんどない。CKを獲得すると、185cmの大型CBはゴール前へ。相手のマークを振り切ると、FW山口凛太朗(2年)が蹴ったボールに中央で合わせた。

「あれはずっと練習でやってきた形。ボールが来た瞬間に決まるなって分かった」(川村)

 フリーで宙を舞うと、打点の高いヘッドをゴールに突き刺した。

 値千金の逆転弾。どこで喜ぼうか悩んでいると、仲間たちは既にスタンドの方へ走り出していた。後を追うように応援席の前に向かい、ベンチ外の選手の下へ駆け寄る。ハイタッチを交わす川村は顔をクシャクシャにして喜びを分かち合ったが、一通り手を合わせ終わると、最後は相手の応援席に向かって頭を下げた。

「相手の応援があったからこそ、決められた部分もある。煽っていると思われるかもしれないけど、(リスペクトの)気持ちを伝えたかった」

 そんな礼儀正しい一面を持つ実直なCBはシーズン前まで絶対的なレギュラーではなかったという。だが、仲間のアクシデントをきっかけに成長スピードが加速した。

「去年はベンチにすら入れなかった。でも、(昨季から試合に出ていた)瀬口竣介が怪我をして、自分にチャンスが回ってきた。色々経験を積み重ねていくごとに試合勘が養われて、スピードにも慣れてきたんです。シーズンの中盤頃にはトップレベルの動きにもついていけるようになったので、インターハイやプリンスリーグ四国での経験は大きかった」

 その成長ぶりには河野博幸監督も目を細める。

「今年1年間で一番良くなったんやないかなと。気弱なところもあって、瀬口も怪我でずっとおらん中でも頑張ってきてくれた」

 今では最終ラインの柱として絶大な信頼を寄せられており、1年前とは見違えるように逞しくなった。

 サイズがあり、空中戦に強い。横の動きにも対応でき、スピードもあるタイプ。次のステージでさらなるステップアップを予感させる。だが、自身は本気でサッカーに打ち込むのは高校までと決めている。大学では英語などを学び、将来的には語学に関わる仕事に就きたいからだ。

 年明けには大学受験を控えており、選手権出場を目指しながら現役合格を目指す。自分にとっては最後の大舞台。ここで負けるわけにはいかない。仲間と1日でも長くボールを蹴るべく、11日の決勝もチームの勝利に貢献するつもりだ。

(取材・文 松尾祐希)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
松尾祐希
Text by 松尾祐希

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