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[MOM4510]履正社MF長谷怜(3年)_チーム屈指のスピードスターが2ゴールで夏のリベンジに貢献「決めてやろうという気持ちが強かった」

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履正社高MF長谷怜(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.5 選手権大阪府予選準決勝 金光大阪高 1-2 履正社高 ヨドコウ桜スタジアム]

 決勝進出をかけた大一番の相手は、インターハイ予選の準決勝と同じ金光大阪高。1-3で敗れた夏のリベンジに貢献したのは、履正社高のMF長谷怜(3年)だった。

 北陽高でプレーした父親譲りの快足は、チーム内でも屈指。「長谷は器用なことはできないけど、非常に足が速い。相手はどちらかと言えば重点に視点を置くチームなので、守備が手薄になるのは分かっていた」(平野直樹監督)とサイドを切り崩すために、スタメン起用された。

 見せ場は開始早々に訪れる。前半7分に履正社が相手エリアの左でスローインを獲得。受けたMF宇都宮翔菜太(3年)が抜け出してクロスを上げると、真っ先にファーサイドから飛び込んだのは長谷だった。「宇都宮はドリブルが上手いのでクロスが上がってくるのが分かっていた。上手くゴール前にスペースが空いていたので、自分が入った」。上手くフリーで受けた長谷は「決めてやろうという気持ちが強かった」と上手く左足のインフロントで合わせ、ゴールネットを揺らす。

 幸先の良いスタートを切ったものの、得点後は勢いが続かない。20分にFW太田陸斗(3年)のゴールで追いつかれてからは金光大阪のペースとなり、履正社が攻める機会はごくわずか。長谷にボールが入っても対面したDF斎藤大靖(3年)が落ち着いた守備対応で縦を切ってきたため、持ち味であるスピードを生かした縦突破ができず、中への仕掛けが多くなっていた。

 試合前の履正社には2つのシステム案があった。一つは長谷を中盤の右に置く4-2-3-1。もう一つが長谷を前線に入れてゲームキャプテンのFW河野朔也(3年)と2トップを組ませる4-4-2。指揮官は「どちらでも良い」と選手に伝えていたが、前者で試合に入ったという。結果的に長谷が自由に動けるスペースが限られたため、後半に入ってからも持ち味であるスピードを生かせずにいた原因だった。

 苦しい状況を打開するため、長谷自らが動く。河野経由で反対サイドにいたベンチに「2トップにして貰えませんか?」と伝えて貰うと、後半半ばからシステムを変更。「右サイドハーフの時は何もできなかったので、FWになったらやってやろうという気持ちが強かった」と振り返る長谷はスペースを得て、再び躍動し始めた。

 効果はすぐに表れる。27分には左中間でボールを受けるとスピードで対面した相手を振り切り、ゴール前に速いボールを展開。後方から走り込んだ河野がダイレクトで合わせたが、シュートは枠の上に逸れた。31分には相手のクリアボールをDF田村遊吏(3年)が高い位置で跳ね返し、MF木村有磨(2年)がヘッドで落としたボールが長谷の下に入る。「後ろからのボールで自分の右側に相手がいると分かっていた」と振り返る長谷はキックフェイントでマークをかわし、素早く右足でシュート。この一撃が決まり、履正社が再びリードを奪うと2-1のまま試合を終えた。

 決勝進出の立役者となった長谷だが、今季の序盤戦は思い通りの活躍ができずにいた。プレミアリーグの開幕戦から交代の切り札として出場機会を掴み、第5節の大津高戦からはスタメンの座を奪ったが、チームの不調もあって得点は奪えない。だが、10月半ばに行なわれた第18節の名古屋U-18戦で今季初ゴールをマークすると上昇気流に乗っていく。「グランパス戦で点を決めてから、得点の感覚みたいな物が分かってきて、調子が上がってきた」。

 決勝でも勝敗の行方を左右するキーマンになるのは間違いない。狙うのは2年連続での選手権出場だ。昨年はなかなかAチームでの出番が訪れなかったが、練習からアピールに励むと選手権のメンバー入り。1回戦の東邦高戦ではアディショナルタイムに出場機会を得たが、出場時間は1分ほどと不完全燃焼のまま初の全国大会を終えた。

「やってやろうという気持ちが強かったけど、あまりボールが来なくて何もできなかった」。言葉通り、満足にプレーできなかった悔しさはある。1年経って逞しくなった今年は全国への返り咲きを狙っている。「あそこのグラウンドにもう1回立って、今度は自分が主役としてチームを勝たせたい」と意気込む男は決勝の舞台でも再び歓喜を呼び起こすつもりだ。

(取材・文 森田将義)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

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