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“相手の土俵”でもタフに戦い、流経大柏を撃破。前回の全国8強超え狙う日体大柏が千葉連覇へ王手

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前半12分、日体大柏高MF佐藤伸哉主将(左)が先制ゴール

[11.5 選手権千葉県予選準決勝 日体大柏高 2-1 流通経済大柏高 柏の葉公園総合競技場]

 日体大柏が“相手の土俵”でもタフに戦い、2年連続で千葉決勝へ――。第102回全国高校サッカー選手権千葉県予選準決勝が柏市の柏の葉公園総合競技場で開催され、日体大柏高流通経済大柏高に2-1で勝利。日体大柏は2年連続2回目の選手権出場を懸け、11日の決勝で市立船橋高と戦う。

 激戦区・千葉の決勝は一昨年度まで、ともにプレミアリーグを戦う市立船橋と流経大柏が9年連続で戦っていた。だが、昨年、日体大柏が旧・柏日体高時代の1972年度以来50年ぶりに決勝進出し、市立船橋を破って初優勝。今年も日体大柏が決勝への切符を勝ち取った。

 4000人近い観衆の中で開催された柏ダービー。立ち上がりは互いにやや落ち着かない展開だったが、その中で流経大柏が押し込み、右SB奈須琉世(2年)のロングスローなどからゴールを狙う。対する日体大柏は10分、左SB岡野隼眞(3年)が左タッチライン際で1人をかわしてから見事なサイドチェンジ。一つ狙いとする形が出てから落ち着いた日体大柏が、先制点を奪う。

 前半12分、日体大柏は右SB宗村将吾(3年)が同サイド前方のスペースへ縦パス。これを受けたFW大和田琉星(3年)が対応した相手のU-17日本高校選抜CB塩川桜道(3年)と競り合いながら強引に前へ出る。そして、マイナスの折り返し。これを「今までも信じてマイナスに入っていたので、今日、本当にそれを信じて入って、ゴールを決められて本当に嬉しいです」というMF佐藤伸哉主将(3年)がダイレクトで合わせ、先制した。

 日体大柏は18分にもMF今村海音(3年)のサイドチェンジから、10番MF片野拓久(3年)がドリブルで切れ込んで決定的なグラウンダークロスを入れる。狙いとするビルドアップ、サイド攻撃へ持ち込んでいた一方、流経大柏の鋭いプレッシングの影響もあってか、普段に比べるとロングボールの多い試合に。一方の流経大柏も前線とDFラインとが間延びしてしまい、高い位置でのボール奪取や人数を掛けた攻撃ができていなかった。

 流経大柏は前半24分、左クロスから再三高さを発揮していたMF田中ショーン涼太(3年)がファーで折り返す。だが、日体大柏CB神野匠斗(3年)が身体を投げ出してクリア。流経大柏はMF中田旭主将(3年)が攻守でボールに係わり、 FW山口裕也(3年)の仕掛けなどから同点を目指したが、「ちょっと単調だったなという感じがします」(榎本雅大監督)。また全体的にミスの多い試合になってしまっていた。

 そして、榎本監督が指摘したのは、「球際とか相手に取られてしまいましたよね。そこはらしくなかった」という点について。日体大柏の神野も「一人ひとり球際戦えていたのが一番だと思います」と振り返っていたが、競り合いで日体大柏の選手が上回っているシーンが散見された。

 日体大柏の根引謙介監督は、「本当、選手がタフに戦ってくれたというのが、一番じゃないですかね、勝因は。“相手の土俵”の中でしっかりと戦えたのは本当に良かったんじゃないかと思います」。球際の強度は流経大柏が伝統的にストロングポイントとしてきた部分だ。日体大柏はこの試合へ向けて準備し、ゴール前やセカンドボールの攻防など“相手の土俵”で良くバトル。また、この日はFW森田寿一(3年)が出場停止で不在だったものの、大和田とFW沼田大都(1年)が運動量を増やして守備面でも貢献するなど、流経大柏に主導権を握らせなかった。
  
 流経大柏は後半開始からU-17日本代表MF柚木創(2年)を投入。開始直後に左クロスを上げ切るなどチームを勢いづける。7分には柚木の好パスから田中がクロス。9分には右CKをCB高橋力也(3年)が頭で合わせる。だが、これは安定感の高い守備を見せていた日体大柏GK原田眞透(3年)が反応。逆に日体大柏は、大和田が推進力のある動きを続け、エース片野が左のスペースへの抜け出し、ドリブルから決定的なシュートやラストパスに持ち込んだ。

 そして、23分、日体大柏は片野の左CKからCB岡崎来夢(2年)がヘディングシュート。このこぼれを神野が左足で叩き込み、2-0と突き放した。その日体大柏は後半も強度が落ちない。流経大柏は失点直後に186cmCB塩川を前線へ。だが、日体大柏は神野が高さを発揮し、各選手が意識の高いカバーリングを続ける。

 日体大柏はこの日、今村が前後半に相手に競り勝ってガッツポーズ。集中力も、闘争心も持ってプレーしていた。神野は「一人抜かれてもそこのカバーは全体が意識して、一個ズレるとか流動的にやれていた」と頷く。その日体大柏は奪ったボールを長短のパスで繋ぎ、38分にはMF大内晴貴(3年)がワンツーから右足シュート。39分にも、左エンドライン際を突破した片野が決定的な右足シュートを打ち込む。

 だが、勝利への執念を見せる流経大柏はGK土佐昂清(3年)がいずれもストップ。そして、40+3分には交代出場MFオラツンジ・アダム(3年)が獲得したPKを中田が右足で決め、1点差とした。その後も前線へボールを蹴り入れるが、もう1点を奪うだけの時間は残されておらず、試合終了。インターハイ予選での決勝トーナメント初戦敗退をバネにしてきた日体大柏が、決勝進出を果たした。
 
 J1・柏レイソルと相互支援契約を結んで強化を進める日体大柏は、初出場した昨年度の選手権で8強。期待されて今年を迎えたが、関東大会予選は準決勝敗退、インターハイ予選も早期敗退と結果を残すことができていなかった。けが人も増加し、思うような戦いができず。根引監督は夏前頃が最も苦しかった時期だったと明かす。

 それでも、メンバーが徐々に揃い、チームも修正に成功。「選手たちがしっかりと相手を見ながらプレーできてきているというのが一番じゃないですかね。いつも形ではないと言っているので。相手をしっかりと見た中でプレーして行くというところで言うと、僕が選手に伝える情報は少なくなってきている」と根引監督は選手、チームの成長を認める。この日は“自分たちの土俵”に持ち込むことはできなかったが、「そこはまだ伸びしろがありますし、勝てばまだチームでやれる時間も増えるので、選手が成長できる時間がまだあるので楽しみにやりたい」と微笑んだ。

 千葉2強の一角を崩して決勝進出。神野は「自分が1年の頃は、市船・流経の決勝が決まっちゃっている感じだったと思うんですけれども、この歴史をまた塗り替えられたのは一歩成長だと思います。でも、ここ(決勝)で負けたらまた市船、という風になっちゃうと思うので、そこで自分たちがちゃんと優勝して、全国でも去年以上の結果が残せるように。みんな、今年は関東もインハイも結果が残せていないですし、みんな本当選手権に懸ける思いは凄く強いですし、一丸となってできている」と語り、佐藤は「正直言うと、(前回大会の選手権で勝ったという)プレッシャーが凄くて……。今年、インター、関東で結果を残せていないので、この選手権で千葉県優勝して全国で昨年の結果を超えられれば良いと思っています」。千葉の新時代を引っ張る存在へ。日体大柏が決勝も勝って2連覇を果たし、前回大会の成績を超える。

(取材・文 吉田太郎)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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