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全国行きを逃した「誰よりも悔しい」ワンプレーから一年…高精度の両足キック持つ注目株、今治東2年DF岡田瑛斗が2ゴール演出

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今治東中等教育学校DF岡田瑛斗(2年)

[11.3 選手権愛媛県予選準決勝 帝京五高 1-3 今治東中等教育学校 グリーンフィールド新居浜]

 精度の高いキックでゴールを演出した。セットプレーのキッカーを務める今治東中等教育学校DF岡田瑛斗(2年)はFKで1点目の起点を作ると、CKで3点目をアシスト。3年連続の愛媛県予選決勝進出に貢献した。一年前の決勝では、自らのプレーが帝京五高の決勝点を誘発。「めちゃくちゃ悔しい思いをしたので、もう絶対に負けられない気持ちで戦いました」。悔しさをバネに雪辱を果たしてみせた。

 攻撃力のある両WBを生かすために、谷謙吾監督は3-4-2-1の布陣を採用。指揮官が「推進力、シュート力もある」と評する2年生WB岡田は、ロングスローや両足から繰り出す高精度キックを武器に、セットプレーの起点として試合の流れを作っていく。

 前半36分、岡田が先制ゴールを演出する。中盤左サイドのライン際でFKを得ると、右足キックを放つ。「狙い通り、練習通りに行った」というボールは敵陣PA内のファーサイドで混戦となり、こぼれ球を拾ったDF樋口智大(3年)が右足シュート。ふわっと浮いたボールはゴールネットを揺らし、先制点となった。

 その後も左サイドからの攻撃は続く。前半アディショナルタイムには、岡田が左サイドからボールを浮かしてスルーパス。一気に加速したFW高瀬一光(2年)がPA左で相手のファウルを受け、PKを獲得する。FW大荒陽平(3年)が冷静に沈め、2-0と点差を広げた。

 前半を2-0で折り返すと、今治東は後半11分にダメを押す。岡田が蹴った左CKはPA中央にドンピシャで向かう。「キックには自信があるので、そこも狙い通りに行った」。待ち構えた樋口がヘディングシュートで合わせてチーム3点目。終盤に1点を返されるが、セットプレーで優位に立った今治東が3-1で決勝進出を決めた。

 一年前の雪辱を果たす機会を掴んだ。1年次からメンバー入りしていた岡田は、昨年度の愛媛県予選決勝で帝京五と対戦していた。試合終盤、相手の左CKにニアサイドで構えた岡田は頭でボールを逸らしてしまい、こぼれ球をファーサイドからのシュートで決められてしまう。その1失点が帝京五の決勝点となっていた。

「僕は去年も出ていて、僕がニアで逸らしてしまって、こぼれ球を決められた」(岡田)。あと一勝で全国という大一番、岡田は一年生で敗北を背負った。「その悔しさはこの中にいる誰よりも、人一倍持っていた」と振り返る。消えない悔しさは岡田の成長を後押し。「「絶対に負けないという気持ち」を絶やすことなく、練習でも仲間が苦しいときに誰よりも声を出すようになった。

 谷監督はその姿を見守り続けた。「苦しんだ経験が彼にはだいぶ残っている。だから相当成長していますね」と目を細める。「岡田が生きるような形で上級生との信頼関係もある。下級生の苦しさも、岡田はわかっている。だから声掛けだったりとか、そういったものがちゃんとできるようになってきている。毎年の歴史の中で成長していくことはすごく大事なこと」。指揮官は2年生WBを「僕はかなり将来性のある選手だと思っている」と強く推していた。

 指揮官が岡田を推す理由のひとつは、両足でボールが蹴れることだ。もともと右足のキック精度に自信があったことからサイドバックとしてプレー。すると、中学2年次に両親から左足キックの練習を勧められる。それ以降は左足だけを使って練習に励み、いまでは両足ともに同じ精度で蹴られるようになった。

 一言で「蹴られるようになった」わけではないという。「めちゃくちゃほんまに練習はしました。右足を一切使わないようにやっていた。本当にそこで上手くなった」。それは急に蹴られるようになる感覚ではなく、少しずつ実感していくようになる感覚。そして、逆足でも蹴られるということがプレーに大きな幅を生んだ。

 12日の決勝では済美高と対戦する。岡田が抱くのは、昨年悔しさを味わった先輩たちへの思いだ。「この一年間ずっと悔しい思いをして、去年の6年生(高3)にも申し訳ない気持ちもあった。だから絶対に圧倒して勝って、僕たちが去年の6年生に恩返しをするために、活躍できたらいい」。再び赴く決勝の舞台で、今度は栄光をつかみ取るつもりだ。

(取材・文 石川祐介)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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