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[MOM4535]昌平DF田中瞭生(3年)_ 先制弾&無失点勝利。主将から託された「5」が埼玉決勝で輝く

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前半28分、昌平高右SB田中瞭生(3年=FC LAVIDA出身)が左足シュートを決めて先制点

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.14 選手権埼玉県予選決勝 昌平高 2-0 浦和南高 埼玉]

 主将から託された「5」が、埼玉決勝で輝いた。前半28分、昌平高は右サイドでボールを受けた右SB田中瞭生(3年=FC LAVIDA出身)が、鮮やかな切り返しでPAへ侵入。そのまま左足を振り抜く。ボールはDFの足とニアポストを弾き、ゴールへ吸い込まれた。

 中央でフリーのMF大谷湊斗(2年)がボールを持った瞬間からシュートをイメージしていたという。「結構高い位置を取れる状況にあったので、湊斗が持った瞬間に来たら打ってやろうというのがありました。右でクロスを上げるとみんな思っていたと思うんですけれども、フェイントで使って左足振り抜こうと」。切り返しは得意の形。元日本代表FWの玉田圭司スペシャルコーチらコーチ陣も賞賛した一撃で先制点を叩き出した。

 田中の背番号5は昨年、今年とCB石川穂高主将(3年)が背負ってきた番号だ。その石川は今年7月末の練習中に左膝を大怪我。今大会は登録外で、ピッチ外からチームに声を送り続けていた。

 FC LAVIDA時代から仲間の「5」は、田中の背に。「準々決勝の時とか、(石川から)『オレが背中にいると思ってプレーしろ』と言われていて、結構デカいですね。(自分に)穂高の力はないけれど、穂高がいるからというのがある」。石川の分もできることをやり切ろうという思いがあった。

「穂高の存在は結構大きくて、自分なんかじゃ埋めることはできないと思っていて、でも、ちょっとくらいは。みんなで、このDFライン4人で力を合わせて穂高の分までやろうとは毎回円陣の時に話したりしています」

 これまでは守備が課題だった。だが、プレミアリーグEASTでU-17日本代表MF柴田翔太郎(川崎F U-18、2年)ら強烈なアタッカーたちとマッチアップ。1対1や背後への対応を意識しながら課題を改善してきた。この日は他のDF3人らとともに石川の分も無失点勝利。「5」の役割を果たした。

 村松明人コーチはその田中について、攻撃力の高さや守備面での成長を評価した上で「アイツは大事なゲームでやれますね。今日は貴重でしたね。(メンタル面は) 彼の良いところじゃないですかね」とコメント。常にメンタル面が安定し、どの試合でも一定のパフォーマンスを発揮することができる。試合前の集合写真撮影時には、常に一際声を張り上げて盛り上げている姿も印象的だ。

「(自分たちのように)いつもうるさいヤツらが試合前に黙っちゃうとチームも静かになっちゃうんで、やっぱり常に声を出して盛り上げたいというのは自分の中でやらなければいけないという行為だと思います」。自分が声を張り上げることで普段大人しい選手も一緒に盛り上がってくれる。田中の周囲を巻き込む力も貴重。「(今後も)声のデカさやきょうのインタビューで(緊張で早口になってしまい、スベってしまって)あまり出なかったけれど、ユーモアとかは出していきたい」と微笑んだ。

 全国大会前には、強力なライバルが戻ってくる。昨年のレギュラー右SBで、U-17日本高校選抜DF上原悠都(2年)が間もなく復帰。昨年、U-16日本代表としてU17アジアカップ予選に出場している上原は、守備能力やヘディングの強さに注目のSBだ。上原は左サイドのプレーも可能だが、田中は「右でも負けたくない」。田中は中学時代、昌平中に通いながらFC LAVIDAで武器を磨いてきた。選手権は昌平での6年間の集大成。さらに成長し、全国大会でも先発としてピッチに立つことを目指す。

「攻撃面とかはこれからも意識して、点だったり、アシストだったり、守備も無失点でチームを勝たせるというのは重視したい」というプレーを全国舞台で存分に発揮すること。そして、この日のように、「大事なゲーム」で再び輝く。



(取材・文 吉田太郎)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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