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球際、切り替え、運動量で鹿児島城西のプレーモデルを表現し、小さな差を創出。160cmの10番MF石内凌雅が好パスで決勝アシストも

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毎試合、鹿児島城西高のプレーモデルを表現する10番MF石内凌雅(3年=鹿児島育英館中出身)が決勝アシスト

[12.15 選手権鹿児島県予選準決勝 鹿児島城西高 1-0 鹿児島実高 白波スタ]

 今年2月の九州高校新人大会期間中、鹿児島城西高の新田祐輔監督は10番のMF石内凌雅(3年=鹿児島育英館中出身)について、「石内は今、俺らのゲームモデルなんで。追っかけ回す、身体を張る。小さい選手が背番号10番をつけている。我々の粘ってやってきたゲームモデルですね」と語っていた。

 1年間通して伝統校の10番を背負ってきたMFは、城西のプレーモデルを表現することを目指してきた。「城西の10番っていうのは、エースとかなんですけど、自分はそんな技術ないので、 技術ないなりに何ができるかってなった時に、やっぱ城西のモデルにならないとチーム自体も個人も上手くいかないので」と説明する。

 そして、「ベースである球際とか、切り替えとか、走るとか、その当たり前のことを当たり前にやって、チームを勝たせるような選手になろうっていうのを自分は心がけてやってきました」。球際、切り替え、運動量を当たり前にやる。その姿勢で九州高校新人大会やプリンスリーグ九州1部での優勝、プレミアリーグ昇格に貢献してきた。この日も10番が献身的な動き。攻守でボールに係わり、絶妙なラストパスで決勝点を演出した。

 味方選手をサポートして相手ボールを奪取。そして、瞬間的な速さと強さでボールを10m、15mと前進させていた。相手の厳しいチェックを受けるシーンもあったが、速攻の中心に。そして、0-0の後半35分にカウンターから右サイドへ抜け出したFW岡留零樹(3年)へ好パスを通す。ここから仕掛けた岡留が左足で決勝点を叩き出した。

「カウンターを自分もかなり狙っていて、ボールが来る前にどこにスペースがあるとか、どこに敵がいるかっていうのは、見ていました」。ボールを受けた際にはゴールを背にした状況だったが、岡留からボールを要求する声も届いていたという。例えパスが通らなくても、味方が押し上がることを計算し、感覚的にスペースへ配球。「結果的に上手くいきました」というパスが貴重な1点に繋がった。

 10番として、試合を決定づける仕事もして勝利に貢献。石内は「去年、この舞台で負けて、それは正直、自分のせいだと思う」と振り返る。そこから1年間、鹿児島城西のモデルになるプレーを継続。チームからの信頼を高め、“因縁”の準決勝を突破した。

 毎試合、チームの先頭に立って鹿児島城西のプレーモデルを表現することは簡単なことではない。それでも、表現できるか、どうかが勝敗を分けると考えて必死に継続してきた。「当たり前のことを当たり前にやるのは意外と難しい。でも、自分がやるか、やらないかで、結果に繋がると思う。そこが小さな差で勝利に繋がると思うので、そこは意識してやっています」。7年ぶりの選手権出場へあと1勝。決勝でも自分がわずかな差を作る意気込みだ。

 神村学園の選手で最も意識する相手はU-17日本代表左SB吉永夢希(3年)。決勝もマッチアップが予想される相手だ。「(意識するのは)夢希。新人戦の時とかも、結構バチバチやってて、去年も彼出ていたんで。ライバルって訳じゃないですけど、バチバチにやり合えるいい相手だなって思いながら、いつもプレーしています」。相手は高卒でベルギーの強豪・ゲンクへ加入する注目プレーヤー。強敵を封じ、上回って白星をもたらす。

「今、こうやってプレミア(リーグ昇格)を決めて、城西も盛り上がってきて、鹿児島も盛り上がってきてると思うので、もう1個先、全国大会を目標に。選手権優勝っていうのを目標に城西に入ってきたので、あとはもう思い切って、明日は絶対優勝して全国に行けるように頑張りたいなと思います」。身長160cmの10番は鹿児島城西のやるべき球際、切り替え、運動量を誰よりも表現し、勝って、仲間たちと優勝を喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)

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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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