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U-17W杯で衝撃の4発。日章学園の2年生FW高岡伶颯「この選手権で、日本に知ってもらいたい」

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U-17ワールドカップで4ゴールの大暴れ。日章学園高(宮崎)FW高岡伶颯(2年=三股町立三股中)は選手権で自身の名を広める

 11月に開催されたU-17ワールドカップで4得点。U-17日本代表のグループステージ全得点を叩き出し、チームの救世主となった。日章学園高(宮崎)FW高岡伶颯(2年=三股町立三股中)の次なる活躍の舞台は、12月28日に開幕する第102回全国高校サッカー選手権だ。当時1年生だった前回大会は初戦敗退。そこからの1年間で周囲も驚くほどの成長を遂げてきた。誰よりも強く感じさせるボール、ゴールへの執着心とスピード、強さを活かした攻守が、対戦相手の脅威に。スーパーゴールの数も増やしている注目ストライカーが、名古屋高(愛知)との初戦(12月29日)から輝く。

―去年も出ているけれど、選手権出場が決まってどのような気持ち?
「去年、前橋育英に1-2という形で敗戦してしまって、その次の日から、朝から走って、この選手権に本当に懸けてきた思いは、みんな大きいと思いますし、(今年の)夏負けて、この選手権で勝ったっていうのは、僕たちの本当に大きな成長だと思う。そこも自信にして、去年のような1回戦敗退じゃなくて、名古屋高校に勝って、まずは1回戦突破を決めて、一つ一つの試合を勝ち抜いていきたいと思ってます」

―この1年間、信じられないぐらい人生が変わったと思うけれど、どういう1年間だった?
「(初選出されたU-17日本代表の)3月のアルジェリア遠征から始まって、その前に九州新人があって、そこで少しアピールができたところもあって。課題もたくさんありましたけど、その後に3月のアルジェリア遠征で凄く良い経験をさせてもらって、アジアカップ、ワールドカップに行けて、僕も代表活動で、本当に信じられないようなペースで成長してきたなっていう感じはあります。それよりも、トップのレベルでやっていくためにはどういう風にやれば良いかなど、凄く高い基準でプレーできたので、そこは本当に自分自身も成長しながら、なおかつチームにも落とし込んで、チーム自体も、僕自身も、成長できている部分なのかなと思います」

―もう、1年前とは違う。
「心の余裕、メンタルの部分でも、少し違います」

―去年の選手権、改めてどんな大会だった?
「僕も(22年)夏のインターハイで出させてはもらったんですけど、何もできなくて。まだまだ何も全国のレベルが分からない状況で、前橋育英戦でフル出場という形だったんで、何も想像できなかったですし、やっぱそこがトップとの経験値の差なのかなっていう風には大きく思いました」

―去年の前橋育英はとても強かったと思うが、何もできなかったという印象?
「できなかったっていう感触よりは、『凄く楽しい』というような試合で……。でも、悔しかったので、逆に楽しみながら勝ちたいなっていう風には、凄く思いました」

―楽しかった?
「楽しかったですね。色々と課題などが見つかったので」

―強い相手とやると楽しくなる?
「そうですね。強い弱いに関わらず、練習試合でも、試合でも、練習でも、凄く向上心を持って試合なども楽しみながらやってます」

―選手権予選は2年連続決勝戦でハットトリック。反響が大きかったけれど、どのような予選だった?
「1年前、ハットトリックして選手権予選を終えて、その後の前橋育英戦で何もできなかった。今回の選手権ではハットトリックしたけれど、その前に代表などで凄く良い経験をさせてもらってたので、今回は違うような、全国に本当に繋がるようなハットトリックだったのかなと思います」

―それを今回、どのように繋げていきたいと思っている?
「まずは一つ一つの試合に集中して、先のことを見ずに、個人としても、チームとしても、全員で勝ちをもぎ取って、『本当に高岡しかいないな』と日本から思われるようにしたいです」

―組み合わせを見て、どういう印象?
「そうですね。名古屋高校は初出場ということで、映像など見て凄く面白いチームだなという風に思いました。選手権ってトーナメントなので、何があるか分からないので、どのチームが来てもいいように、そこは対応しながら勝てるチームが強いと思うんで、対応能力という部分も含めて、僕たちがやってきたことも信じながらやっていきたいと思ってます」

―激戦区に入ったなっていう印象。
「去年も岡山学芸館だったり、本当に強かったけど、何かあんま知られてなかったチームがああやって(混戦を勝ち抜いて)全国優勝している。日章学園もあまり日本では名も出てないと思うので。その中でも勝ち続けるチームが強いなっていう風に思います」

―対戦したいチームとかある?
「一番すか? (去年敗れている)前橋育英とやりたいです。(対戦するためにも、)決勝、絶対行きたいと思います」

―今大会は自分の中ではノルマみたいなのあるかな。
「(チームが勝つことが第一だが、)得点王も狙いながらっていう感じです」

―過去の選手権で印象に残っている選手やチームはある?
「僕が印象に残ってるのは、松木玖生選手たちの代(の21年度の青森山田高)で、本当に全員が戦って、泥臭い、最後まで諦めない、勝ってても泥臭いプレーがあって、本当にそこは僕も見習いながらっていう風にその時思いました」

―松木君じゃないけれど、原(啓太)監督が言っていたのは、高岡君がチームに求めることが多いと。2年生でも自分がリーダーシップを持ってという考えなのかな。
「これからの進路は分からないですけど、もしプロに行ったら、一からのスタートになると思うので、僕の高校生活で出し惜しみがないように、常に僕も本気で日本一を目指して、チームも目指してるので、そこは僕も代表から帰って本当に落とし込みながらっていう感じです」

―だいぶ理想に近づいて来ている。
「そうですね。まあ、最初よりは凄く良いチームになって来ています」

―今年の日章学園はどんなチーム?
「みんな上手なのは普通なんですけど、それよりも、最初の頃より戦うっていう部分で泥臭くっていう風に、みんな戦って、泥臭いチームだと思ってます」

―U-17ワールドカップは高岡君の名を全国に知らしめる大会になった。
「ワールドカップ、最後(決勝トーナメント1回戦)のスペイン戦で決めきれなかったっていうのは、自分のまだまだ未熟なところだと思いますし、逆にスペイン戦の前までは4得点という形で終われていた。でも、4得点という形で終わったものの、スペイン戦で決め切れなかったっていうのはもっともっと伸びしろがあると思うので、そこはもっとチームを勝たせられる選手になるように。まず、この選手権で、日本に知ってもらいたいと思います」

―世界で通用したところ、課題になったところ、それぞれどのように感じている?
「課題は本当にアルゼンチンの10番のエチェベリだったりはアジリティだったり、凄く器用な選手で、本当に僕が見てた中で1番アジリティのある選手で、僕もアジリティとスピードが武器なので、その部分では本当に良い刺激をもらいました」

―帰ってきてからもかなりアジリティについて、練習しているようだけど変化はある?
「そうですね。エチェベリと一緒っていうのはないですけど、それ以上、超えられるように頑張っています」

―逆に自信になった部分はどういうところ?
「自信になった部分は、決め切る部分だったり、セネガル戦の前線からのプレスからのゴールなど、僕の特長も活かせた試合だったので、そういう部分では泥臭いプレーだったり、スピードの部分だったりが本当に自信に繋がりました」

―アジアでの自分から、評価を変えられた。
「結果が出ないとチームの信頼もないと思うので、そこはアジアカップよりかは、少しはもらえたのかなと思います。まだまだですけれども」

―4つのゴールの中で一番嬉しかったゴールは?
「ポーランド戦が一番嬉しかったです」

―度肝を抜くようなシュートだったけれど。振り返えると?
「ポーランド戦の時は、(途中出場の多かった)アジアカップの記憶が凄く残っていて、その中でまたって言ったらあれですけど、サブからのスタートで。でも、アジアカップと同じ状況でやらないといけないなっていう風に思ってたので、そこでチームを助けられる1発を決めれたっていうのは、凄く頭に残ってます」

―ゴールに突き刺さるというか、突き破るようなゴールだった。
「切り返した時にもうどフリーだったので、そこで振り抜くだけでした」

―自分にとって当たり前のようなゴール?
「当たり前ですけど、ちょっと違うような感じはありました」

―どんな感情になった?
「決まるか?とか思いながら、ほんとに感覚であそこは振ったので、決まった時にはもう会場がワーってなっていて、僕もそのままパフォーマンスしちゃったんで、本当に嬉しかったです」

―(両足を広げるように)ジャンプしてから手を下側に出すゴールパフォーマンス。
「アジアカップのあのオーストラリア戦で決めて、意識してるっていうよりかはジャンプし過ぎちゃうっていう部分が自分の中ではあるので、ジャンプしすぎて、手が追いつかないというか、それで手が下にいっているような(パフォーマンスになっている)のは凄くあります」

―無意識でやっている?
「ヨッシャ、ってなった時に、もう跳び過ぎてっていう感じです」

―高校入るまでの高岡君は、どのような選手だった?
「中学校の頃は、公立中学校で、みんなサッカーも勉強も頑張りながらっていう風に、部活をしていました。中学校の時は、(地域トレセンで一緒だった神村学園MF)名和田我空だったり、(小学生時代に)身近にいた人が活躍していて、中学校の頃は僕もその焦りとかで周りにちょっと言い過ぎてしまったりしていたのがあったので、それに比べると、今の自分はチームのことも考えながら、代表などにも入って、少しはそういう部分も成長したのかなと思います」

―焦っていた。
「焦ってたっていうか、ちょっと良いな(羨ましいな)って感じで。でも、別に日本一を目指すのはどこの中学校でも良いだろうっていう感覚だったので、そこは自分が選んだ道だったので、『高校で勝負してやろう』っていうのはありました」

―中学時代、九州3位で高岡君の評価を上げたんじゃないかなと思うけど、そこはどうかな?
「そこで名和田我空などと戦って、あまり差がないなっていうのが正直だったので。また、チームの層も、みんなで頑張っていきながらっていう風だったので、それを考えたら、(クラブチームではなく)中体連だったから日章学園にも来れたっていうのもあったので、そこは本当に良かったと思います」

―日章学園を選んだ理由は?
「(監督の)原先生の熱い指導だったりが本当に僕の心を揺るがしてくれて、なおかつ環境も凄く良い高校だったので、『ここなら成長できる』っていう風にもう思ったので、ここを選びました」

―日章学園での成長はどの部分が大きかった?
「一番大きかったのは僕が1年生の頃の県インターハイの時にベンチ外になってしまって、それまでプリンスリーグなどもメンバーに入っていたので、そこでベンチ外というメンバーにも入れない、応援っていうのは、本当にキツかったです。それが終わって、去年の主将の工藤珠凜君(現国士舘大)に、『オマエ、やんないといけないよ』『全国に行って活躍しないと』っていう風に言われたので、本当に工藤君にも助けられましたし、それがあったので、中学校の僕じゃないですけど、ちょっとうるさくプレーして、そこから今の自分のプレースタイル通り戦うっていう、泥くさいプレーが僕にはしっくり来るので、本当にそこで取り戻した感じですね」

―普段、寮ではどのようなことをして過ごしている?
「帰ってご飯など食べた後はお風呂入って、ストレッチして、夜もう一食っていう感じですね」

―夜食は何食べる?
「お餅とか普通にご飯とか食べます。少しでも体重を落とさないように」

―他の時間の過ごし方は?
「暇な時はグラウンドに来て。来れる環境じゃない時は、音楽を聞いたり、寝たりして過ごしています」

―音楽は何を聞いていますか?
「清水翔太をずっと聞いています」

―清水翔太が好き?
「清水翔太、好きです。(好きな曲は)『My Boo』とかです」

―他にサッカー以外では何をしている?
「ちょっと気分転換にお買い物行ったり。友達とご飯食べに行ったりっていうのは多いです。(どこに?)それは、もう秘密ですよ(微笑)」

―好きな選手はいますか?
「前は古橋亨梧選手とか町野(修斗)選手とか言ってたんですけど、今はイングランド代表だったマイケル・オーウェン選手」

―どういうところが好き。
「小柄だけど、あのアジリティがもうキレッキレで。すごく僕に似てるというか。僕が目標にする選手という風に思っています」

―スパイクは普段何を履いている?
「(アディダスの)『X』は足幅も広くなくても入るので、そこを重視したり、軽さも本当にスピードにとっては1ミリの重さも変わるので、そこは凄く意識して選んでいます(トレーニングではミズノのアルファもテスト)」。

―ギアなど何かこだわりはある?
「腕にテーピングを巻いたり、試合前に逆立ちをしたりっていうのはあります」

―逆立ち?
「頭の緩め具合だったり、ちょっと体幹もブレてしまったりするので、腕も使いながら(リラックスする)」

―なぜそんなに速かったり、馬力があるのかな。
「世界に比べたらスピードやアジリティはないですけど、本当に野心を持ってボールを追いかけてるのが本当に速く見えるっていう風にも思われるので、そこはスピードというか、(自分が速いのは)もう一瞬のスピードですかね」

―身体能力があるとはあまり思っていない?
「ジャンプだったりは世界と戦って自信がない訳ではないですけど、世界と比べたらまだまだだなっていう風に思います」

―選手権では見る人にはどういうところを見て欲しい?
「僕の泥くさいプレーだったりを見てもらえたら魅力的なプレーばかりをすると思うので、泥くさいプレーと前線からのプレスだったり、守備の部分だったり、最後のフィニッシュの部分も凄く見て欲しいです」

―得点王候補という声もあるけれど、そこはどうか。
「まだ何があるか分からないので、本当にチームを勝たせられるのが良い選手だと思うので、得点王ばかりに焦らず、チームが勝つのが一番だと思うので、チームが勝ってこその自分のタイトルだと思うので、そこは勘違いせずにやっていきたいと思っています」

―国立に立ちたいという思いは当然強いと思うが。
「国立、開幕戦などを見て、本当に良い雰囲気でやれると思うので、本当にこれからの人生を少し変えたいって思えるようになるには、まずはあの国立に行かないといけないと思うので、そこは本当に凄く強い思いがあります」

―最後、自分にとってのライバルは誰かな。
「今回、スペイン戦で、1ゴール決めた名和田我空だったり、本当に今回のワールドカップでは(満足の行く活躍ができなかった)っていう部分になるんですけれども、アジアカップだったり、もう本当に、今まで良い刺激をもらってきたのは名和田なので、そこはもうライバルを誰かに変えるとかではなくて、もう、本当に名和田がいつでも、どういう状況でも、活躍して、本当に良い刺激をくれるんで、そこは名和田我空。ライバル。僕は思ってるんですけど、あと(アルゼンチンの)10番のエチェベリだったり、そう思います」

―改めて、オリンピックやワールドカップへの思いも強くなったのでは。
「またあの舞台に行きたいっていうのは、スペインとの試合のホイッスルが鳴った後に凄く思いました」

(取材・文 吉田太郎)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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