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選手たちが緊張をほぐす声がけと修正力で改善。広島国際学院は恩返しの全国1勝

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広島国際学院高が全国初勝利を喜ぶ

[12.28 選手権開幕戦 早稲田実高 0-2 広島国際学院高 国立]

 広島国際学院高が国立競技場で全国大会初勝利。広島電気大附高時代から35年間に渡って指導する瀬越徹総監督は、「(これまで支えてくれた他校の方々に)今日の試合は恩返しできたと思います。どうもありがとうございました、という恩返しはできました」と微笑んだ。

 地元・早稲田実高の大応援に対し、アウエーの雰囲気。谷崎元樹監督は「ヒールという役割が彼らは好きなので、『ギャフンと言わせてやろう』と送り出しました」。ただし、立ち上がりは主将のCB茂田颯平(3年)が「最初は自分自身も会場の雰囲気に飲まれて、良い入りができなかった」と振り返るスタート。過緊張のような選手もいて、ミスで決定機を与えてしまうなど、バタバタしてしまうシーンが散見された。

 ただし、瀬越総監督が「とにかく仲が良いです。ベンチも全部3年生じゃないですか。それで、色々なコミュニケーションを取っています」というチームは自分たちで立て直す。

 失点に繋がりそうなミスに対しても、各選手は緊張をほぐす声がけ。MF長谷川蒼矢(3年)は「やっぱり仲がいいんで、ミスした選手にはイジったりして緊張をほぐしたりしてましたね」と振り返る。

 上手く行かない時間帯が前半半ばまで続いた。だが、谷崎監督が「ゲームの中で修正できるのが今年の強みかなと思っていた」というチームは自分たちで意見を出し合いながら修正。そして、前半28分、左スローインの場面で選手たちは自発的に変化を加える。ロングスローを警戒した相手の守りをショートのスローインでズラしてからクロス。ゴール前で長谷川が競り勝ち、最後はFW野見明輝(3年)が先制点を叩き出した。

 後半は相手の守りを広げながら縦パスを狙うなど意図した攻撃でリズム。そして、再びセットプレーから長谷川が決めて2-0と突き放した。そのリードを集中力高く守り切り、2-0で全国大会初勝利。今年はインターハイで全国大会初出場を果たしていたが、初戦敗退に終わっている。それだけに、谷崎監督は「インターハイで負けて、それからチームを立て直していく中でここを目指してやってきて、ここでやらさせて頂いて勝つことができた。彼らにとっても、我々にとっても嬉しい勝利をすることができました」と喜んだ。

 悲願の全国1勝。それも聖地・国立競技場での初白星だ。昨年まで監督を努めていた瀬越総監督は「あの環境で、あの雰囲気でサッカーできて、勝てたというのはやっぱり大きいと思いますね」と頷く。創部70年の広島国際学院がまた新たな一歩を刻んだ。

 瀬越総監督が赴任した35年前の当時は部員わずか8名。「誰もおそらく10年前に国際学院が全国の舞台に立つなんて誰も思っていないと思いますよ」と苦笑する。「どこへ行っても相手にされなかった」時代から、少しずつ強豪校が練習試合で対戦してくれたり、宿泊合宿に来てくれたのだという。そして、人工芝グラウンドの完成など少しずつ中学生が広島国際学院に目を向けるようになった。そして、部員8人からでも全国大会で勝つチームになれることを証明。サポートしてくれた人々への感謝の「ありがとう」だった。

 本気で上を目指す広島の高校も勇気づける1勝だ。ただし、広島国際学院の戦いはまだまだこれから。コーチ陣も、選手たちも次の試合を見据える。2回戦は静岡学園高対明徳義塾高戦の勝者と激突。広島国際学院は初勝利の経験も成長に繋げ、次も勝つ。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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