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[MOM4575]前橋育英FWオノノジュ慶吏(2年)_風呂場の骨折から半年離脱も…待望の選手権で初戦2ゴール

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前橋育英高FWオノノジュ慶吏(2年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.29 選手権1回戦 前橋育英 3-1 立正大淞南 ニッパツ]

 一年前は怪我に泣いたが、今年は初の選手権でさっそく躍動した。前橋育英高(群馬)は立正大淞南高(島根)に3-1で勝利。選手権初出場のFWオノノジュ慶吏(2年)が1点目と3点目を沈め、初戦突破に大きく貢献した。

 もともとスタメンの予定ではなかった。オノノジュは本来出場する予定だった選手が膝を痛めたことで急きょ先発入り。山田耕介監督は「練習で本当に目がギラギラしていた」とオノノジュ起用の経緯を語るも、当の本人は「最初はめちゃくちゃ緊張していた。体も固かった」と試合の入りを振り返る。だが、その真価はすぐに発揮された。

 前半18分、オノノジュはMF石井陽(2年)の縦パスをPA右で受けると、ゴール方向に体を向ける。「ターンしたときにGKが右に寄っていた」。利き足の右とは逆の左足シュートを放ち、ゴールに突き刺した。

「左足はダフることが多いけど、落ち着いてちゃんと打てばいいコースに飛ぶ」と自画自賛。昨日までの練習ではシュートも不発だったこともあり、「(ゴールを)決められたことは本当にうれしくて、自信にもつながった」と価値ある一発になった。

 前橋育英は前半25分のPKでMF山崎勇誠(3年)が2点目を挙げる。だが2-0で折り返すと、後半8分には立正大淞南に1点を返された。山田監督も「2-1のままだと相当大変だった」と嫌な雰囲気を察知していたが、それを払しょくしたのはオノノジュだった。

 後半25分、FKのボールが敵陣に入り込むと混戦。ゴール右ポストを叩いたところで、オノノジュの前にボールが落ちた。「ここら辺に来るかなと思って待ってたら本当に来た。あとは反応するだけ」。右足で押し込み、勝利を決定づけるゴールとなった。

「選手権でゴールを決めることが自分の目標」。そう語るオノノジュだが、一年前のこの時期は怪我に苦しんでいた。「恥ずかしいんですけど……」と明かした内容は風呂場で滑ったことによる左足親指の骨折。3か月で復帰したが、今度は練習中に再び骨折してしまい、さらに3か月を治療に費やした。4月に復帰すると、プレミアリーグEAST第5節・尚志高戦でゴール。その後はコンスタントに試合に絡むようになった。

 オノノジュの父はナイジェリア人で、日本人の母はバレー経験者。FWガブリエル・ジェズス(アーセナル)に憧れており、「大きいわけじゃないけど足元もあって収められるところ。身長も自分と似ていて目標の選手にしている」と語る。持ち味は体の強さとシュートの威力。山田監督も「(前橋育英には)今までいないあまりタイプ。ものすごく賢い選手だと思っている。言うことをすぐ理解できるし、これからもっと伸びてくれるかな」と太鼓判を押していた。

 初戦で好スタートを切り、オノノジュはさらなる意欲をのぞかせる。「今日こうやってゴールを決められて、もっともっと決めたいという欲が出てきた」。トーナメントを勝ち上がるためには起爆剤が必要だ。「もっと活躍したい」と語る2年生FWからは、大ブレイクの予感が漂っていた。

(取材・文 石川祐介)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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