beacon

[MOM4584]初芝橋本MF大丸龍之介(3年)_とにかく謙虚な「主役の座を獲っていくスペシャリスト」が2ゴール1アシストの大爆発!

このエントリーをはてなブックマークに追加

2ゴール1アシストの活躍を見せた初芝橋本高MF大丸龍之介(3年=ガンバ大阪堺ジュニアユース出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.29 選手権1回戦 帝京三高 2-3 初芝橋本高 駒沢]

 それはもちろんゴールに関わる活躍は嬉しいけれど、もっと大事な目標がある。すべてを懸けて真剣に向き合うサッカーは、この大会が最後だと決めているから、思い残すことのないような結果を、みんなと一緒に、どうしても手にしたい。

「自分の得点数はそんなに気にしていないので、とりあえず『勝てればいいな』という感じですし、チームの勝利に貢献できればなと思っています」。

 初芝橋本高(和歌山)の15番は「主役の座を獲っていくスペシャリスト」。2ゴール1アシストを叩き出したMF大丸龍之介(3年=ガンバ大阪堺ジュニアユース出身)の躍動が、チームにとって13大会ぶりとなる冬の全国勝利を鮮やかに引き寄せた。


 いきなり得点で、その存在をアピールする。前半4分。初芝橋本が掴んだFKのチャンス。MF池田真優(3年)の短いパスから、DF三浦晴太(3年)が強烈なキックをクロスバーにぶつけると、こぼれたボールに誰よりも早く15番が反応する。

「監督からも前日のミーティングでゴール前の反応というところを言われていたので、それをできたのは良かったと思います。良いFKだったので『入るかな』と思ったんですけど、運よく自分のところにこぼれてきてくれました」。まずは1ゴール。

 次のスポットライトも、自らの得点でさらう。14分。初芝橋本が右サイドで奪ったFK。キッカーの池田がポイントに立つと、もう大丸とマーカーとの駆け引きは始まっていたという。

「1回自分がオフサイドになりかけて、蹴る直前に自分が戻って、引いて、相手がラインを上げたところでマークを外せたので、そこは良かったです。(池田)真優のボールがとても良かったので、ゴールとの距離も近かったですし、あとは当てるだけという感じでした」。きっちり頭で押し込んで、早くも2ゴール。

 さらに輝いたのは、正確に送り届けたアシストによって。33分。左サイドでパスを受けたFW竹内崇真(3年)が丁寧なパスを縦へ。抜け出した大丸は冷静に中央を確認しながら、ピンポイントクロスを送り届けると、FW朝野夏輝(3年)が合わせたヘディングが、確実にゴールを捕獲する。

「ヘディング以外にも、自分は2列目からの飛び出しも得意なので、良いクロスを上げられたなと思います」。これで圧巻の2ゴール1アシスト。3点のリードを持って迎えた後半は2点こそ返されたものの、チームは逃げ切りに成功。「無失点で終わるというところは目標だったんですけど、追い付かれそうな中で勝ち切れたというのは、次に向けても良い経験になったかなと思います」と口にした大丸の得点に関わる才覚が、チームが挙げた勝利の重要なピースを担ったことは間違いない。


 もともとは大阪の出身。進学先の高校を考える時に、「『全国の舞台に立ちたい』というところが大きかったんですけど、大阪だとどこが出るかわからないので、どこだったら全国に出られる可能性が高いかなと考えた時に、監督もメチャメチャ熱心な人だということはわかっていましたし、そこで自分が出て活躍できればいいなと思って」初芝橋本を選んだという。

 その謙虚さは言葉の端々に滲み出る。「今日も得点というところを見れば自分が目立ったかもしれないですけど、そこまでチームのみんなが繋いでくれたボールなので、みんなのおかげかなと思います」。自分の結果より、チームの結果。その優先順位にはいささかのブレもない。

 憧れているのはレアル・マドリーでプレーするMFジュード・ベリンガム。ヘディングでも1人での打開でも点が獲れるところを参考にしているというが、今のところはそのゴールパフォーマンスまで真似るつもりはないらしい。「今日も得点した瞬間は嬉しさの方が勝つので、何も考えられなかったです。2点目の方が落ち着いていたかなとは思いますけど、パフォーマンスとかは全然考えていないです(笑)」と口にした言葉に、高校生らしさも滲む。

 大学進学後もいわゆる“体育会”でサッカーを続けるつもりは、ないという。「ここでサッカーには区切りを付けます。この選手権を目標にして、自分の力を出し切ろうという感じでやってきたので、続ける気は今のところはないです。だから、勝ちたいですね」。そう言い切った大丸は、改めてこの大会での目標を明かす。「3年生にとっては本当にこの大会が最後ですし、ここを目指して僕らはやってきたので、全国優勝を目標としてやっていきたいと思います」。

 求めるのは自分の結果より、チームの結果。ただ、もちろん自分がゴールに関わり続ければ、それがチームの勝利に直結することは、この日の試合でも強く実感している。チームを率いる阪中義博監督が興味深いことを教えてくれた。

「アイツは予選の決勝でもコーナーキックから決めてるし、要所要所に顔を出してくるんですよね。そこまで期待してないのに(笑)。なんか期待に背くようなことをしてくれるんです。ヘディングが強い西風(勇吾)と石丸(晴大)の2枚に隠れてるんやけど、神戸(賢)も強いので、相手がそこを見とかないけないというところで、アイツがスッと獲っていきよるんです。『アイツらの主役の座を獲っていくスペシャリストや』と。まあ、それでチームを救ってくれるから、ありがたいですよ」。

 もちろん得点に絡んで主役の座を獲っていくのは、チームメイトにしてみても大歓迎。初芝橋本の中盤を支える頼もしいプレーメイカー。大丸のさらなる活躍が、チームで掲げる全国4強と、さらにその先へと駆け上がるためには、絶対に必要不可欠だ。

(取材・文 土屋雅史)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

TOP