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[MOM4583]帝京大可児MF松井空音(2年)_台頭中の技巧派ボランチ。ノールックの縦パスと“横取り”ミドルの決勝弾で主役に

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帝京大可児高MF松井空音(2年=FCフェルボールテクニコ出身)は同点ゴールの起点、そして決勝ゴールを決める活躍

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.29 選手権1回戦 帝京大可児高 2-1 柳ヶ浦高 駒場]

 台頭中の2年生ボランチが、逆転劇の主役になった。帝京大可児高(岐阜)は0-1の後半14分にエースFW加藤隆成(2年)のゴールで同点。その起点は、MF松井空音(2年=FCフェルボールテクニコ出身)が縦に差し込んだノールックパスだった。

「僕は縦パスを見て欲しくて。(1点目は)僕が明石未来君に縦パスをノールックで入れて、そこからゴールが生まれたので。やっぱ自分がどんどん縦パスを入れて、攻撃のスイッチを入れていきたいなって思っています」

 左中間から右へ運ぶと見せかけて、相手の意表を突くパスをその懐へ通した。仲井正剛監督が「(帝京大可児では)良いボールの持ち方をして、パスも、ドリブルもできるボールの持ち方っていうのにこだわってやってるんで、相手の逆をうまく取れたんだと思います」と説明した好プレー。その松井は後半21分に決勝点を奪う。このゴールも中盤の混戦から、自身が前方の加藤へ繋いだパスから生まれている。

 松井はパスを出した後、距離の近かった加藤をすぐにサポート。「2列目から追い越すっていうのはボランチとしてとても大事だと思うので、しっかり頭の中入れて、まずシュートからっていうのを意識しています」。中へ持ち込もうとした加藤のタッチが大きくなった瞬間、突如現れた背番号24が加藤の目前で右足を振り抜き、ゴール右隅のネットを揺らした。

 加藤は「正直、相手かと思ってビックリしてたら、空音君だった」と苦笑いする。まるで味方のボールを“横取り”するかのように決めた一撃。当の松井も「あそこのエリアはディフェンスも密集してたので、奪っちゃったみたいな形になったんですけど……まあ、決めれて良かったです」と微笑んだ。

 ただし、そのゴールは見事なコントロールショットによるもの。「外からちょっと巻くイメージで蹴れば、相手のGKも多分見えなくて反応できないかなっていうのはあったんで、打つコースはちょっと意識していました」。シュートの技術力も発揮し、チームを逆転勝利へ導いた。

 帝京大可児はベスト16へ進出したインターハイも印象的な戦いを見せていたが、松井は登録外。07年早生まれの松井はU-16岐阜県選抜の活動に集中し、8月の国体東海ブロック予選を終えてからトップチームに合流した。
 
 松井は「(インターハイの)メンバーに選ばれてなかったっていうのはとても悔しかったんですけど、インターハイ終わってからトップチームに上げてもらって、そこから頑張って、今スタメンを奪うことができて試合に出れてるので、とても嬉しいです」と語る。

「ボールを失わないのと“地味”に逆を取れる。(松井が)良いことは分かっていた」と説明する仲井監督は、「夏以降は松井が出てきて、チームにとってオプションが生まれた」。ポジションを争うMF鶴見一馬(2年)も非常にクオリティの高いプレーヤー。インターハイでも活躍した鶴見に対し、松井は自分の特長を出せなかった時期もあったようだが、競争の中で力を磨き、ライバルの負傷中にひと伸びした。

 そして現在、憧れだったという帝京大可児のパススタイルの中心として躍動中。「ゴールの生まれる過程に自分が入れるっていうのはとても嬉しい。僕は全国にも出たいし、パスサッカーもしたいし、っていうのを考えて、やっぱ帝京のサッカーを見て(進路に)選びました。憧れとして見てたチームの一員としてサッカーができるっていうのは、とても誇りに思ってますし、今度は自分が憧れられる選手になっていきたいなっていうのは思っています」。登録170cm、55kgと細身で守備面の課題も。その一方で“憧れられる選手”になるポテンシャルを十分に秘めている。

「プロを目指しています。自分の夢を掴むためにも、個人としても(この選手権で)活躍したいし、チームとしても良い結果を残したいなって思うので、頑張っていきたいなと思います」。ここからの戦いでも輝き、目標に近づく。
 
(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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