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ボールを保持し、仕掛け続けた帝京大可児が逆転勝ち。「1試合でも多くこのサッカーを見てもらいたい」

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後半21分、帝京大可児高MF松井空音(左から2人目)が決勝ゴール。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[12.29 選手権1回戦 帝京大可児高 2-1 柳ヶ浦高 駒場]

 1試合でも多く、全国で自分たちのサッカーを披露する。帝京大可児高(岐阜)は29日、第102回全国高校サッカー選手権1回戦で柳ヶ浦高(大分)と対戦。エースFW加藤隆成(2年)とMF松井空音(2年)のゴールによって、2-1で逆転勝ちした。

「ただ、勝つだけじゃなくて、このサッカーで勝つっていうことで取り組んできているので。このゲームだけじゃなく、1年間を通して苦しいこの展開はあるので、1年間、 3年間取り組んできた成果として逆転できたかなと思います」。仲井正剛監督が振り返ったように、帝京大可児は自分たちの攻撃スタイルを徹底して逆転勝ちを収めた。

 前半、ボールを保持しながら攻める帝京大可児に対し、柳ヶ浦は奪ったボールをシンプルにゲーム主将のFW曽根虎大郎(3年)とFW八尋馳(2年)の2トップに入れて押し返す。この2人が前線で馬力とスピードを発揮。13分には曽根が抜け出し、右足を振り抜く。だが、帝京大可児GK竹内耕平(3年)がキャッチして決定的なピンチを防いだ。

 MF吉兼伶真主将(3年)が、「あれ決まっていたら…(同部屋でもある竹内に)『ありがとう』って言いました」と振り返るビッグプレー。だが、帝京大可児はゴール前でコンパクトに守る柳ヶ浦の守りをなかなかこじ開けることができなかった。前半は右SB伊藤彰一(1年)のアーリークロスや加藤のクロスから惜しいシーンも作ったものの、わずかに合わず。逆に27分、先制点を許してしまう。
 
 柳ヶ浦は左CKをMF池田琉生(3年)が左足で蹴り込む。これをファーサイドのCB外園優心(2年)が折り返すと、八尋が競ってこぼれたボールを右SB中川喜之輔(3年)がダイレクトで右足シュート。これがゴール左隅に吸い込まれた。18年ぶり出場の柳ヶ浦は、これが歴史的な選手権初ゴール。畳み掛ける柳ヶ浦は33分、MF安里皇(2年)が強烈な右足ミドルを打ち込み、こぼれを八尋が押し込もうとする。だがボールは左ポストを叩き、左外へ外れた。

 一方の帝京大可児は吉兼らがコンビネーションでPAへ潜り込もうとするが、柳ヶ浦は外園、木塚武(3年)の2CB中心にチャレンジアンドカバーを徹底。隙を見せず、前半を1-0で折り返した。

 だが、岐阜県予選5試合で36得点の帝京大可児に焦りはなかった。仲井監督は「ボールは保持できていたので、最後の苦しいところで相手が少しバテてきたら取れるんだろうなと。だから、(攻め)続ける展開になればいいなって思ってました」と振り返る。

 そして、後半開始から左サイドにFW高田悠志(2年)を投入。高田の中へのドリブルの対応に柳ヶ浦DFは手こずっていた印象だ。そして14分、帝京大可児は左中間でボールを持った松井がノールックでの縦パスを差し込む。これをMF明石望来(2年)が落とすと、加藤が縦へ潜り込んで左足一閃。県予選21発エースの一撃が右隅に決まり、1-1となった。

 追いつかれた柳ヶ浦は20分、ひざの怪我で先発を外れていた大黒柱・MF橋本琉唯主将(3年)とMF小村力明(3年)を同時投入し、ギアを上げようとする。だが、帝京大可児は21分、中盤での奪い合いから松井が前方の加藤にボールを預ける。加藤が右中間から中へ持ち出したが、やや大きくなったタッチ。このボールに後方から走り込んだ松井がダイレクトで右足を振り抜く。すると、コントロールされた一撃がゴール右隅に吸い込まれた。

 柳ヶ浦は小村のクロスなどでゴールへ迫るが、帝京大可児は鋭い飛び出しを見せるGK竹内やCB堀内祥暉(3年)が立ちはだかる。一方の帝京大可児も3点目のチャンスを作ったが、柳ヶ浦は外園の身体を張った守備などでブロック。追加点を奪えなかったものの、相手の反撃を封じて2回戦進出を決めた。

 帝京大可児の仲井監督は3点目、4点目のチャンスを活かせなかったことを指摘。ただし、「ゴールは取れると思っていた」という言葉に手応えを感じさせる。3年前の20年度大会で帝京大可児は、青森山田高相手に2-4の撃ち合いを演じ、その攻撃的なスタイルが再評価された。この日もボールを保持しながら、中からも外からも仕掛け続けて逆転勝ち。帝京大可児らしさの出たゲームでもあった。

 主将の吉兼は改善点があることを前置きした上で、普段通りに観衆を楽しませるサッカーができたことを喜び、仲井監督は「(今年は県リーグに所属していたため、)『全国大会でしか俺たちの力を証明できない』っていうことを言ってるんで、このためにやってきてるんで、何とか1試合でも多くこのサッカーを見てもらいたいなと思ってます」と期待した。

 色々な人に見てもらうためには、結果も大事。吉兼は「やっぱ勝たないと意味ないんで、勝って、良いサッカーできればいいかなと思います」。まだ1試合。ここから白星を重ね、大舞台で自分たちの攻撃サッカーを1試合でも多く披露する。

(取材・文 吉田太郎)


●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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