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2年前に上級生に連れてきてもらった国立の景色…早すぎる敗退を悔やむ高川学園DF藤井蒼斗主将「3年生としてもっと経験させてあげたかった」

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13番を背負い高川学園高を牽引した藤井蒼斗主将

[12.29 選手権1回戦 市立船橋高 4-1 高川学園高 柏の葉]

 2年前のあの景色をもう1回ーー。100回大会で最高成績タイとなるベスト4へと進出した高川学園高(山口)は、聖地で再びプレーすることを目指して今大会に臨んだが、初戦で涙をのんだ。

 開始11分で市立船橋高(千葉)で最も警戒すべき選手、清水内定FW郡司璃来(3年)に2得点を献上したが、時計の針が進むにつれてボールを握って自分たちの時間を構築。ボランチのMF栗栖海晴(3年)が2CBの間に落ちてきてビルドアップに参加し、足元の技術に優れた1年生守護神のGK高城柊哉(1年)の存在も大きかった。「高川学園さんの技術の高さだったり、戦術的なもので、はがされてなかなかボールを奪えない、押し込まれるという時間が続いてしまった」。市立船橋の波多秀吾監督は、相手にリズムを握られていたことを認め、「すごくいい流れを持っていけてた部分もある」と高川学園の江本孝監督も同様の認識だ。

 前半終了4分前には、左CKでMF伊木樹海(3年)がライナー制のクロスを送ると、MF佐藤大斗(3年)がヘディングシュートで合わせて1点を返し、期待を抱かせて後半へ。しかし、後半開始2分にミスから市立船橋に3点目を許すと、同21分には郡司にハットトリックを完成されて試合は決した。

「やるべきことをやり続けようとした選手たちは褒めてあげたいと思います。でもまだ足りないものがあるので、3年生たちがここまで築き上げてくれたものを、後輩たちがより質を高めて、また来年この舞台に帰ってきたいと思います」と江本監督は選手たちを称える。

 2年前に同校最高成績タイとなる4強入りした際に、1年生で2人だけメンバー入りしていたのが、エースストライカーのFW山本吟侍(3年)と主将のDF藤井蒼斗(3年)だ。

 準決勝・青森山田戦で国立競技場のピッチに立っていた山本は、昨年の大会では選手権初得点を挙げ、今大会注目のFWの1人に数えられていた。市立船橋のタイトな守備に苦しみシュートまで至ることはできなかったが、攻撃の組み立てにも顔を出し、状況を打破しようと奮闘した。「点を取れていないので、全然ダメです」と自らにダメ出しする山本。「あの国立があったから自分がいたんですけど…後輩たちを連れて行きたかったので申し訳ないです」と下級生に国立の景色を見せられなかったことを悔やんだ。

「あと少しだったかなという感じはあります」。CBの藤井は点差ほどの差はなかったと感じていたというが、「その少しの差で負けた。日頃から積み重ねてきたんですけど、もっと突き詰めてやっていれば良かったかなと思います」と敗戦を重く受け止める。

 藤井が主将を務めた1年間、「自分が全員をまとめきれなくて、チームが一つになれてない時期もあった」が、「県大会の決勝の前ぐらいから1人1人がきちんと自覚し始めて」チームはまとまっていったという。最後の選手権は過去2大会とは「全く違う感情」で国立の景色を目指したが、その目標をかなえることはできなかった。「後輩たちが泣いてるのを見て、3年生としてもっと経験させてあげたかった」。藤井も山本同様に、後輩たちを思いやる。来年以降、藤井や山本の代の思いを継いだ後輩たちが、高川学園を新たな高みへの歩みをはじめるはずだ。

(取材・文 奥山典幸)

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奥山典幸
Text by 奥山典幸

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