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圧巻ハイプレスで青森山田を追い詰めた飯塚「俺たちがやりたいことは相手を上回っていた」

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青森山田高を追い詰めた飯塚高(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 選手権2回戦 青森山田 1-1(PK5-3) 飯塚 浦和駒場]

 過去7年間で3度の優勝を誇る青森山田高に一歩も引かず、自慢のハイプレスで先制点を奪った。しかし、最後はPK戦にまで持ち込まれ、あと一歩のところで及ばなかった。試合後、飯塚高(福岡)の中辻喜敬監督は「俺たちがやりたいことに関しては相手を上回っていたと思う」と選手たちをねぎらった。

 常勝軍団を相手にしようとも、飯塚の姿勢は明確だった。「相手に全くやらせない、一切やらせないことを1年間やってきた」。そのための手段は前線からのハイプレス。2トップのFW原翔聖(3年)、FW大園治慈(3年)が相手のバックパスにも猛烈に襲い掛かり、前半から可能性を感じるカウンターを繰り出していた。

 一方の青森山田はロングボールやサイドチェンジでプレスを回避し、飯塚のクリアを誘ったところからロングスローを多用。しかし、高校年代最高峰のプレミアリーグで猛威を振るう相手の武器にも恐れることはなかった。

「セットプレーはもう気合しかない。準備してもやられるもんはやられるから。52週×3年、彼らはセットプレーをやってきている。俺らは52週×3年、ハイプレスをやってきた。そこで勝負しようと。セットプレーになったら気合と根性やって。俺らはいつも祈ってるからって」

 DF坂本海凪太(3年)、DF岩瀬太津也(3年)、DF藤井葉大(3年)の高さを活かしながら難局をしのぐと、後半22分に藤井の右CKから原のヘディングでファーストシュート。そして同24分、ついに自慢のハイプレスからMF溝口敢大(3年)がボールを奪い、原のゴールで先制点を奪った。

「スピードと強度は上回っていると思う」。指揮官が試合前から選手たちに植え付けていた自信を裏付けるかのような先制ゴール。またその後も選手たちは守りを固めることはなかった。

「1-0になったら2点目を取りに行くぞと。下がって勝てる相手じゃないから、取ろうが取られようが前から行く。飯塚の4か所でパブリックビューイングがされていて、地元の人たちがすごく喜んでくれているし、すごく応援してくれている。その人たちに守るとか、逃げるじゃなく、戦うという姿を見せようと」

 結果的には長身CBを前線に上げるパワープレーや、質の高い交代選手で押し込まれると、後半34分に同点弾を喫し、最後はPK戦で敗戦。「青森山田の子たちはうまいので、質の高いプレーができるという点で一歩前に出られた」(中辻監督)。それでも常勝軍団を相手に最後まで息もつかせぬ好ゲームを演じ、敵将の正木昌宣監督に「飯塚さんが素晴らしいチームだった」と言わしめた。

 中辻監督によると、この一戦は現在のチームにとって「敗者復活戦」という位置付けで臨んだ試合だったという。

 2年前の2021年12月25日、飯塚は『Go For WorldCup in さいたま』で青森山田の2ndチームと対戦し、0-2で敗戦。奇しくもこの日の試合会場となった浦和駒場スタジアムの人工芝ピッチで行われていたが、スコア以上に「ボッコボコにされた」という内容だった。

「そこからの敗者復活戦だったけど、もうちょっとのところまで来たなと思います。僕らにとってはこのゲームは勝利以外で一つ成長を掴めた。この1年間、2年間やってきたことの成長と、そして新たな課題も見えたので、勝利は次の敗者復活戦にとっておこうと思います」

 そう前を見据えた指揮官。飯塚は昨季の初出場から2年連続で全国舞台に進んでおり、次の3年生は“全国に出るのが当たり前”という世代となる。「自分たちの立ち位置という点で、選手たちが全国大会に行くのが当たり前という雰囲気になることで高みを目指していけると思う」。新たな挑戦はすでに始まっている。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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