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9年ぶり初戦敗退の危機も…「1年間こういうゲームをモノにしてきた」青森山田がエースの同点弾&ノーミスPK戦で3回戦へ!

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青森山田高が苦しみながらも初戦突破(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 選手権2回戦 青森山田 1-1(PK5-3) 飯塚 浦和駒場]

 第102回全国高校サッカー選手権は31日、2回戦を各地で行い、青森山田高(青森)が飯塚高(福岡)を破った。後半24分に先制点を与えたが、同34分にエースFW米谷壮史(3年)が同点ゴールを沈め、最後はPK戦で全員が成功させて決着。PK戦で敗れた14年度以来9年ぶりの初戦敗退もよぎる窮地からはい上がり、広島国際学院との3回戦に歩みを進めた。

 過去7年間で3度の日本一を誇る青森山田の大会初戦は拮抗した立ち上がりとなった。序盤からDF小沼蒼珠(2年)のロングスローで脅威を与えていくが、飯塚もDF坂本海凪太(3年)とDF岩瀬太津也(3年)のCBコンビを中心に空中戦で対応。前半9分、ロングスローのこぼれ球を拾った10番のMF芝田玲(3年)がミドルシュートを狙ったが、惜しくも枠を捉えられなかった。

 さらに青森山田は前半17分、ゴール左斜め前から芝田がFKを狙うが、これも左に外れると、徐々に飯塚も持ち味を発揮。同19分、青森山田のビルドアップにハイプレッシングをかけ、GKのキックをFW大園治慈(3年)が身体でカットし、得点につながりそうなチャンスを初めて作った。

 その後も青森山田の優勢が続いたが、ゴールを奪えない時間が続く。前半24分、左サイドを攻め上がったMF川原良介(3年)のクロスにMF福島健太(3年)が飛び込むも、ダイビングヘッドは枠を捉えられず。同30分には川原のハイプレスがGKのキックをかっさらったが、持ち運んでのシュートは岩瀬のカバーに阻まれた。

 前半アディショナルタイム1分、青森山田は6本目のロングスローのこぼれ球を拾った芝田のクロスに米谷がヘディングで合わせるが、これはGK松崎鴻毅(3年)のスーパーセーブに阻まれる。結局、シュート10対0という圧倒的な内容ながらノーゴールに終わり、前半を0-0で終えた。

 そんな青森山田は後半8分、早くも交代カードを切り、福島に代わってFW津島巧(3年)を投入。高円宮杯プレミアリーグファイナルで決勝ゴールを決めたスーパーサブに打開を託した。同16分、左サイドを攻め上がった川原のクロスに対し、再び米谷が反応。しかし、叩き付けるヘディングシュートもGK松崎のファインセーブに阻まれた。

 一方の飯塚も後半20分からアクセルを踏み込み、DF深川恭伍(3年)のロングスローで押し込む形を作ると、そこから次々とセットプレーを獲得。同22分にはDF藤井葉大(3年/岡山内定)が鋭い右CKをゴール前に送り込み、ニアサイドで反応したFW原翔聖(3年)が惜しいヘディングシュートを放った。

 そうして迎えた後半24分、均衡を破ったのは飯塚だった。中央突破からの縦パスに大園が潰れ、うまくボールを残すと、ボール保持に回ろうとした青森山田MF菅澤凱(3年)に猛烈なプレッシングを仕掛け、これをMF溝口敢大(3年)が再奪取。素早いパスから原が混戦をくぐり抜け、ペナルティエリア左に持ち込むと、鋭い左足シュートでゴールに突き刺した。

 飯塚はわずか2本目のシュートで先制点。それも前半から貫いてきた得意のハイプレスが機能する形で、理想どおりの展開に持ち込んだ。

 ところがビハインドとなった青森山田も譲らなかった。失点直後に身長190cmのDF小泉佳絃(3年)を最前線に入れ、パワープレー攻撃を仕掛けると、後半34分に同点弾。途中出場のMF後藤礼智(3年)が芝田とのワンツーで右サイドを抜け出し、相手をかわして左足でクロスを送ると、完璧なポジションを取っていた米谷がヘディングで押し込んだ。

 なおも攻める青森山田は後半39分、GK小林の鋭いクリアボールが相手の最終ライン裏に入り、オフサイドギリギリで抜け出した米谷が反応。うまく左足で相手をかわし、シュートに持ち込んだ。しかし、飯塚は後方からアプローチした岩瀬がスーパーブロック。かすかに触ったボールが右ポストに当たり、ゴールから外れた。

 そのまま1-1で規定の80分間を終え、勝負の行方はPK戦に。ここで輝いたのは青森山田の守護神GK鈴木将永(3年)だった。後攻に回った飯塚2人目のキックを見事な横っ飛びで止めると、青森山田は後半終了間際に投入されたPKキッカーのMF齊藤和祈(3年)まで5人全員が成功。苦しみながらも3回戦進出を決めた。

 試合後、昨年の全国大会から指揮を執ってきた正木昌宣監督は「飯塚さんのタフなサッカーを相手になかなか崩せず、ミスで失点してしまい、非常に難しいゲームになったが、1年間通してこういうゲームをモノにしてきたという自信はあった。最後までやってくれた選手に感謝したい」と振り返った。

 指揮官の言葉どおり、今季の青森山田は高円宮杯プレミアリーグで2点差をひっくり返した流通経済大柏高戦、終了間際の2ゴールで追いついた昌平戦などビハインドの戦いを何度も経験。高校年代最高峰の座をかけたファイナルでも広島ユースに先制されながら、終盤の2ゴールで逆転し、頂点に立っていた。

 正木監督は「できるだけビハインドにならない状態で勝ち切れる戦いをしたい」と苦笑いを浮かべつつも、「11人だけじゃなく、サブでもベンチに入っている9人は(2ndチームの)プリンス、プレミアで経験を積んでくれていたし、今日出たのも大事なところで仕事をしてくれた2人だった。柔軟な戦いができるという意味で選手層の厚さはうちの武器。そこは自信を持っていた」と交代選手のクオリティーも活かし、勝利につなげられたことを前向きに受け止めた。

 さすがの強さを見せたPK戦は「PKはやってきたので、練習したとおりに出てよかった」と冷静に振り返った指揮官。3回戦で戦う広島国際学院は開幕国立での勝利に続き、2回戦で静岡学園高を破るなど勢いに乗っているが、「まずは(選手権の)雰囲気に慣れたと思うので、冷静に自分たちのやるべきことを整理して、相手に対して粘り強く対応して、ストロングをもっと出せるように準備したい」と姿勢は変えず、「バタバタしてしまったのは一番の反省点だが、選手権はそういう大会なので次に向かってしっかりやりたい」と静かに意気込んだ。

(取材・文 竹内達也)

●第102回全国高校サッカー選手権特集

竹内達也
Text by 竹内達也

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