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[MOM4602]星稜GK佐藤竣基(3年)_ケガに苦しみサッカーは高校まで…背水の陣の“PK職人”が驚異の2本ストップでヒーローに

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PKストップに絶対的な自信を持つ星稜高GK佐藤竣基(中央)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 選手権2回戦 星稜高 1-1(PK3-0) 四日市中央工高 オリプリ]

 四日市中央工高(三重)にオウンゴールで先制点を献上してしまった星稜高(石川)は、後半途中からピッチに送り込んだFW南慶士郎(2年)が、起用に応えて同点弾を決める。しかし、星稜はまだベンチに切り札を持っていた。

 1-1のままPK戦に突入する矢先に、星稜は先発していたGK橋本育磨(2年)から、“PK職人”と名高いGK佐藤竣基(3年)に交代する。「待てるんですよね。先に動かない。キッカーにしてみればすごく嫌だなっていうのと、瞬間的な瞬発力もある子なので」とは、河合伸幸監督の佐藤評だ。

 PK戦になると、職人の看板は偽りではないことがすぐに証明される。四日市中央工の1人目を左に跳んで見事にストップ。2人目は枠を外すと、止めれば勝利が決まる3人目で右隅に向かったシュートも弾き出す。佐藤が驚異のPKストップを見せた星稜が、3-0でPK戦を制した。

「PKストッパーといえば佐藤」と星稜1人目のキックを成功させた主将のDF倉畑鉄将(3年)も、佐藤に信頼寄せる。「PKにさせたくないのは一番ですけど、PKになってもキッカーが自信を持って蹴るというのは普段からやっていたし、佐藤が絶対に止めてくれるというのがあった」。指揮官、チームメイトの期待に、見事に応えた。

「小学校の頃からPK戦だったら、負けてる覚えない」というPK職人は、「試合中に相手のプレーを観察して、どんな特徴があるか。あとは、蹴る最後の3歩。体の向きとかを意識しています」とポイントを明かす。際どいコースにシュートが飛んだとしても、ギリギリまで待ってでも追いつく「自信があります」と笑みをこぼす。

 プレイヤーである以上、先発として出続けたいのは当然のことだろう。それでも佐藤は中学2年生から腰に痛みを抱えているため、長時間のプレーはかなわないという。星稜の背番号1は、この日に先発していたGK橋本に譲っており、「割り切って。橋本のサポートをできたらいいなと思っています」と前を向く。

 ケガの影響で高校でサッカーをやめるという佐藤にとって、今大会での敗退は選手としての引退も意味している。

「PK戦にはなって欲しくないですけど、もしなったらケガでできていなくて迷惑をかけてきたと思うので、恩返しできたらいいなと思います」

 開会式前日に誕生日を迎えていた18歳が、仲間たちとともに挑む“最後の舞台”は、まだ続いていく。

(取材・文 奥山典幸)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
奥山典幸
Text by 奥山典幸

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