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「ベスト8になったら人工芝」知事との“約束”果たした佐賀東が歴史変える初の8強!富山一に5発逆転

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初のベスト8進出を決めた佐賀東の選手たち(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権3回戦 佐賀東 5-1 富山一 駒沢]

 第102回全国高校サッカー選手権は2日、各地で3回戦を行い、駒沢陸上競技場の第1試合では佐賀東高(佐賀)が富山一高(富山)に5-1で逆転勝ちし、13回目の出場で初の準々決勝進出を決めた。佐賀県勢としても95年度の佐賀商以来、28年ぶりのベスト8。4日の準々決勝では堀越(東京A)と対戦する。

 試合はいきなり動いた。富山一は前半5分、今大会初先発となったFW加藤隼也(3年)が右サイドからロングスロー。出場停止明けで同じく今大会初先発となったDF山本大心(3年)が競ったこぼれ球をFW稲垣禅太郎(3年)がおさめ、振り向きざまに左足を振り抜くと、GKが弾いたボールが佐賀東の選手に当たって跳ね返り、ゴールネットに吸い込まれた。

 オウンゴールで先制に成功した富山一。元日に起きた能登半島地震の影響で、大晦日の2回戦後に富山に戻っていた部員や保護者たちの応援バスツアーが中止となり、予定していた100人程度の応援団は半数以下に減っていた。それでもSNS上での呼びかけに首都圏在住の富山出身者やカターレ富山のサポーターらが駆け付け、ピッチ上の選手たちを後押しした。

 佐賀東はこれまでの4-4-2から4-1-4-1にシステムを変更し、MF西川葵翔(3年)がインサイドハーフで今大会初先発。蒲原晶昭監督は「相手の3-4-3に対して中盤を少し厚くしたやり方をした」と、その狙いを説明。前線からのプレスで徐々にリズムをつかみ、左サイドのMF右近歩武(3年)とDF江頭瀬南(2年)、右サイドのMF宮川昇太主将(3年)とDF田中佑磨(2年)を起点に両サイドからチャンスをうかがった。

 すると前半29分、富山一の縦パスを田中佑がヘディングでカット。宮川が素早く斜めにパスを通し、左サイドからドリブルで切れ込んだ右近が右足ミドルをゴール右隅に流し込んだ。

 右近の2試合連続ゴールで同点に追いつくと、さらに1分後の前半30分、FW宮崎空夢(3年)がボール奪取からスルーパス。抜け出した西川がGKとの1対1から冷静にGKの逆を突き、2-1と逆転に成功した。今大会初出場初先発に抜擢された西川が起用に応える勝ち越しゴールを奪い、前半を1点リードで折り返した。

 逆転を許した富山一は後半開始からMF入江秀虎(3年)とFW宮本凌成(3年)を投入し、システムも3バックから4バックに変更。同点ゴールを目指したが、次の1点を奪ったのも佐賀東だった。

 後半13分、宮川の右クロスに宮崎がヘディングで合わせ、今大会初ゴールとなる追加点。同16分にも宮川の右クロスからGKがファンブルしたこぼれ球を右近が押し込み、4-1と突き放した。さらに後半20分、大きなサイドチェンジを受けた右近がドリブルでPA内に進入。鋭い仕掛けからシュートを打つと、GKが弾いたボールを途中出場のFW最所大星(3年)が押し込んだ。

 終わってみれば5-1の大勝で初の3回戦突破を果たした佐賀東の蒲原監督は「まさか5点も取れるとは思っていなかった」と、想定以上のスコア差に驚きを隠さなかったが、初のベスト8進出という結果には新しい歴史を作った以上の意味があった。

「知事がベスト8になったら人工芝を張ってくれるということで、(3回戦が)一番プレッシャーを感じていた。これを乗り切ったら今後の佐賀東の未来が変わる」。佐賀県の山口祥義知事とは数年前から、ベスト8まで勝ち進めば普段は土のグラウンドで練習している佐賀東に人工芝のグラウンドを設置するという“約束”をしていたのだという。

「いつもクレー(土)のデコボコのグラウンドでやっていて、全国的には人工芝が増えていると思うが、人工芝のありがたさはだれよりも知っている。知事との約束を果たせて、人工芝になればレベルアップにもつながる」

 そう喜んだ蒲原監督は「(約束については)選手も知っていたし、みんなプレッシャーを感じていたと思う。次の準々決勝はだいぶ力も抜けると思う」と、佐賀東として初挑戦となる準々決勝に視線を向けた。勝てば佐賀県勢としても初の4強、国立。「小さな県でも行けるんだよということを示したい。一つひとつの試合を大事にして、サッカーを楽しませながらやりたい」と意気込んだ。

(取材・文 西山紘平)

●第102回全国高校サッカー選手権特集

西山紘平
Text by 西山紘平

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