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能登地震の影響で応援行けず…富山に残る仲間からのLINEメッセージに「やらんとダメだ」富山一は奮闘及ばず

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富山一のMF多賀滉人がボールを奪い合う(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権3回戦 佐賀東 5-1 富山一 駒沢]

 来たくても来れなかった仲間のため、家族のため、そして何よりも被災した地元・富山の人たちのために最後まで戦い抜いた。富山一高(富山)は前半5分にオウンゴールで先制したが、1-5の逆転負け。3回戦敗退という結果に加納靖典監督は「私の力不足」と唇を噛んだ。

 佐賀東は富山一対策としてこれまでの4-4-2から4-1-4-1にシステムを変更。3-4-3の富山一に対して中盤で優位性を作り、高い位置からプレッシャーをかけてきた。「相手が私たちに合わせてシステムを変えてきたのはすぐに分かった。後半はシステムを変えたが、それもうまくいかず、子供たちに迷惑をかけた」(加納監督)。1-2と逆転を許した後半は4バックにシステムを変えたが、その後も失点を重ねた。

 決して簡単ではない状況だった。試合前日の元日に起きた能登半島地震の影響で大晦日の2回戦後に富山に戻っていた部員や保護者たちの応援バスツアーは中止。幸い選手たちの家族は無事だったというが、ニュースを通じて知る地元の状況が気にならないわけがなかった。

 加納監督が「被害に遭われた方のために、応援に来れなかった方のためにもやらないといけないと送り出した」と言えば、MF多賀滉人主将(3年)も「自分たちにできるのは今日勝って勇気や笑顔を届けることだけ。何としても勝って、富山で応援してくれている方々、大変な思いをしている方々に勇気を届けたかった」と力を込めた。

 試合当日の朝には、富山に戻っていた部員たちからスタッフのもとにLINEでメッセージが届き、メンバー全員で共有したという。多賀によると、「『富山で全力で応援する』『勝って次は行かせてくれ』というメッセージばかりだった。やらんとダメだなと思った」と、富山で勝利を願う仲間たちのためにも、たとえ点差が開いても最後まであきらめるようなことはなかった。

 スタンドにはSNSの呼びかけに応じた首都圏在住の富山出身者やカターレ富山のサポーターらも駆け付け、ピッチ上の選手たちを後押しした。加納監督は「富山から応援が来られない中、近くに住んでいる方々がわざわざ応援に来てくれて、うれしくて励みになった。勝って次につなげたかった」と感謝していた。

富山一を応援するために駆け付けた(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
西山紘平
Text by 西山紘平

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