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敗戦の瞬間も、整列時も気丈だった明桜キャプテン川村晃生…最後に涙した選手権の黄昏

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明桜高は3回戦敗退(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権3回戦 明桜 0-1 堀越 駒沢]

 明桜高(秋田)に選手権初勝利という歴史的快挙をもたらしたキャプテンGK川村晃生(3年)。3回戦敗退も「自分がここで崩れたら、絶対チームは次に向かっていかない」と気丈に振る舞っていた。

 過去5度の選手権出場も初戦敗退。昨年度もその悔しさを目の当たりにした代は、自らの最終学年で雪辱を果たすために奮闘した。1年生から試合に出続けた川村はキャプテンマークを巻く。初の白星をもたらした2回戦・名護戦では、終盤にPKを与えるピンチを迎えたが、川村のスーパーセーブで失点を防ぎ切った。

 3回戦敗退。さらなる勝利にはまだ足りないものがあった。「高校サッカーは紙一重」(川村)。たったひとつの失点で試合の流れは大きく変わる。無失点へのこだわり、決めるべきときに決めることの大切さ。すべてを満たさないと頂上に行けないことを思い知った。

 試合終了の笛が鳴った。高校サッカーに終止符を打ったキャプテンはそれでも気丈に振る舞い、突っ伏す仲間を起こして挨拶を促す。悲しみに暮れるチームメイトをよそに、川村は列の一番前で深々と頭を下げた。

 テレビ画面越しに川村の涙は映らなかった。しかし、スタンドで応援する仲間の姿を見るや思いがあふれた。

「堀越さんの応援がすごくて、人数的にも堀越さんが上だった。でも、それでも仲間が声を出して必死に自分たちのことを応援してくれていた。それなのに自分たちがそういう思いに応えられなかった。わざわざ秋田から応援してくれていたのに、応えられなかったことが悔しかった」

 それぞれのサッカー人生は続く。キャプテンは「1、2年生は来年、自分たちより上を目指す必要がある。日常から妥協することなく、この悔しさを忘れずに取り組んでほしい」と思いを託す。自身は北海道の強豪校・北海道教育大岩見沢校へ。新天地で再び頂点を目指すつもりだ。

(取材・文 石川祐介)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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