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自分の長所を出すよりも青森山田の勝利。強い犠牲心と声で支えた10番MF芝田玲「全てが報われて…」

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青森山田高の攻守の中心選手として、リーダーとして優勝に貢献した10番MF芝田玲(3年=青森山田中出身)

[1.8 選手権決勝 青森山田高 3-1 近江高 国立]

「率直に、優勝できて嬉しいです」

 青森山田高の10番を背負ったMF芝田玲(3年=青森山田中出身)は静かに全国制覇を喜んだ。プレミアリーグに続く優勝。過去を見てもプレミアリーグ、選手権の2冠を成し遂げているのは、青森山田の先輩たちだけだ。その快挙を自分たちも実現したことへの達成感は大きかった。

 技術力に自信を持つ芝田は、ドリブル、パス、シュートで違いを生み出すことのできる存在だ。今大会でも高精度のプレースキックなどでゴールを演出してきた。だが、その10番はこれまで通り、自身の結果を求めたり、特長を表現することよりもチームの勝利を最優先して決勝を戦った。

 ドリブル、パスワークで侵入してくる近江高に対し、「連続したプレスと囲み込み、プレスバックというウチが一年間やってきたことをぶつけるだけだった」と芝田。中盤に厚みを持たせて守った青森山田は、侵入しようとする相手を次々中盤やDFラインで止めきっていた。

 例え1人目が剥がされても一気にスピードアップさせないことを意識。入れ替わろうとする相手をブロックしてボールを奪い取った。「(スイッチしようとしてきたところも)ウチは自分たちが連続してプレスバックなどをしてほぼほぼ拾えていたと思うので、それは良かったと思います」。鮮やかな同点ゴールを決められたものの、その後も青森山田らしく、守備からリズム。その中心として奮闘した芝田は先制点に係ったほか、スペースを突くドリブルを見せるなど攻撃面でも勝利に貢献した。

 強烈なリーダーシップでCB山本虎主将(3年)をサポート。個性的な選手の多いチームで率先して“嫌われ役”を演じてきた。「やっぱり自分が去年から一番経験している分、場の雰囲気もそうですし、危機感を誰よりも感じて一年間やってきたので試合中にキツすぎる言葉を言ったりしちゃったかなという時もありましたけれども、全てが報われて結果として良かったのかなと思いますね」。2年前の10番MF松木玖生(現FC東京)や前任の10番FW小湊絆(現法政大)のような派手さはなかった。それでも、犠牲心と勝利への強い思いを持つ芝田はチームのために厳しい声がけを継続。チーム随一の技術力を持つMFだが、自分の言葉に責任を持ち、試合でエゴを出さなかった。

「1年間、自分のジレンマというか、もっと10番としての結果にこだわりたい部分もありましたけれども、多分、それをやって良いことはこのチームに関しては一つもなかったと思うので、多少エゴを殺してやってきた結果、こういう優勝に繋がった」と自己分析する。そして、「この山田でやってきた立ち振舞は正解だったなと感じた瞬間だったので良かったと思います」。技術力など個性を伸ばすことを目指すFC LAVIDAから、より強くなるために青森山田中へ転校。そこで学んだ4年間の成果が、最高の瞬間に結びついた。

 これからは、4年後のプロ入りへ向けて新たな挑戦が始まる。「自分の長所はドリブル、パス、シュート。バイタル、ゴール前に入ったところで人には出せないパス、人には見えないところだったり、人にはないイメージを持ってそれを可能にする技術というのはこの山田に来ても頑張ってきたところなので、より個人にフォーカスを当てられる(大学)4年間になると思いますけれども、もっともっと目立って、個人の結果にこだわる野心を持ってやっていきたい」。選手権の大会優秀選手に選出。選考合宿メンバー入りが有力な日本高校選抜でも一番目立つことを目指す。

「山田の芝田玲と見られていると思いますけれども、それがなくなって、『コイツ、こんな上手いの?』とか、高校選抜に入って『こんな感じなんだ』と思われるように、自分のリーダーシップも強みですけれども、テクニカルな面で高校選抜に行っても一番目立ってやりたいと思っています」。国立競技場で青森山田の10番を卒業。青森山田で培ったどんなサッカーにも対応する力や技術力をさらに磨き、発揮して自分の将来を切り開く。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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