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選手権を沸かせた近江10番・金山耀太、同学年・石井久継の衝撃に断念するも高校で再燃したプロへの想い

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近江高を牽引した金山耀太は優秀選手に選出(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.8 選手権決勝 青森山田高 3-1 近江高 国立]

 近江高(滋賀)の背番号10は、プレミアリーグファイナルを制して高校年代最強の称号を持つ青森山田高(青森)との決勝でも、十分に相手の脅威となっていた。

 準決勝では、「堀越さんには効果的じゃないかと思って起用しました。中にも入ったり、外にも出たり金山はできますので、金山をどこでフリーにするか考えながらやりました」という前田高孝監督の意図もあって、DF金山耀太(3年)は1列前の左ウイングバックでスタート。近江の3点目の場面では、FWのようなポジションをとってゴールを決め、指揮官の期待に応えていた。

 そして、決勝では準々決勝・神村学園戦以来2試合ぶりに定位置である左センターバックとしてキックオフを迎えた。

 前半33分に先制点を許して迎えたハーフタイムで、指揮官はこれまでのように背番号10の役割を変えて打開をはかり、左ウイングバックで先発していたMF廣瀬脩斗(2年)と金山のポジションをチェンジ。この戦術変更は、わずか2分で結実する。

 MF浅井晴孔(3年)がドリブルで青森山田の選手を2人かわすと、右サイドのスペースに走り込んでいた金山へスルーパスを送る。金山はGKとDFの間に低いクロスを送ると、後半からピッチに入っていたMF山本諒(2年)がゴールに押し込んだ。

「自分たちは狭い局面を得意としてやっているので、ピッチをフルで使ったら、多分相手のペースになってしまうということで、早く密集を作って狭い局面を打開するっていうところは意識してやっていました」と、金山が指摘するように、密集地帯でもドリブルやワンツーを駆使してボールを運ぶシーンは何度も見られた。

 今大会では、2回戦の日大藤沢、3回戦の明秀日立、準々決勝の神村学園、いずれも1点リードされながら前半を終えて、後半早々に同点に追いつく強さを見せていた近江。らしさが出た試合展開となるも、青森山田もまたらしさを発揮する。「最短、最速に技術を発揮するチーム」と近江の前田監督が定義したように、青森山田は縦に早い展開から2点目、3点目を確実に仕留めていった。

 1-3のまま試合終了の笛が鳴り、ピッチに倒れ込む近江イレブン。主将の金山も例外ではなかった。「もう終わりなんだ」「勝って終わりたかった」という思いと同時に、「やりきった」「高校サッカーの中で一番長くサッカーができて幸せ」という充足感が交錯した。

 広島県出身の金山は、中学年代まではシーガル広島でプレーし、高校入学と同時に親元を離れて滋賀県に移る。「自分の意志を尊重してくれました」という両親への感謝は尽きない。「何ひとつ文句を言わず、自分がやりたいようにやらしてもらいました」。密に連絡を取り合うわけではないというが、両親の存在の大きさを感じた高校での3年間だった。

 金山の高校サッカーは終わったが、大学でも“ある想い”を胸にサッカーを続けていく。じつは、金山が小学生のときに、同じ2005年生まれであり2023年にJデビューもはたしている石井久継(湘南)を広島のトレセンで目の当たりにし、あまりのレベルの高さに「プロは無理だな、諦めよう」と断念していた。それでも、近江でサッカーを続けていく中で、諦めたはずの夢が再燃する。選手権を終えてプロへの想いを改めて問うと、「プロになります!」と、金山は力強く宣言した。


(取材・文 奥山典幸)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
奥山典幸
Text by 奥山典幸

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