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激動の1か月を堂々と戦い抜いた近江、巻き起こした旋風…MF鵜戸瑛士「想像もつかなかったことだけど、楽しかった」

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(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.8 選手権決勝 青森山田3-1近江 国立]

 夢のような90分間だった。「時間が経つのが早かった。すぐ終わった。(5万人の前でのプレーは)今まで想像もつかなかったことだけど、楽しかった。今までやってきたことをこの舞台でみんなに見て貰えたことがとてもよかったです」。試合終了の瞬間はピッチで大の字になったMF鵜戸瑛士(3年)だが、取材エリアでは清々しい表情をみせてくれた。

 ここ1か月の間で張りつめていた緊張感から解き放たれた瞬間でもあった。プリンスリーグ関西1部で2位の成績を残した近江高は、初のプレミアリーグプレーオフに参戦。惜しくも決定戦で敗れてプレミアリーグ昇格はならなかったが、「選手権ベスト4」のもう一つの目標を達成するためにより一層の士気を高めて、正月の舞台に乗り込んでいた。

 2回戦からの登場となった今大会だが、初戦でJリーグ内定選手を擁する日大藤沢高(神奈川)、続く3回戦でインターハイ王者の明秀日立高(茨城)をPK戦で連破。準々決勝では、優勝候補の神村学園高(鹿児島)との打ち合いを制して、目標達成となる選手権ベスト4、舞台を国立競技場に移す準決勝に勝ち上がった。

 準決勝では東京都代表の堀越高に3-1で快勝。決勝では青森山田高に競り負けたが、大会を通した近江旋風は、サッカーファンのハートをがっちりと掴んだ。「かっこいいチームになりましたよね」。激動の1か月を走り抜いたイレブンを前に、前田高孝監督も満面の笑みを浮かべていた。

 鵜戸は全試合に先発出場。準決勝は後半アディショナルタイムでの交代となったが、ほぼ全試合フル出場と言ってもいい奮闘をみせた。準々決勝では2ゴールを決めてヒーローにもなった。「優勝しろよというのはみんなから言われていました」。多くの期待を受ける喜びを、身をもって経験することもできた。

 ただ大会を通した自身のプレーには課題も残ったという。課題は次のステージに持ち越す。卒業後は関西学生サッカーリーグ1部に初昇格する京都橘大に進学する。「個人でもう一個行ったりというのは少なかったと思う。そういうのをもっとやっていきたい」。“あの冬を沸かせた近江の一員”としてプライドを持って、今後のサッカーキャリアを進めていく。

(取材・文 児玉幸洋)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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