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[MOM927]仙台大MF玉城大志(4年)_好配球に逆転2アシストも「自己評価はマイナス」“プロ基準”胸に恩師率いるJ2群馬へ

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MF玉城大志(4年=浦和ユース/群馬内定)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.10 インカレ2回戦 広島大 1-3(延長) 仙台大 保土ヶ谷]

 中盤を幅広く動いてゲームメークを担い、跳躍力を活かした空中戦から逆転に導く2アシスト。インカレ(全日本大学選手権)初戦で苦戦を強いられた仙台大だったが、MF玉城大志(4年=浦和ユース/群馬内定)が明らかな違いを見せ、初戦突破に貢献した。

 まずは0-1で迎えた後半22分、ペナルティエリア内への侵入から同点ゴールを導いた。「ペナでのシュートするのがゴールする確率は一番高いので、ペナに入るのは意識している」。MF得能草生(4年=青森山田高/水戸内定)のシュートのこぼれ球がクロスバーに跳ね返ると、173cmの上背とは思えないハイジャンプでヘディング。「あの形でシュートに行けないなと思って、それでパスに切り替えた」という冷静な判断でつなぎ、これにFW佐々木翔(4年=横浜FCユース)が詰めた。

 さらに同点で迎えた延長前半8分、今度はMF本田真斗(2年=青森山田高)の右CKに対し、チームとして何度も狙っていたファーサイドで合わせた。「自分は独立して動いていい役割なので、普段からボールに対して向かっていって、結構ああいう得点とかアシストがあった。本能的なものですね」。またも完璧なジャンプで競り勝ち、DF和田昂士(4年=横浜FMユース)の勝ち越しゴールをお膳立てした。

 チームはその後も1点を追加し、苦戦しながらもインカレ初戦を突破。玉城はビハインドに陥っていたチームを逆転に導く2アシストの大活躍となった。もっとも試合全体を振り返ると、玉城の存在感は得点シーンに限ったものではなかった。

 対戦相手の広島大は3-4-3ベースの布陣から、ハイプレスの仕組みを自在に変化させられる駆け引き巧みな好チーム。仙台大は立ち上がりからなかなかボールを前進させることができず、先制点を献上した。しかし、徐々に玉城が相手の中盤のスペースに顔を出し、長短のパスを使って攻撃を牽引。その振る舞いとともに押し込む時間帯が増えていた。

「相手がブロックを敷いてくる中で、後ろに人が多いなと思いながらやっていて、相手のブロックの中に入って壊したいと思っていた。前半はなかなかそこに入っていけるシーンが少なかった。そこを増やしたいなと思っていた」

 ビルドアップのキーマンを担う選手には当然、相手のマークも強くついてくる。それでも玉城は高い左足の技術を活かしたボールタッチで相手に寄せる隙を与えず、食いついてきた相手は鍛え上げたフィジカルでかわすと、精度の高いロングキックで攻撃を大きく前進させる場面も作っていた。

「相手の嫌がることをやりたいとは思っていて、自分たちのチームで相手の状況を見てポジションを変えられる選手があまりいないので、自分がチームの中で、みんなが得意なプレーをする手助けをしたい。その上で相手が嫌がるプレーをしたいなと思っているし、それができるタイプなんじゃないかと思う」

 そうした戦術眼は浦和でトップチーム昇格ができず、大学経由でプロ入りを目指した故の生存戦略だった。高卒でJ1トップクラブの戦力となるためには、誰が見てもわかるような武器が必要。しかし、ボランチを主戦場とする選手にとって、目に見えるような武器を日々表現し続けることはなかなか難しい。

「レッズではわかりやすい選手が上に上がっていくという印象が僕にもあって、自分が個人で能力を上げないといけない。その中で自分にできることが何で、いまの能力がどれくらいかというのも考えながらやってきた。高校からいろんな監督と出会って、その能力を上げていけた部分もあると思う」

 その結果、ザスパクサツ群馬でプロ内定も勝ち取り、プロのトレーニングでも手応えを感じられるようになった。

「自分の強度は群馬でも求められているし、そこでしっかりとしたトレーニングとケアをすれば、さらに強度は出していけるかなと思う。あと左足のキックは練習参加をしていても自分の武器にできると思っている。ゴールにつながるパス、シュートを出していける」。約2か月間の練習参加を通じ、自信を深めたようだ。

 現在、群馬を指揮するのは浦和アカデミー時代に指導を受けた大槻毅監督。「自分が小さい時から大槻さんがユースダイレクターでずっと見てもらっていた。小6になる時に初代のレッズジュニアができて、その時からユースダイレクターだったので常に見られているんだなと思う」。群馬の加入に向けても「ユースの時のプレーの信頼度で声をかけてくれたのかなと思う」とお墨付きがあったといい、自身を理解してくれる指導者のもとでプロ生活をスタートさせられるのは前向きな要素だ。

 もっとも、すでにそうしたプロ基準を意識する玉城だからこそ、この日の自己評価は厳しいものだった。「最初の1失点目は自分のところでこぼして失点したので、自己評価はちょっとマイナスくらいの気持ち」。前半16分の失点時は中盤でセカンドボールを拾い切れず、相手の速攻を許した形。ただちに数的不利につながっていたわけではなく、守備陣の対応にも課題が残ったが、スキを残した自身にフォーカスしていた。

「自分の中では(プロの練習参加でも)やれる思いもありつつ、1失点目のところでミスに絡んだところ。そういう細かいところの意識の差はプロと大学の違いかなと思う。詰めないといけないところはまだまだある」。大学最後のインカレではそうした細部を突き詰めながら、頂点を狙っていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
竹内達也
Text by 竹内達也

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