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JFA反町技術委員長が語ったアンダー世代の強化プラン…U-20日本代表バルセロナ高橋仁胡にも言及「ロス世代の中心選手に」

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ウズベキスタンから取材に応じた反町康治技術委員長

 日本サッカー協会(JFA)の反町康治技術委員長が2日、ウズベキスタン・タシケントから報道陣のオンライン取材に応じた。反町委員長は現在、U20アジアカップに臨むU-20日本代表に帯同中。将来の日本代表を担っていく選手の奮闘に期待しつつ、「世界につながる切符を得るための厳しい戦いなので、一戦一戦大事にやっていく」と意気込みを語った。

 U20アジア杯は今年5月に行われるU-20ワールドカップの出場権をかけた戦い。決勝トーナメント初戦にあたる準々決勝を突破し、4位以内に入れば本大会行きが決まる。日本は2007年大会を最後に長らく出場権を得られなかった後、17年の韓国大会、19年のポーランド大会に連続出場。21年大会はコロナ禍で中止となったが、4年越しの3大会連続出場を目指す形だ。

 “ポストユース”と呼ばれるU-20年代は、日本では育成の難しさが指摘されてきた世代。高校卒業後にプロ入りした選手がなかなか出場機会が得られず、有力選手の試合感覚やコンディションに影響が出てしまうためだ。

 そうした積年の課題を受けて、JFAは海外遠征を積極的に行うことにより、17年大会以降の出場権獲得につなげてきた。しかし、今回の世代はコロナ禍が直撃。海外遠征ができない時期を長らく過ごすなど、難しい強化を迫られてきたという背景がある。

 それでも反町技術委員長は「コロナの影響も受けて活動がままならなかった部分があるが、国内キャンプをしっかりとやって、段階的にここまで上ってきている選手もいる。Jリーグでなかなかチームの中心になれていない選手がいる中でも、そうはいっても中心になっていく選手の集合体であるのは間違いない。一発回答で出していかないといけない」と力説。「もちろんほとんどJリーグでゲームのチャンスがない選手もいるが、言い訳は通用しない」とした上で「一発回答で出していくしかない。そのための準備でこっちに来てから練習試合もしているし、ゲームフィーリングや体力は養えている」と自信を示した。

 一方でMF松木玖生(FC東京)、FW北野颯太(C大阪)は活動前に行われたJ1開幕節で先発出場を果たし、MF佐野航大とFW坂本一彩(いずれも岡山)、MF安部大晴(長崎)もJ2開幕節で先発。代表に選ばれた選手は開幕節のみの出場という難しいスケジュールになった中でも、代表選手を起用したクラブも多くあった。反町委員長は「開幕節のスタメンが何人かいたし、大学では中心選手となっている選手もいる。この大会を通じてチームに帰った時、一皮も二皮も剥けてないといけない。帰ってからもJクラブや大学に還元できれば」という点も強調した。

 加えて注目が集まるのは17歳で飛び級招集されているDF高橋仁胡(バルセロナ・フベニールA)だ。「センダゴルタ」のミドルネームを持ち、父がアルゼンチン、母が日本出身というマルチルーツの選手だが、「小さいときから日本のためにプレーしたいとお母さんに言っていた。日本代表のユニフォームを着たい。お母さんの喜ぶ姿を見たい。小さいときからそういう考えがあった」と日本代表への強い思いがあり、昨年6月のモーリスレベロトーナメントで初招集された。

 反町委員長は就任当初から、世界各地に住むマルチルーツの選手の発掘をミッションに掲げ、時には欧州に渡って直接交渉を重ねてきた。「本人の意向を大事にしないといけない中で、お母さんにもお会いして、日本の代表として戦いたいという話を受けた」。そう当時を振り返った反町委員長は、高橋にとって初の公式大会に向けて「まだ年齢的に一番若いが、ハートはガツガツしていて、全く遠慮せずに入れている。非常に頼もしい。このまま行けばロス世代の中心選手になってもおかしくないので、段階を踏んで、世界でもっと経験して、日本のために活躍してほしい」と期待を寄せた。

 またU-20日本代表チーム全体の話では、今大会ではグループリーグを突破したトーナメントに進出した場合、A代表がカタールW杯で苦杯をなめたPK戦が行われる可能性もある。チームはウズベキスタン渡航後、地元チームとのトレーニングマッチでコンディション調整を行ったが、ハーフタイムと試合後にそれぞれPK戦の練習も組み込んだという。

 反町委員長は「みっちりと練習しています」と笑みを見せつつ、「自分たちだけで練習するのと相手チームと練習するのでは感覚も違うし、GKのフィーリングも違う。われわれにとってトレーニングゲームの一つの課題としては良かったと思う」と手応え。「W杯であるとか、アジアのカップ戦であるとか、カップを争って戦う日本代表の場合、必ずトーナメント方式になるので、そこのところは避けて通れない。チャンスがあればやっていきたい」と今後の見通しも語った。

 現在はU-20日本代表が大舞台を控えているが、今季はU-17W杯の予選、パリ五輪の予選が控えており、また次の世界大会につながる世代の活動も徐々に始まっている。コロナ禍による渡航制限はすでに撤廃されており、山本昌邦ナショナルチームダイレクターの就任を機にアンダーカテゴリの担当がメインとなった反町委員長は、海外遠征を主体とした強化にも再び乗り出していく方針を強調した。

「ここに来ても誰もマスクをしている人はいないし、今月中旬から日本もそういう状況になっていく。またこれからはおそらくコロナの影響で大会が中止になることはない。そうした中で、これまで失われた何年間かがあるわけなので、そこを埋めるべく、特にアンダーカテゴリはやっていく必要があるかなと思っている」

「U-20は5月でW杯が終わるが、五輪世代までのアンダー世代はとにかくチャンスがあれば、クラブとも話をしながら、有意義な代表活動をしていきたい。特に外に出て、国際経験を積むというのをやっていかなければいけないと考えている。ランクの上のチームと試合をするのを目的としてやっているので、積極的に親善試合を含めたマッチメイクをして、いいメンバーを揃えて胸を借りにいきたい。アンダーカテゴリでも“待ったなし”で積極的にやっていきたい」

(取材・文 竹内達也)
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