所属クラブでは生みの苦しみも味わっている。カタールW杯のスペイン戦で決勝点を決めるなど存在感を示した日本代表MF田中碧(デュッセルドルフ)は「W杯を経験して、自分の力のなさを感じるとともに、大きすぎる舞台を経験したからこそ、少し余裕ができた感覚はある」と、チームに戻ってから自身の成長も実感している。

「その感覚はいずれなくなるだろうけど、(W杯で)できなかった感覚、ヒリヒリした感覚を忘れずに1日1日やろうと。吹っ切れた部分もあって余裕も出てきたけど、その中で結果が付いてこないもどかしさはものすごくある」

　今季のブンデスリーガ2部では20試合に出場しているが、得点はW杯前に決めた1ゴールのみ。「W杯で取れたのにここで取れないのかと」。そう率直な思いも吐露する田中は「結果が付いてこないのは自分の中でも苦しい。何回もチャンスはあるけど、外している。そこだけかなと思う」と力を込めた。

　W杯後初の代表活動ということもあり、そうした自身の悩みについても積極的にチームメイトに打ち明けているようだ。「どうやったら点を取れるかは得点を重ねている人にしか分からない。そこはいろんな人に聞いちゃう」。それは1歳上の幼馴染であり、プレミアリーグで結果を残し続けているMF三笘薫に対しても同じだという。

「(三笘)薫さんにもしょっちゅう聞いている」と話した田中は、三笘からどんなアドバイスがあったのかと聞かれると、一瞬、答えそうになったあとに「危ない。これは薫さんの企業秘密なのでやめておきます」と笑顔で応じ、報道陣からも笑いが起きていた。

(取材・文　西山紘平)