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不遇の先に巡ってきたチャンス…旗手怜央「そこで活きないのであれば僕のいる価値はないと思っていた」

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前半に相手の背後に抜け出したMF旗手怜央(セルティック)

[6.15 キリンチャレンジ杯 日本 6-0 エルサルバドル]

 不遇の先にようやく訪れた日本代表での2試合目、MF旗手怜央(セルティック)は並ならぬ覚悟でピッチに立っていた。任されたのは本職のインサイドハーフ。「本当にスタッフ陣に感謝しているし、ただそこで活きないのであれば僕のいる価値はないと思っていた。チャンスを与えてもらったし、ここで自分の良さを出せないのであればいる意味はないと」。その言葉どおりに局面局面で個性輝くプレーも見せ、一定の価値を示してみせた。

 旗手は東京五輪後の2021年11月に行われたW杯最終予選で、初めてA代表に招集。だが、アウェーでの連戦を2試合ともベンチ外で終えると、その後は難しい立場に立っていた。続く昨年1月シリーズは招集外に終わり、次の3月シリーズではW杯出場権獲得後のベトナム戦でデビューを果たすも、前半45分限りで交代。続く6月の活動での招集外を経て、9月のドイツ遠征で復帰したがシステム変更のあおりを受けて出番を得られず、カタールW杯の選考レースに残れなかった。

 初招集から1年半が経過したこの日、ようやく迎えたA代表での2試合目。それも周囲にはMF三笘薫、MF守田英正、DF谷口彰悟といった元川崎F勢に加え、FW上田綺世、MF堂安律、MF久保建英といった東京五輪組、かつて19年ユニバーシアードに出場したDF森下龍矢(名古屋)も含めれば見知った顔ばかりが並び、持ち前の連係能力を発揮するには十分すぎる環境が整っていた。

「その選手たちがいたからこそ、逆に自分の役割をできなかったら自分の価値はなかった。今日の試合でそこが自分に課していたタスクだった。それができないなら自分がいる価値はないと思っていた」(旗手)

 序盤こそ調整役に徹するプレー選択が目立ったが、そうした決意は時間が経つごとにパフォーマンスにも表れていった。前半22分には強烈なミドルレンジからの左足ボレーシュートを披露。試合を通じてミスが相次いだ相手GKもこの時ばかりはビッグセーブを見せ、「俺の時だけ頑張んないでほしいなと(笑)」と苦笑いも浮かんだが、逆足での完璧なシュートには元FWの煌めきが垣間見えた。

 その後もバランスを取りながらも何度か危険なエリアに顔を出し、とりわけ圧巻だったのは後半10分の決定機。中盤で前を向いた旗手はボールを縦に持ち運び、左のフリーの味方につなぐと見せかけ、右を走った上田に矢のようなグラウンダーパスを通してみせた。

「律が走った後ろに綺世がいたのはずっと見えていた。僕のタイミングがちょっと遅かったけど、僕なりにはあのタイミングがいいのかなと思った」。

 惜しくもオフサイドに終わり、旗手自身も「そこはまた合わせれば良くなるところだと思うので、もっと合わせていければ」と改善の余地を残したが、たとえ相手が11人であったとしても、より強い相手でもあったとしても、おそらく止められなかったであろうワンプレーだった。

 終わってみれば結果に直接関与するプレーはなく、旗手は「最初からやるべきことをやってゴールやアシストができればよかったけど、そこができなかったのがまだまだ課題」と反省点も述べた。

 それでも90分通してのパフォーマンスには充実感ものぞかせた。「前線の選手は個が強かったので、僕はうまく周りを見つつも自分の個を出すという部分を意識していた。ビルドアップの部分はすごく良くて、ゴール前に行けば自分の良さを出すという点で、そこの役割を自分の中で整理してやれたと思う」。A代表での生き残りに向け、まずは次のチャンスへの可能性をつないだ。

(取材・文 竹内達也)

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