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ドイツ相手に決勝弾! 目覚めたエース候補FW上田綺世がA代表で初めて得た「違う実感」

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日本代表FW上田綺世(フェイエノールト)

[9.9 国際親善試合 日本 4-1 ドイツ ボルフスブルク]

 わずか45分間のプレータイムで幕を閉じたカタールW杯から10か月、日本代表FW上田綺世(フェイエノールト)はあの日ピッチに立てなかったドイツ代表との再戦で大きな爪痕を残した。試合後には「今までとは違った心境もそうだし、感覚もそうだし、全く違ったゲームになった。楽しめたかなと思う」と述べ、これまでの代表戦とは違う充実感をにじませた。

 カタールW杯のグループリーグ初戦で勝利したドイツとの敵地でのリターンマッチ。10か月前の歴史的勝利をベンチで見つめていた上田はこの日、1トップの先発でピッチに送り出された。

 すると1-1で迎えた前半21分、ワンチャンスで大仕事を成し遂げた。右サイドで伊東純也と鎌田大地が絡み、菅原由勢の折り返しが伊東に入ると、右足で合わせたシュートがコースを外れて上田の足下へ。咄嗟の反応で合わせるしかないボールだったが、うまくゴール右隅に転がし込んだ。

 ストライカーらしい一発に上田は「跳ね返りを詰めたゴールになったけど、常に準備していたので取れたゴールだったと思う」と手応え。そのまま日本がリードを守り切ったため、結果的にこれが決勝点となり、「ゴールのタイミングもそうだし、取り方も含めて、多少は日本代表の結果に貢献できたかなという実感がある」と喜びを語った。

 また得点以外の場面でもDFアントニオ・リュディガー、DFニクラス・ジューレといった世界的なセンターバックを張り合い、攻撃の糸口を探る役割を遂行。相手の身体の寄せ方によって手の使い方を工夫するなど、駆け引きの巧みさも光った。そうしたポストプレーのスキルアップは、ヨーロッパの舞台で日々戦う中で磨き上げ、徐々に自信になってきていたものだという。

「もちろん僕の武器は動き出しだけど、ああいう相手に長距離を走って背後を一発で取って点を取るというのは現実的じゃない部分もある。いまはそうじゃないところもチームでトライさせてもらっていて、ポストプレーもそう。今までのプレースタイルよりもポストプレーをしながらサイドで高い位置を取らせて、そこからゴール前の動き出しを生かしたり、ポジショニングでああいう得点につなげるというのが少し形になったのかなと思う」

 また前半には決定機がGKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンに阻まれる場面もあったが、それも冷静に受け止めていた。「相手のキーパーは世界のトップトップのGKだったし、そういう相手にああいうシーンを作れたというのは僕としてはすごい嬉しい」と充実感ものぞかせつつ、「ああいう相手に当たり前に決めなきゃいけないので、まだまだだなというのを感じつつ決められる自信をつけていかないといけない」と前を向いた。

 第1次体制の集大成にあたるカタールW杯では、ターンオーバーで臨んだコスタリカ戦で前半45分間のみの出場。そのまま大会を終えた。しかし、第2次体制ではエース候補の一角として期待され、6月シリーズのエルサルバドル戦でA代表初ゴールとなるPKを決めると、このドイツ戦では決勝点も挙げ、着実にステップを登り始めている。

「W杯もそうだし、W杯予選もW杯の出場が決まった時も、僕自身はその場にはいた。ただ正直自分が何かに貢献したり、自分が何かできたという感覚が全く得られなくて、僕は正直、ほぼいただけだった。W杯のドイツ戦もスペイン戦もそうで、コスタリカ戦も前半で代わっていた。そういった中で今日の試合は違う感覚、違う実感を得られたなと。自分の中での達成感を含めて多少はあります」

 ただ、そうした充実感をにじませつつも、最後は厳しい目線を自らに向けた。「ただ、もっとチームを楽にすることができたし、最後タケ(久保建英)とかフレッシュな選手がゲームを終わらせてくれたけど、もっと早く終わらせることができた。前半で決めていればチームも僕ももっとスムーズにプレーできた。まだまだFWとして鋭さが足りないなと痛いほど実感している」。実感した前向きな変化と、それでも突きつけられた課題。上田綺世は厳しい舞台で戦いながら、着実に前に進もうとしている。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集ページ
竹内達也
Text by 竹内達也

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