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選手層広がる森保Jに“世界基準”を還元する冨安健洋「アーセナルでは単なる一つのパスですら…」

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DF冨安健洋(アーセナル)

 9月シリーズのドイツ戦(○4-1)でカタールW杯以来の日本代表復帰を果たし、さっそくハイレベルな基準をチームに落とし込んでいたDF冨安健洋(アーセナル)。出場メンバーに新たな顔ぶれが並び、選手層に広がりを見せる今回の10月シリーズでは、より一層その存在感が増している。

 13日のMIZUHO BLUE DREAM MATCH・カナダ戦(○4-1)では、第2次森保ジャパンで初めての右CBで前半45分間出場。隣の左CBには町田浩樹、右SBには毎熊晟矢とA代表通算2試合目の選手が並ぶ中、声やジェスチャーでたえず指示をし続け、相手に流れを明け渡さないようチームに落ち着きをもたらしていた。

 W杯を終えた第2次森保ジャパンでは吉田麻也、長友佑都、酒井宏樹といった最終ラインの要が一気にチームを離れ、第1次体制発足当初から主力に定着した冨安は、実績でも経験でも先頭をいく存在となった。そんな冨安が経験の浅い選手たちに何かを伝えようとする姿勢からは、この先のチームを引っ張っていくというリーダーシップが見て取れる。

 ところが15日の全体練習後、報道陣の囲み取材に応じた冨安にチームメートへの働きかけに込めた思いを問うと、次のような答えが返ってきた。

「シンプルにアーセナルでやっていることを還元したい思いが強い。アーセナルで学んでいることがトップトップだと思っているし、信じているし、そこを還元したいという思い、そっちのほうが強いですね」

 意識しているのはDFリーダーとしての振る舞いではなく、あくまでも「世界トップレベルの基準」を代表チームに落とし込むということ。現在の森保ジャパンでは、多くの選手が「チームがより強くなるためには、より多くの選手がトップレベルの舞台でプレーすることが大事」という旨の発言をしているが、そうした考え方にも通ずる意識だ。

「アーセナルでは単なる一つのパスですら『違う』と言われたりするので、3個、4個先の局面をイメージしてパスを出さないといけない。その判断のところもそうだし、奪ったボールをマイボールにできるかできないか、そのワンプレーでも試合が変わる。いまはそこの細かい部分を学んでいるところ」。冨安が伝えたいのはそうしたディテールの部分だという。

 カナダ戦で先発を務めたGK大迫敬介はこの日、「ビルドアップのボールの持ち方だったり、味方に対しての引き出し方というところでは、全部が全部同じシチュエーションではないので、シチュエーションごとの立ち位置やボールの持ち方をお互いで合わせるようにしている」と冨安との関係性を語っていた。日々のやり取りを通じて、そうした場面ごとの適切な振る舞いがチームに落とし込まれているようだ。

 なおかつ冨安は、世界トップレベルの基準をチームメートに伝えるというだけでなく、自身のプレーでもってそれを表現しようとしている。アーセナルでは両SBが主戦場となっている中、CBを務めるDFウィリアン・サリバ、DFガブリエル・マガリャンイスからも日々学びを得て、代表の場で実践しているという。

「いまアーセナルでCBをやることは少ないけど、チームの時間をコントロールしていくのがCBの役目だなと思っている。時間をコントロールするところを学んでいるし、いまもトライしているところ。やっていくうちに少しずつ良くはなっていると思うけど、サリバやマガリャンイスに比べるとまだまだなので、そこも見て学びながら、代表でまたそれも還元できればいいなと思っている」

 アーセナルではプレミアリーグとUEFAチャンピオンズリーグ、そして国内カップ戦と厳しい連戦が続いている中、要所での活躍により存在感を高めている冨安。この時期の代表合流には少なからず負担もつきまとうものだが、それでもなお、世界トップレベルの舞台で挑戦を続けるDFが森保ジャパンにもたらす価値は大きい。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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