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スーパーゴールも日本での放送なし…久保建英「国と国との優しさを出してくれたらハッピーだったのかなと」

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MF久保建英(ソシエダ)

[11.21 W杯2次予選第2戦 日本 5-0 シリア ジッダ]

 日本国内での試合中継が決まらないまま迎えた北中米ワールドカップアジア2次予選・シリア戦、日本代表は5-0の圧勝でW杯予選2連勝を飾ったが、その模様をファン・サポーターが見届けるためには、日本でサービスを展開していない有料配信サイトに契約するしかなかった。

 W杯2次予選はホームゲームを開催する協会が放映権を各国の放送局に売却する仕組み。この一戦は試合の約1か月前にサウジアラビアでの代替開催が決まったことに加え、キックオフ時刻の決定は約2週間前にずれ込んだため、放送局がなかなか手を挙げることができず、試合までに金額などの条件面の折り合いもつかなかった。

 試合後、プリンス・アブドゥラー・アルファイサル・スタジアムで報道陣の取材に応じた田嶋幸三会長は「権利が向こうの協会にあって、それを売ったエージェントさんがどんどん価格をつり上げようとされていたのは事実」と経緯を説明。「直前にいろんな形で(金額を)下げたみたいですが、日本のテレビ局は編成とか、いろんな枠とか、OTTにしてもサーバをどう確保するとか、簡単なことじゃない。2日前に決まることなんて日本ではあり得ない。番組編成を全部変えるのか。そういうのをわかっているエージェントだったらよかった」と厳しく指摘した。

 その上で「最初はキックオフが3時過ぎだったけど、それに何億も寄越せというのは出せないですよ」と具体的な条件を示唆。「放送できなかったことがすごく申し訳ない気持ちもあるが、無理してお金をつり上げていくことをやって、放映権の相場まで崩れていくことが良いとは思っていない」と協会側の立場を説明し、「もう少しAFCも考えていかなければいけないんじゃないかなと思う」と訴えた。

 今後の対応については「変なつり上げをしたら(収入が)ゼロになってしまうということ」とし、今回の交渉不成立が対戦国の放映権収入の減少につながることを示唆。また来年3月には北朝鮮とのアウェーゲームも控えるが、「まだ試合場所も日程も決まっていない。60日前に決めないといけないので決まってからになると思う」と述べるにとどめた。

 日本で試合を見られないことは、選手にとっても残念な結果となった。大勝の口火を切るスーパーゴールを決めたMF久保建英(ソシエダ)は報道陣の取材に対して「僕のゴールを見て欲しかったというより、代表の試合は当たり前に地上波でやってほしいという思いはありますね」と語った。

 また放映権の問題については「僕ら選手にどうこうコメントできる問題じゃない」としながらも、「田嶋会長が言っているとおり、いくら日本で試合を中継したいからと言って、相手の要求を全部飲むわけにもいかないと思う。やっぱりお互いの国と国との優しさを出してくれたら、日本のみんなも試合を見ることができてハッピーだったかなと個人的には思ったりもします」とコメントした。

 キャプテンのMF遠藤航(リバプール)もこの問題に言及。「本来なら少しでも多くのファン・サポーターに見てもらいたいのが本音だけど、しょうがない」と受け止めつつ、「そもそも2次予選の形がどうなんだというのもあるし、こういう試合を実際にファンの人に見てもらった時に楽しんでもらえるのか疑問もある。点が入って楽しいという人もいれば、物足りないという人もいるとなると、この形がどうなのかというのは選手としても言っていければ」と2次予選のあり方も含め、疑問を呈した。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集
竹内達也
Text by 竹内達也

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