beacon

“W杯まで無敗”掲げる冨安健洋、アジア杯制覇への決意「全選手タイトルが欲しいのは当たり前」

このエントリーをはてなブックマークに追加

DF冨安健洋(アーセナル)

[11.21 W杯2次予選第2戦 日本 5-0 シリア ジッダ]

 勝ち癖をつけたい——。DF冨安健洋(アーセナル)が日本代表に復帰した9月シリーズ以降、たびたび口にしていた言葉が徐々に現実となりつつある。

 9、10月の親善試合ではドイツ、トルコ、カナダ、チュニジアという強豪国相手に4連勝を果たし、今月始まった北中米W杯アジア2次予選ではミャンマー、シリアに5-0で2連勝。2次予選の相手はたしかに格下ではあるが、ミャンマー戦では被シュート0、シリア戦でも被シュート2本の枠内0に抑え込むなど、ほとんどスキも見せない戦いぶりを続けている。

 シリア戦では日本歴代最多タイとなる国際Aマッチ8連勝を達成。冨安は「ベストはW杯本大会まで一度も負けないこと」と視座を高く持ちつつも、「勝ち癖をつけるという意味ではどこが相手であれ、勝負にこだわって勝たないといけないので、2試合しっかりと勝つことができたのは大きな収穫かなと思います」と手応えを語った。

 わずか9日間の国際Aマッチウィークで欧州から日本、日本から中東への移動を強いられ、2試合が終われば再び欧州に帰るという厳しいスケジュールが続くW杯2次予選。なんとかコンディションを整え、実力どおりのパフォーマンスを発揮すれば大差がついてしまうという現状に、思うところがないわけではない。それでも選手たちは「自分たちにフォーカスする」を合言葉にクオリティーを追求し、2年半後に控えるW杯本大会への積み上げを模索している。

「普段ヨーロッパのビッグクラブだったり、4大リーグ、5大リーグ、そしてチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグあたりでやっている選手たちがいる中、モチベーションが難しい部分はもちろんありますけど、森保さんがいつも言っているように自分たちにフォーカスしてレベルアップできる部分を毎試合探しながらやれていると思います」

 A代表でトップパフォーマンスを続けるためには、より過ごす時間の長い所属クラブでの日々が重要なのは言うまでもない。そのために所属クラブに戻った後のことを見据え、10時間近くの時差がある日本での代表活動期間も、欧州のタイムゾーンで生活しながらコンディション調整を行っている。

 今回の活動では森保一監督が大規模なターンオーバーを敢行し、冨安も1試合目のミャンマー戦はコンディション調整のためベンチ外。だが、今後の最終予選では連戦出場の必要に迫られる可能性もあることから、2試合を通して帯同することにより、調整法のテストが進んだ側面はありそうだ。

 冨安は「アジア予選では移動が伴ってきますし、それは今回だけじゃなくこれからもそうなってくるので、タフにはなりますけど、これで終わりではない。戻ってからパフォーマンスを高めないといけない」と現実を見つめつつ、「またこれからやっていく上でも、ここでしっかり勝って終われたので良いスタートかなと思います」と振り返った。

 次の活動は元日に行われる親善試合のタイ戦。ウィンターブレイクのないプレミアリーグが開催期間中のため、冨安の招集可否は不透明だ。それでもシリア戦後にはSNSに「応援ありがとうございました!次は元旦国立!」と投稿しているように、どの立場であっても当事者意識を持って臨む構えだ。

 またその直後に控えるのはW杯前唯一のタイトルとなるアジア杯。「勝ち癖をつける」というミッションを続けていくにあたっても、とくに重要な機会となる。

 アジア杯出場のためには所属クラブの活動を1か月以上も離れる必要があるため、欧州でプレーする選手たちには葛藤もつきまとう。もっとも出場時間ではドイツ戦のわずか1失点しか許していない結果が示すように、優勝を狙うからには冨安の存在は不可欠。冨安自身も高いモチベーションを持って臨もうとしている。

「僕らが勝たないといけない大会だと思っていますし、前回大会は決勝で悔しい思いをしているので、そういうことも含めて大きな意味を持つ大会だと思っています」。頭に残るのは前回大会の決勝でカタールに敗れた記憶。「タイトルはタイトルですし、全選手タイトルが欲しいのは当たり前。タイトルの中の一つとして全力で取りにいくだけかなと思います」。欧州最高峰の争いを続ける中でもなお、冨安はアジアチャンピオンの座をたしかに見据えている。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集
竹内達也
Text by 竹内達也

TOP