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アジア杯帯同で鈴木彩艶の姿勢に学ぶ静岡学園GK中村圭佑、“綺世キャノン”の衝撃も実感「今の身体能力では追いつかない」

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アジア杯帯同のGK中村圭佑(3年、東京V内定)

 アジアカップを戦う日本代表にトレーニングパートナーとして帯同している静岡学園高のGK中村圭佑(3年、東京V内定)が22日、報道陣の取材に応じた。当初は23日未明に帰国予定だったが、控えGK野澤大志ブランドン(FC東京)が左手首の負傷で一部練習に参加できないため、帯同期間の延長が決定。「レベルの高い中でのトレーニングをもっとできるのはプラスなことでしかない」と充実感をにじませた。

 今回のトレーニングパートナー5人のうち唯一の高体連出身。昨年12月31日に全国高校サッカー選手権2回戦で敗れた後、1週間も経たないうちにカタール・ドーハに向かった。「選手権が終わった時点で、もう次のステージでやらないといけないんだと気持ちを切り替えられていた」(中村)。新シーズンからは東京ヴェルディに加入するが、J1リーグよりも先にA代表の基準に身を置くチャンスを得た。

 今回のアジア杯では鈴木彩艶(シントトロイデン)、前川黛也(神戸)、野澤大志ブランドン(FC東京)と3人のGKが選出。中村はほとんど全ての練習メニューに参加し、3人や下田崇GKコーチと共にスキルアップに励んでいる。

 特に刺激を受けているのは正GKを務める鈴木からだ。「彩艶くんは最初の正面キャッチ一つのところから手の形などをすごくこだわってやっている。練習の合間でも自分の動きの確認をすごくしている」(中村)。守備範囲の広さ、安定したキャッチング、力強いパンチングという武器が目立つ鈴木だが、中村は練習の取り組み方からも学びを得ているようだ。

 またシュート練習では、A代表攻撃陣のクオリティーの高いキックを日々受けている中村。居残り練習でもゴールマウスに立っているが、最も大きな衝撃を受けたのはFW上田綺世(フェイエノールト)のシュートだったという。

「綺世くんは枠に入ると威力もスピードもある中で、ああいうシュートにどんどん食らいついて止められるようにならないとこのレベルでやれない。あのレベルを止められるようにならないといけないと思う。枠に来ないこともあるけど、枠に入ったら自分の今の身体能力では追いつかないシュート。差を感じている」(中村)

 A代表のGKも苦しむ規格外の“綺世キャノン”に対し、高校年代との質の違いに戸惑うこともあったそうだが、前川の助言にも助けられた。「黛也くんからはどんどんチャレンジしろと声をかけてもらった。このくらいのレベルのシュートは受けて来なかったので、ちょっと甘いコースでも弾いてしまったり、アンパイなプレーを選択していたけど、チャレンジしてキャッチしに行けと」(中村)。そうした先輩GKの支えもあり、ここまで2週間にわたって充実した日々を過ごしているようだ。

 野澤の負傷を受けて帯同期間の延長が決まり、決勝トーナメントに向かうムードに身を置く経験も得られそうだ。

 今大会では守備陣に失点が続く中、鈴木のミスがフォーカスされる姿も見てきた。「ああいうアウェーの中でやるのは難しいと思うし、GKは一つのミスで勝敗に絡むのですごく難しい」と現地帯同ならではの肌感覚を得つつ、「周りから言われてしまうのはしょうがないところもあるけど、チームを救う場面もあったし、練習の取り組みでもすごくこだわっているので自分も学ばないといけない」と敬意を口にする。

 また選手だけのミーティングにも参加し、国際大会の選手たちの緊迫感も味わった。「(遠藤)航くんが最初に喋り始めて、そこからどんどん他の選手が考えて喋っているのを聞いて、自分たちの代ではまだそれを感じたことがなかったので刺激になった。それをどんどん取り入れていけないとこういう集団になれないし、強くなっていかないと思うのですごく学びだった」。A代表基準のディスカッションからも刺激を受け、自身が目指す来年のU-20W杯、28年のロサンゼルス五輪にも活かしていく構えだ。

 そして何より、A代表の一員になりたいという思いが大きくなった。「今回はトレーニングパートナーという立ち位置で来たけど、メンバーとして入っていくことが自分の目標。そこにどんどん入っていかないといけない年代だと思うので、代表の基準を感じながら、ここにどんどん入って来られる選手にならないといけない」。まずは与えられた残りの期間、そのための足掛かりを掴む。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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