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“難役”クローザー起用続く佐野海舟「みんながキツい中でもさらに勢いを出せるように」

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MF佐野海舟(鹿島)

 昨年11月に日本代表デビューを果たしたばかりのMF佐野海舟(鹿島)は、今回のアジアカップでクローザー起用が続いている。グループリーグ初戦のベトナム戦(○4-2)では後半32分、第3戦のインドネシア戦(◯3-1)では同37分から途中出場し、終盤の追い上げを狙ってくる相手に対処。難しい役割の中で自身の強みを活かそうと奮闘していた。

 ボランチというポジションの特性上、試合の流れやスコアに加え、周囲のメンバー、対戦相手のムードによってもプレー選択が左右されるため、試合途中から入っていくのは特に難しい。ただ、慎重に負荷を調整しながら戦う代表戦においてクローザーの存在は必須。カタールW杯最終予選では経験豊富なMF原口元気がその任務を託され、出場機会を重ねていた。

 そうした役割に初の国際大会で挑んでいるのが佐野だ。試合途中からの起用には「たしかにとても難しい」と話すが、「自分が入るタイミングは最後で締めないといけないところなので、どうやって試合を締められるかが自分に必要なことだと思う」と真摯にタスクと向き合い、役目を全うしようとしている。

 インドネシア戦では佐野の投入後にロングスローから失点。ボランチとしての役割で防ぐことは難しいものだったが、「そこは自分の課題」と振り返り、「まずああいうロングスローを与える位置に行かさないようにというのも大事だし、みんながキツい中でもさらにしっかり勢いを出せるようにというのを心がけてやることが必要だと思う」と力を込める。

 日本代表のボランチには現在、MF遠藤航とMF守田英正が絶対的な存在として君臨。今回招集外のMF川辺駿、MF田中碧、MF伊藤敦樹と個性を持った選手も控えている。だが、クローザーという役割から考えれば、カバーエリアの広さと球際の強さを誇る佐野が抜きん出る余地は大いにあり、その活躍を続ければ代表定着、そして先発出場も大きく近づきそうだ。

 また佐野は守備の役割だけでなく、攻撃の能力向上にも余念がない。合宿開始当初から全体練習後の居残りシュート練習に積極的に参加。名波浩コーチらがあえてコントロールしにくいボールを配球し、なんとか収めたボールを強引にでもシュートに持ち込むという形を何度も繰り返している。

「もちろん自分の思う位置に置いてシュートを打てるのが一番だと思うけど、試合状況で思ったところに置けなくても、(シュートを)良いところに持っていくことが必要だと思っている」。課題に対するアプローチは明確。「試合ではなかなかまだシュートを打つ場面がないので、どう繋がっているかはわからないけど、どんどん前に出て、ゴールに絡んでいくことが必要だと思っている。精度も上げられるように頑張っていきたい」という取り組みが実る日がきっと訪れる日も来るだろう。

 そうして迎えるアジアカップの決勝トーナメント。一発勝負ではクローザー役の重要性もより高まっていくであろう中、佐野は「前向きなプレーだったり球際の部分、自分に出せるところをしっかり出していくことだけ、チームの勝利に貢献できることを考えてやっている」と覚悟を深め、一戦一戦に向かう。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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