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ピッチサイドで浴びた万雷の拍手、相手タックルに降り注いだブーイング…宮市亮が11か月ぶりホーム復帰戦「心が震えました」

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FW宮市亮

[5.28 J1第15節 横浜FM 2-0 福岡 日産ス]

 横浜F・マリノスの2点リードで迎えた後半33分、背番号23がピッチサイドに姿を現すと、得点シーンにも勝るとも劣らない大歓声が日産スタジアムを包み込んだ。

「スタジアムが作り出してくれた雰囲気に改めて圧倒されましたし、心が震えました。本当に待っていてくれたんだなという思いがすごく伝わりました。感謝を込めてピッチで表現したいなという思いでピッチに入りました」。大怪我を乗り越えてきたFW宮市亮がこの日、約11か月ぶりにホームに帰ってきた。

 宮市は昨年7月、10年ぶりに復帰した日本代表の一員としてEAFF E-1選手権に出場したが、第3戦の韓国戦の試合中に右膝前十字靭帯断裂の重傷を負った。前十字靭帯の断裂・損傷は左右を合わせて4度目。一度だけでも選手キャリアを大きく左右するような大怪我とあり、受傷直後は現役引退の選択も頭をよぎったという。

 それでも宮市はキャリアを続けることを決断した。そのきっかけになったのは横浜FMをはじめとした選手・関係者からの励ましの声であり、ファン・サポーターからの復帰を願うメッセージだった。

 宮市は当時、自身のインスタグラムに「皆さんから沢山連絡を頂き、待ってる、一緒に頑張ろう、と言ってくださいました。ファン、サポーターの方々からも、同様のメッセージがたくさん届きました。そのとき、そのメッセージを重荷に感じたわけではなく、心から嬉しかった。多分自分は、やっぱりサッカーがやりたいんだなと、その時思い知らされました。サッカーが大好きだと。だからまた、這いあがっていこうと思います」と決意をつづっていた。

 その熱い思いに対しては、横浜FMのファミリーからさらなる反響があった。負傷後初の公式戦となった昨年7月30日の鹿島戦では、試合前にサポーターが「トリコロールの宮市亮 再びピッチで輝け 待ってるぞ」という横断幕を掲示。選手たちは当時背負っていた17番のユニフォームを包んでウォーミングアップを行っていた。

 また2-0で圧勝した試合後、宮市は涙ながらに「みなさん、本当に今日は最高の試合をありがとうございました。正直、こんなサプライズをしてくれるとは思っていなかったので本当に嬉しいです。みんなが素晴らしいプレーをしていたのでそれに尽きる。まだまだ長い道のりありますけど、みんなでがんばっていきましょう」と挨拶。これに対して主将のMF喜田拓也は「必ず最後にシャーレを渡すと彼に誓いたい」と決意を語っていた。

 あれから10か月。その間、宮市はチームを支える立場としてJ1リーグ王者の栄誉を手にした。今季はFW仲川輝人から「日産(ニッサン)」の背番号23を受け継ぎ、さらなる決意でシーズンに臨んだ。一時はリハビリのメニューが後退することもあった。それでも今月24日、札幌ドームで行われたルヴァン杯で待望の復帰を果たすと、この日、再び日産スタジアムのピッチに帰ってきた。

 試合前からサポーターの熱い思いは感じていた。「スタジアムに入ってから僕のユニフォームを掲げてくれている人がすごくいて、試合に出る時にもすごい歓声をくれて、本当にありがたいなと思ったし、プロを続けてきて良かったなと。そういう人たちがいなかったら僕が現役を続ける選択肢もなかったし、本当に感謝でいっぱいでした」。その大声援は、代名詞のドリブル突破を見せるたびにどんどん大きなものになっていった。

 なかでもスタジアムの雰囲気が最高潮に達したのは、福岡DF三國ケネディエブスから激しいタックルを受けた場面だった。相手選手に大ブーイングが向けられたあと、なおも仕掛ける姿勢を見せ続けた宮市を盛大な拍手が後押しした。

 見ている側からはヒヤリとする場面だったが、宮市の胸には自信さえ宿っていたという。「あのシーンは行かなくてもいいシーンだったのかもしれないけど、僕としては行きたかった。全然怖さもなかったし、試すじゃないけど、公式戦の舞台でああいったシーンで怖さなくやれたのは自信になったなと思います」

 そこでのサポーターの雰囲気に「本当に今まで味わったことのないようなサポーターからの熱い思いを感じたし、本当に感謝しています」と振り返った宮市は、タックルに猛抗議するあまりイエローカードを受けたケヴィン・マスカット監督にも言及。「そういった行為をしてくれるというのは選手として嬉しいですし、期待に応えたいです」と照れ笑いを浮かべた。

 復活を印象付けたホーム復帰戦。20分間弱のプレータイムを振り返った宮市は「リードしている展開でスペースもありましたし、スペースを突いて縦に仕掛けたり、スピードを持ってプレーするところを求められていたのでそこを出さないとなという思いと、あとは単純に楽しかったですね」と充実感をのぞかせた。

 それでも同時に、さらなる決意を燃やしていた。「まだまだスタートラインに立ったばかりなので。マリノスというチームに、サポーターに、スタッフ、本当にいろんな人に支えられてここまで来られたけど、まだまだここからなので頑張っていきたいです」。次節は仲川も所属するFC東京戦。「怪我をした時からすごく支えてもらったし、彼から引き継いだ背番号を背負って対戦できるのが楽しみ。マリノスらしいサッカーをして勝ち点3を獲りにいきたい」と力を込めた。



(取材・文 竹内達也)
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