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「たとえCBで出てくれと言われても…」天王山にかけていた神戸FW武藤嘉紀が気迫の12試合ぶり弾&フル出場

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ヴィッセル神戸のFW武藤嘉紀

[9.29 J1第29節 横浜FM 0-2 神戸 日産ス]

 先制点につながるPK獲得に、勝負を決定づける追加点。J1リーグ天王山の主役となったのはヴィッセル神戸のFW武藤嘉紀だった。シュートも両チーム最多の7本を数え、90分フル出場で守備でも貢献。「今日にかける思いは本当に強かった」というモチベーションをピッチ上で表現し切ってみせた。

 勝ち点1差で追いすがる2位の横浜FMとの頂上決戦。神戸は相手の弱点と言えるサイドバック裏にロングボール攻勢を仕掛け、そこに何度も両ウイングの武藤やMF飯野七聖、インサイドハーフのMF佐々木大樹を走らせながらダイナミックに主導権を手繰り寄せていった。

 そして前半19分、勢いを持って奪ったセットプレーから二次攻撃を展開すると、FW大迫勇也の高さを活かした空中戦から武藤がDFエドゥアルドに倒されてPKを奪取。これを大迫が決めて先制点を奪うと、なおも勢いを止めず、同43分には武藤が自らのシュートで得た右CKをDF初瀬亮のアシストからヘディングで叩き込み、2点リードを奪った。

 武藤にとってこのゴールは、6月25日の福岡戦以来となる12試合ぶりの得点。大一番で見事に決め切る勝負強さが光った。

 ゴールから離れていた間も先発出場を続けていた武藤だったが、コンディションは万全ではなかったという。この日の試合後には、7月上旬から肺炎のような症状があったことを明かし、「なんとか試合に出られている状態が続いていた」と振り返った。

「もう本当にギリギリでチームに逆に迷惑をかけてしまうかなと思ったけど、何がなんでも勝ち点を積み重ねたかったし、出ないで負けてしまったら後悔すると思っていた」。

 ようやく体調が上向き、トップコンディションを取り戻しつつある中で迎えた首位決戦。そこでの活躍に「この天王山、大一番でなんとか結果を残してチームを勝利に導きたいと思っていた。その強い思いがプラスに出たのかなと思う」とすがすがしい表情を見せた。

 また後半は左ウイングと最前線でハードワークを見せ、90分間最後まで走り抜いた。「チームが勝つならなんでもする。たとえCBで出てくれと言われても100%出すつもり。チームがいい状況にいるのは間違いなくみんなが犠牲心を持って、淡々とプレーできているからだと思う」。その姿勢は残りの5試合でも帰るつもりはない。

 この日の勝利により、2位の横浜FMとの勝ち点差は4に開き、独走状態に入った。それでも武藤は「まだまだですね。何も成し遂げていないし、やっぱりマリノスも優勝を何度も経験しているチームでここで諦めるチームでもないのはわかっている。僕らは一戦一戦全力でやり切って勝ち点を重ねていく、それだけ」ときっぱり。「勝ち点が少し離れたからといってやめず、続けることが重要になる」と気を引き締めていた。

(取材・文 竹内達也)
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Text by 竹内達也

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