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オフサイド新ルールは見送りに!! 2024-25競技規則の改正点判明、脳震盪ルール恒久化&“PK侵入”罰則緩和へ

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オフサイド新ルールは見送りに

 国際サッカー評議会(IFAB)は2日、年次総会(AGM)を開き、2024-25シーズンに向けた競技規則の改正を承認した。近年議論が進んでいたオフサイドと一時的退場(シンビン)の新ルールは盛り込まれず、導入見送りが決定。一方、これまで暫定的に運用されていた脳震盪に伴う追加交代選手が恒久的にルール化されるほか、PKの際にペナルティエリア内に不正に侵入した選手に対する罰則などにも変更が加えられることが決まった

 IFABはサッカーの国際統一ルールを定める唯一の機関。イギリス4協会とFIFA(各加盟協会からの投票で意見を決定)によって構成されており、ここで取り決められた競技規則は全世界のサッカー競技会に適用される。今回の改正点は7月1日から欧州新シーズンなどで運用が始まり、Jリーグでも例年7月末ごろ(別途発表)から導入される。

▼脳震盪ルールの恒久化(第3条)
 今回の改正点は5つ。最も大きなものは2021年1月から試験的に導入されている“脳震盪ルール”の恒久化だ。

 世界中の各大会では21年1月以降、試合中の選手に脳震盪の疑いがある事案が発生した場合に「当該選手の所属チームは交代選手を最大1人追加起用できる」といった暫定ルールを大会規定に盛り込むことが認められているが、これが正式に競技規則に明記される形となるようだ。

 国際サッカー連盟(FIFA)は今後、脳震盪に関する啓発キャンペーンを実施予定。これにはIFABによる医療データ分析も役立てられるという。その一方、プレミアリーグなどは脳震盪の発生時、10〜15分間の一時的交代を行えるような改正を要望していたが、これは認められなかったとみられる。

▼PK侵入ルールの変更(第14条)
 また今回の改正では、PKのキッカーがボールを蹴る前に、他の選手がペナルティエリアに侵入した場合における罰則にも大きな変更がある。

 IFABは同日に公式サイトを通じて発表した簡易的な解説で「外野選手の侵入は、影響がある場合にのみ罰される」とのみ説明しているが、今後は不正にペナルティエリア内に侵入した選手がただちに罰されるのではなく、その選手がこぼれ球に触れたり、相手選手のプレーに関与したりした場合のみ反則と判定されることになりそうだ。

 これまではピッチ上の審判員は全ての不正侵入に目を光らせていたが、VARの介入時においては不正侵入があった選手が「影響を与えたかどうか」の罰則基準が採用されていた。今回の改正は、VAR介入基準にルール自体の基準を揃えた形となった。

 もっとも、このルールが文言どおりに適用されれば、ボールに影響を与えない範囲内でペナルティエリア内に侵入する選手が多発し、これまで以上の混乱をきたすことも懸念される。そうした状況を防ぐためには、これまで以上にピッチ上の審判員の丁寧なマネジメントが必要になりそうだ。

 またPKに関しては不正侵入だけでなく、キッカーがボールをセットする際の規則も新設された。新たに「ボールの一部はペナルティマークの中心に触れるか、覆い被さっていなければならない」という旨の文言が明記され、ペナルティマークの外周ギリギリにボールをセットすることは認められなくなるようだ。

▼「故意ではない」ハンドによるPK(第12条)
 PKに関してはもう一つ、複雑な改正が行われる模様だ。

 IFABは公式サイトの簡易説明で「故意ではなくPKが与えられるハンドの反則は、他のファウルと同じように扱われる」とのみ記載。この文言だけでは適用事例が不明瞭だが、複数メディアによると、主に退場相当のDOGSO(決定的な得点機会の阻止)や、警告相当のSPA(大きなチャンスの阻止)の反則の発生時に効力を発揮するようだ。

 たとえば現在のルールでは、DOGSOにあたる反則がペナルティエリア内で起きた場合、反則ををした選手がボールに向けてプレーしている限り、懲罰は軽減され、レッドカードではなくイエローカードが提示されることになっている。一方、上半身を押したりユニフォームを掴んだりなど、ボールに向けてプレーしようとしていなければ軽減対象にはあたらず、一発レッドーカードが提示される規則だ。

 今回のルールで明記される「故意ではないハンド」も、ボールにプレーしようとしている場合と同様、懲罰の軽減対象にあたるとみられる。反対に「故意によるハンド」をペナルティエリア内で行い、DOGSOと判定された場合は、軽減対象にあたらずに一発でレッドカードが提示されることになりそうだ。

▼その他の変更点
 5つのうち2つの改正点は、現行の運用を大きく覆すものではないが、ルールとして新たに明記されるものが並んだ。

 1つは腕章を着用したチームキャプテンの義務化(第3条、第4条)。これまでは「チームのキャプテンは、なんら特別な地位や特権を与えられているものではないが、そのチームの行動についてある程度の責任を有している」という概念的なものだったが、今後はルール上の役割が委ねられる可能性が出てきた。

 実際、今回の競技規則改正にあたっては国内大会の下位カテゴリ(2部以下)に限り、選手の行動改善を目的とした「審判に近づくことができるのはチームキャプテンのみ」という試験ルールの導入も認められている。

 その他、選手のすね当て着用義務に関して「選手はすね当てのサイズと適合性について責任を負う」という明確化(第4条)が行われている。これまですね当てに関するサイズ規定などはなかったが、選手の負傷予防などの名目で、何らかの対応が行われる可能性もありそうだ。

 なお、近年議論が続いているオフサイドに関する改正は見送りが決定。現在はイタリアのU-18カテゴリで「身体の一部でもオフサイドラインより自陣に残っていればオンサイド」という改正案のトライアルが行われているが、IFABは「さらなるトライアルを行うことに同意した」とし、継続審議の意向を示した。

 その他、国内大会の国内大会の下位カテゴリ(2部以下)に限り、選手の行動改善を目的に「審判がチームに対し、自陣ペナルティエリアまで戻るように要求できるクーリングオフタイムの導入」「GKがボールを手に持つ時間を6秒から8秒に延長する」という試験ルールの導入も認めた。GKの“6秒ルール”は現在、あまり厳しい対応は取られていないが、延長が実現すればより厳格に適用されることになりそうだ。

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竹内達也
Text by 竹内達也

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