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ジャメ4発劇を引き立てた磐田ルーキー右SB植村洋斗、本職ボランチの対人守備&毎熊イメージの攻撃力で台頭、U-23代表滑り込みへ

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DF植村洋斗

[3.1 J1第2節 川崎F 4-5 磐田 U等々力]

 壮絶な打ち合いで4ゴールを沈めた主役の陰で、大卒ルーキーが攻守に貢献した。ジュビロ磐田DF植村洋斗は開幕2試合連続スタメンでプロ初ゴールも記録。「(チームメイトから)ナイスと言われましたけど…4点取った方がいたので(笑)。全部持っていかれました」と謙虚に喜びを噛み締めた。

 合計9得点のゴールラッシュは、植村の得点から始まった。前半6分、左サイドから上がったクロスをファーサイドの植村が収める。カットインから左足を振り抜くと、ポストに当たりながらゴールに吸い込まれた。「試合前から(横内昭展)監督からどんどん振っていくぞと。あそこに来たときに迷わずシュートを打とうと思った。入ったのかあんまりわからなかったですけど(笑)」。新人としてクラブ13年ぶりに開幕スタメンを飾った植村が2試合目でプロ初弾を沈めた。

 開始早々に攻撃の場面で目立ったが、その後はFWマルシーニョ封印に徹した。前半21分、快足ウイングにPA右に入られそうなところを、植村がスライディングタックルで阻む。同32分にはPA手前で再びマルシーニョと対峙。相手のコントロールミスを突き、1対1を制した。

 対マルシーニョで意識していたことを明かす。「背後に一発やられたらゴールに直結する。足下にボールが入る分には対応ができるという共通認識があったので、まず背後を絶対にやらせないというところを90分通して意識してうまく対応できた」。磐田はカウンターやセットプレー、PKなどで4失点を喫したが、植村の奮闘によりマルシーニョからの突破は大幅に防ぐことができた。

 さらに、植村は攻撃面でも先制ゴール以外に持ち味を発揮した。後半18分には右サイドライン際から敵陣付近を狙って浮き球パス。FWジャーメイン良のダイレクトパスからMF山田大記、MF平川怜とつながり、相手ゴールに迫った。同31分には最後方からセンターライン付近までボールを運び、最前線を走るジャーメインにロングスルーパスを通す。相手GKの飛び出しでジャーメインが倒されてPK奪取。植村のパスが結果的にチーム4点目の起点となった。

 試合は後半アディショナルタイムにジャーメインが2度目のPKによるゴールで5-4と勝ち越し。磐田がJ1復帰後初勝利を果たす。エース・ジャーメインの大量4得点による勝利だが、植村の働きも大きく勝利に貢献した。

 開幕節では昨シーズン王者・ヴィッセル神戸に0-2と完敗。植村は開幕スタメンを飾ったが、チームとともにJ1の洗礼を受けた。「神戸戦はJ1で戦う基準になった。(J1に)早く適応していくために、開幕戦でヴィッセルとやれたことはよかった。それが今日の勝ちにつながった」。植村は開幕節ではスタミナ切れで後半35分に途中交代。2試合目ではフル出場し、ピッチで勝利を見届けた。

 早稲田大3年の7月、植村は2年後の磐田加入を決断。23シーズンには特別指定選手としてルヴァンカップでデビューした。大学時代の主戦場はボランチで、お手本は遠藤保仁。ジャーメインのPK獲得につながるロングスルーパスも「ボールを運んだときにあそこのコースが見えた。元はボランチなので、それが生きた」とパス精度には胸を張る。

 ボランチから一転、磐田では右SBとして2試合をプレーしている。ボランチのゲームメイク力を生かしながら、右サイドからの攻撃も研鑽を続ける。「試合前は毎熊(晟矢/C大阪)選手のプレーを見てイメージをつけている」。新たなお手本を取り入れ、自身のSB像も少しずつ築いているという。

「SBなら90分間で攻撃も守備ももっとやっていかないといけない。まずは1対1のところで絶対に負けない。そのうえで攻撃でもっとゴール前に関わっていくようなプレーをしないと上に行けない。そこをこれから意識してやっていければ」

 2001年8月生まれの植村はパリオリンピックを目指す世代だ。U-23日本代表は3月に2試合の国際親善試合、4月にはカタールでパリ五輪アジア最終予選を兼ねるU23アジアカップも控えており、“旬”の選手に重きを置く大岩剛監督体制に招集される可能性もゼロではない。

 それでも植村は自身の立ち位置に冷静。「まずはジュビロで試合に出続けること。出続けた結果、あのメンバーに入れればいい」。昇格組の躍進とともに、さらなる活躍を目指すつもりだ。

(取材・文 石川祐介)

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石川祐介
Text by 石川祐介

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