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[国体少年男子]繋ぐ広島県は苦闘も粘り強い戦い。FW上岡士恩の決勝ヘッドなど効果的な3得点で京都府撃破

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後半31分、広島県FW上岡士恩(瀬戸内高、2年)が決勝ゴール

[10.14 国体少年男子準々決勝 広島県 3-2 京都府 吹上浜海浜公園運動広場]

 広島県が激闘を制した。2点リードを追いつかれて迎えた後半31分、広島県はMF長村星波主将(瀬戸内高、2年)の右CKに10番FW上岡士恩(瀬戸内高、2年)がニアへ飛び込む。そして、後頭部での執念のヘッドが決勝点になった。

「1、2回戦決められていなかったので、ゴールを求めていました。嬉しかったです」と上岡。歓喜のゴールは、この日不在だった後輩MF濱陽斗(瀬戸内高、1年)に今後の戦いで活躍するチャンスをもたらす一撃でもあった。「結構、仲良いので。勝ったよと伝えたいですね」と上岡は微笑んだ。

 甲田大二監督(広島工高)は「今日は点を取るのが本当に良いタイミングで。劣勢の中でポンポンと取れたのが良かったですね。組織で主導権を握り切る時間が少なかったけれど、個人のところで点を取れたのは流れとしてはめちゃくちゃ大きかったですね」と振り返る。

 プレミアリーグWEST首位・広島ユースのメンバー中心の広島県は、広島ユースの2バック、3バックと可変しながらボールを繋いで主導権を握る戦い方を導入。その中でキープ力に秀でた長村や、判断良く左足で局面を変えるMF山里謙心(広島ユース、1年)、プレミアリーグで2得点のMF宗田椛生(広島ユース、1年)、MF小林志紋(広島ユース、1年)とテクニカルな選手が個性を発揮する。

 ただし、この日は広島県が3試合目だったのに対し、京都府は2試合目。疲れも影響したか、ロングボールが増えるなど幅を使った攻撃ができずにミスも増加した。ボールの失い方が悪く、守備への切り替えはネガティブなものに。それでも、前半終了間際、後半立ち上がりにMF小林志紋(広島ユース、1年)がゴールを決めて2点を先取する。そこでリードを守ることはできなかったが、苦しい時間帯で相手の隙を突いてCKを獲得。そして、上岡の決勝点で強敵・京都府を上回った。

 自陣からボールを繋ぐ戦いはリスクも大きい。ボールを失った際にどこまで粘り強い守備ができるかもポイントだ。甲田監督は「今回は粘るという感じが出てきた」と評価。戦いながら勇気を持ってボールを繋ぐこと、粘り強く守ること、声を掛け合いながら球際で強く行くことなどが自信を持ってできるようになってきている。

 また、指揮官が「DFラインの林がめちゃくちゃ声を掛けてくれる。この成長が大きい、強気にラインを上げたりとかいう部分は大きいですね」と評したCB林詢大(広島ユース、1年)は前線の動きに呼応する形で積極的にDFラインを上げ、セカンドボールを回収。DF陣は2失点したものの、最後まで足を出してシュートブロックするなど、その奮闘も大きかった。

 今大会、広島県はワールドカップ戦士で広島普及部コーチの駒野友一コーチ、広島ユースの岡本知剛コーチ、そして、長く広島で指導してきた加藤寿一GKコーチの3人も帯同。甲田監督も「明らかに強みですね」という3人の存在もチームにとって大きなプラスアルファをもたらしているようだ。

 上岡は「おるだけで雰囲気変わりました。(駒野コーチから) ハーフタイムに言われたのが足元に置かずに横に流したりして、2タッチ目でシュート打ったりしようかと」。この日は上手く実践できなかったというが、大会期間中に学びながら成長することができている。

 広島県はこれで最近開催された6大会で4度目のベスト4進出。上岡は大阪府との準決勝へ向けて「1点以上は取りたい。明日も勝って優勝したいです」と力を込める。広島ユース10選手と瀬戸内高の5選手、そして市立沼田高のFW安井智哉(市立沼田高、1年)の16人が一体となって戦う今年の広島県。自分たちらしくパスを繋ぎながら、状況に応じた戦い方で大阪府を上回り、16年大会以来の優勝に王手をかける。

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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