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「1-0でもOK」のメンタリティー…帝京大可児、落ち着いた試合運びで中京下して全国へ

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2大会ぶり7回目のインターハイ出場を決めた帝京大可児高

[6.4 インターハイ岐阜県予選決勝 帝京大可児高 2-0中京高 長良川メドウ]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技の岐阜県予選決勝が4日に行われ、帝京大可児高中京高を2-0で破り、2大会ぶり7回目のインターハイ出場を手にした。

 試合は開始早々、30秒足らずで動いた。キックオフのボールを前方に進めると、「前線に絡んで行くのは得意なので、試合の最初から狙っていた」と話すMF吉兼伶真(2年)が、右サイドの高い位置へと侵入。そこからマイナスに入れたボールをゴール前に走り込んだFW長谷部希星(3年)が合わせると相手DFに当たりながら、ゴールネットに吸い込まれた。

「1点獲ってから落ち着いてやれば大丈夫だと思っていました」と主将のDF原田逸希(3年)は振り返るが、幸先が良すぎるスタートはその後の試合展開を難しくしたのも事実。「相手が失点した事で、逆に勇気を持って繋いでこられてしまった」と続けるのは、仲井正剛監督だ。先制点以降もDF堀内祥暉(2年)と原田にボランチを交え、テンポ良くボールを動かす帝京大可児らしいサッカーで前進しながらも、シュートは打てなかった。

 逆に、前向きでのインターセプトから、テクニカルなMF佐藤連真(3年)や元気印のFW澤田敦士(2年)による中京のカウンターを受ける場面もあった。だが、昨年のインターハイ予選準決勝で自らのミスによる失点で、中京に敗れた経験をチームは無駄にしない。「いつものリーグ戦だと自陣ゴール前でも繋いでマイボールにしていこうと言っているのですが、トーナメンという事で自陣ではセーフティーにやろうと伝えていた」(仲井監督)と危ない場面では無理せず蹴り出し、ピンチを事前に回避。帝京大可児がリードを保ったまま、前半を終えた。

 後半に入ってからも帝京大可児がボールを動かしながら、積極的にゴールを目指した。焦れずに攻め続けた事が、相手の体力を消耗させ、前半に少なかったシュートまで持ち込める場面が増えた。しかし、後半8分に放った長谷部のロングシュートは左ポストに直撃。同19分には自陣からのクリアボールが相手DFの裏に落ち、力強く抜けた長谷部がGK橋本大(3年)をかわしたが、シュートは打てなかった。

 終盤は中京のパワープレーに押し込まれる時間が続くも、原田を中心としたDFが冷静に対処。チーム全体に漂っていた落ち着きの理由について、仲井監督はこう話す。「2点目は欲しかったけど、1-0でもOKだというメンタリティーでチームを持って行けたのは大きかった。追いつかれても、そこから(再リードに)持って行くカードを残していた」。同点弾を許さず、迎えた70+3分には粘り強い前線からの守備で相手GKからボールを奪った長谷部が無人のゴールに決めて、帝京大可児が2-0で勝利した。

 今年の帝京大可児は、J1湘南へと進んだMF鈴木淳之介や強烈なドリブラーだった三品直哉(現・明治大)のような強烈な個は不在。エースとして期待されるFW永井斗梧(3年)も怪我で戦列を離れており、発展途上のチームだが、今年も各ポジションに技術力の高い選手が揃っており、帝京大可児らしいパスワークによる崩しは全国でも期待十分だ。加えて、例年以上に守備意識を高めており、準決勝では1失点したが、決勝のような戦いが出来れば、大崩れの心配はない。

 今予選で課題が改めて分かったのも大きな収穫。原田は「自分たちは全国制覇を目指している。そこにはまだまだ足りないのはみんなが分かっているので、インターハイまでにある色んな試合で、攻撃も守備も何段階かレベルアップして、全国で戦えるチームになっていきたい」と意気込みを口にした。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2022

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