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[MOM3963]帝京DF大田知輝(3年)_「ゴールを獲り切れるCB」を目指すディフェンスリーダーの控えめな“得点王宣言”

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帝京高のディフェンスリーダー、DF大田知輝は2ゴールで勝利の主役に!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.28 インターハイ準々決勝 帝京高 4-2 岡山学芸館高 鳴門・大塚スポーツパーク球技場]

 目指すのは『ゴールを獲り切れるセンターバック』。去年の秋まではボランチをやっていたこともあって、もともと攻撃にも高い意欲を持ってはいたものの、新チームになってからの公式戦では、なかなか得点を奪うまでには至っていなかった。しかし、今大会はここまで圧巻の3ゴール。まるで眠っていた得点感覚が、呼び覚まされたかのようだ。

「キッカーの田中(遥稀)も本当に良いボールを蹴ってくれたと思うんですけど、上手くボールに対して合わせるところとか、身体作りに取り組んできたことで、もっとボールを強く叩けるようになったところとか、そういうところが良くなってきたのかなと思います。CKでも何でも、チームのために得点を決めて勝てるのであれば、それがベストなので、もっと狙いたいです」。

 飛び出したのは控えめな“得点王宣言”。帝京高(東京1)を後方で束ねるディフェンスリーダー。DF大田知輝(3年=FC東京U-15深川出身)が記録した高校入学後初となる1試合2得点が、チームを全国4強へと導いた。

 想像以上にバタバタした格好で立ち上がった、準々決勝の岡山学芸館高(岡山)戦。イージーミスも多く、長いボールで裏返される展開の中、この男の一撃がチームの嫌な雰囲気を払拭する。

 前半7分。右サイドで手にしたFK。キッカーのMF田中遥稀(3年)がGKとDFラインの間に絶妙のボールを落とすと、飛び込んだ大田は右足でダイレクトボレー。GKも懸命に飛び付いたものの、ボールがラインを越えていたという判定で、主審はゴールを指示する。

「実際ちょっと自分もわからなかったんですけど、ゴールラインギリギリで入って良かったです」と笑った大田の先制点は、チームにようやくポジティブな空気を連れてくる。「1点獲ったことで、ウチは少し気持ちが落ち着いた部分があって、そこから少しずつ自分たちでやろうといったところが出てきましたね」とは日比威監督。14分にもFW齊藤慈斗(3年)が追加点をゲット。その2分後にはセットプレーから失点を喫したが、2-1とリードして前半を折り返す。

 後半も相手に傾きかけた流れを引き戻したのは、6番を背負うCBのこの日“2点目”だった。決定的なピンチを凌いだ4分後の8分。今度は左サイドから田中が蹴ったCKに、ニアへ突っ込んだ大田が頭で捻じ曲げた軌道が、そのままゴールネットへ吸い込まれる。

「セットプレーは知輝といつもどうやってポイントを合わせられるかの会話はしています。知輝は高さもパワーもヘディングの強さもあるので、うまく合わせてくれましたし、今までやってきた部分がこういうところで出たのは凄く嬉しかったです。是非知輝を褒めていただきたいです(笑)」と話したのは、大田への2アシストをマークした田中。全国の舞台で、練習を積み重ねてきた大切な武器が、確かな果実を実らせた。

 もちろんディフェンダーとしては、4-2というスコアに満足しているはずもない。この試合も2点を奪われ、ここまでは全4試合で失点を喫している。

「実際に毎試合失点してしまっているので、そこは改善しないといけないですし、失点しないために積極的に周りを動かして、ゴールを守ることをもっとやらないといけないと思っています。今日も2失点してしまったんですけど、セットプレーとカウンターからというのは一番いらない失点なので、そこは自分がもっとチームをまとめないといけないですよね」。まずは守備面の改善が急務。その中で大田が果たすべき役割も決して小さくない。

 みんなで目指してきた頂までは、あと2試合。大田はチームの雰囲気の良さをこう語っている。「今はプリンスリーグより声が多く出ていて、時間帯によっての力強さも少しずつ良くなってきていますね。もっと失点しないために声掛けするとか、もっと時間帯に応じたプレーをするとか、そういう部分をもっとチームで統一していけばより強くなるので、そこは良い雰囲気のままやっていきたいと思います」。

 穏やかで、熟考しながら話すタイプの男から、はっきりと発せられた言葉が力強く響く。「日本一、獲りたいですね」。

 カナリア軍団が誇る、クレバーなディフェンスリーダー。攻守に渡って躍動を続ける大田が、全国制覇を目指すチームの主役候補に、堂々と名乗りを上げている。

(取材・文 土屋雅史)
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