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青森山田が「難しい」県大会決勝を2-0で勝利。日本一へ、成長の必要性を実感

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青森山田高が23大会連続のインターハイ出場を決めた

[6.5 インターハイ青森県予選決勝 青森山田高 2-0 八戸学院光星高 プラスタ]

 青森山田が今後へ繋がる苦戦と県連覇――。令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技青森県予選の決勝が5日、八戸市のプライフーズスタジアムで開催され、青森山田高が23大会連続26回目の全国大会出場を決めた。決勝で八戸学院光星高と対戦した青森山田は、後半にCB山本虎主将(3年、22年U-16日本代表候補)とFW米谷壮史(3年)が決めて2-0で勝利。2年前の全国王者が日本一への第一関門を突破した。
 
 八戸学院光星は一人ひとりが良く戦い、青森山田に全力で勝ちに来ていた。その難敵を後半に突き放して23大会連続出場を達成。青森山田の正木昌宣監督は試合後、「(23大会連続の優勝だが、)県大会勝つって難しいですから。実はプレミアで勝つよりも難しい。プレッシャーの中でも勝ち切る力を示してくれたので、そこは評価できると思います」と難しい戦いを勝ち切った選手たちを讃えていた。

 その上で高い目標を掲げる選手たちへの苦言も。光星学院が好チームだったことは確かだが、「全国優勝ってそういう相手をキチッとなぎ倒して圧倒していかないとなし得ないものだと思っているので、そういうところでちょっと浮かれている場合じゃないぞと話しました」と厳しかった。試合終了の瞬間も選手たちに浮かれた様子はゼロ。青森山田にとっては勝つことの難しさ、日本一への課題を体感する70分間になった。

 プレミアリーグと同じテンションで試合をしなければならなかった。指揮官は「今日の試合前に『プレミアリーグと一緒だよ』。インターハイ、選手権の決勝くらいの気持ちと一緒くらいにやらないと、間違いなく食ってやろうという相手のモチベーションの方が高い訳で、歴史を動かそうとする(地元の)青森県内のサッカー少年たちがいっぱいいる中でそこを言ったんですけれどね」。だが、普段の空気感を欠けている部分があった。

 八戸学院光星の畑中孝太監督は、「押し込まれることはあるんですけれども、引かずに前から前からプレスをかけて高い位置で取れるような守備をしたいと思ってやってきました」という。その八戸学院光星は前半、「ゼロで抑えていくプラン」(畑中監督)通りに無失点で35分間を終えて見せる。

 青森山田は開始2分、右サイドへ抜け出したFW米谷壮史(3年)のクロスをFW津島巧(3年)が合わせ、4分にも左SB菅澤凱(3年)の攻め上がりからMF川原良介(3年)のクロスが上がったが、相手にストロングポイントのサイド攻撃を警戒され、クロスやセットプレーの本数を増やすことができない。

 立ち上がりに相手を飲み込むことができず、1本目のロングスロー獲得までに15分を要してしまう。八戸学院光星は素早い読みとカバーリングの光るCB下田聖人主将(3年)とCB府川竜己(3年)を中心に王者の攻撃を良く封じていた。

 攻撃はともにU-17日本高校選抜候補の相手ボランチ、MF谷川勇獅(2年)とMF芝田玲(3年)の切り替えの速い守備に潰され、なかなか前進することができず、シュートゼロ。それでも、人数をかけたサイドの守備が功を奏すなど、相手にもシュートチャンスを与えない。

 青森山田は前半半ば頃から右利きの左SH川原良介(3年)と左利きの右SH杉本英誉(3年)のポジションを入れ替え、テンポを変化。ここからクロスの上がる回数が増加し、川原や米谷、津島、杉本がシュートへ持ち込んでいく。だが、八戸学院光星は25分、26分にGK柏崎幸二(3年)が連続でファインセーブ。思うような攻撃はできていなかったものの、王者に食らいついて均衡を保った。

 青森山田は後半、セットプレーも交えて相手にプレッシャーをかける。そして、後半11分、右SB小林拓斗(3年)が左サイドからロングスロー。このこぼれ球を狙っていた山本がミドルレンジから右足シュートを左隅へねじ込んだ。

 八戸学院光星は後半、MF鳴海龍之介(2年)を起点に相手の背後やサイドを狙った攻撃。鳴海が相手の一瞬の隙を突いて持ち上がったり、俊足MF本多風汰(3年)が仕掛けに持ち込むシーンもあった。青森山田の190cmCB小泉佳絃(3年)らに跳ね返されていたものの、PAへの配球やクロスで幾度か相手GK鈴木将永(3年)やDF陣を脅かす。

 それでも、畑中監督は「まだまだ全然質が違います」。青森山田はシュートを打たせることなく、無失点。また、選手交代も交えて攻め続け、2点目をもぎ取る。35分、川原の右クロスを米谷がダイビングヘッドで決めて勝負あり。王者は、打倒・青森山田を目指して戦って来るチームに勝ち切ったことも、学んだことも次への糧にする。

 山本は「『このままじゃいけない』とさっきも正木さんに言われましたし、夏へ向けて全員でもう一回成長していきたい」。今年はプレミアリーグEASTでJクラブユース、高体連の強豪を抑えて首位。インターハイ、選手権を含めた3冠を獲得した2年前のようなシーズンのスタートを切ることができている。ここから個々の成長はもちろん、セットプレーからの得点など勝ち抜くための力を細部まで突き詰めること。インターハイでは打倒・青森山田を目指してくるライバルたちを圧倒し、1つめの全国タイトルを獲得する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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