beacon

旭川実が2度目のプレミアリーグ、11回のチャレンジを経て得た成長の手応え

このエントリーをはてなブックマークに追加

旭川実高DF渡邊航生(2年)がU-17日本代表MF山口豪太(昌平高1年)の突破を1対1で止める

 高円宮杯プレミアリーグEASTは8、9日に第11節の試合を消化。全12チームが対戦を一巡することになり、夏の中断期間へ入った。

 2012年以来11年ぶりの参戦となった旭川実高(北海道)はここまで1勝1分9敗の勝点4。前期最終戦となるホームでの昌平高(埼玉)戦も0-3の敗北となってしまったが、富居徹雄監督の表情は決して暗いものではなかった。

「10年前と違って勝点はあるからね」と冗談めかして語った指揮官は、「勝ちを取りにいった結果なので」と1度目の挑戦との違いを強調する。ひたすら守備に追われて「何とか失点を削ることばかりに集中させ過ぎてしまった」当時とは異なり、アグレッシブなスタイルへの転換を図った上で臨んだ今シーズンである。

 11試合で51失点という数字はもちろん不本意なものではあるが、「強いチームに挑戦した結果」と受け入れてもいる。力のあるチームに対して自分たちの持っているものをぶつけたらどうなるか。ただでさえ去年から試合に出ている選手も少ない中で、そう簡単に結果が付いてこないのはわかっていた。覚悟の上での戦いである。

 雪深い北海道の旭川で「4月1日からリーグ戦が始まるという難しさ」(富居監督)にも直面し、本州との大きな寒暖差の影響もあり、コンディショニングには苦労もしてきた。「気温差が10度あることもあり、そうなるとやっぱり難しくなる」と指揮官が言うように、プレミアリーグならではの難しさも再認識する日々だ。

「ただ、このリーグをどう戦うかは子どもたちとも話しながらやってきたこと。昔みたいな守備的なサッカーに戻すのは簡単だけれど、それはしたくないと思っているし、特に前期は挑戦しようと思っていた」(富居監督)

 大敗も多く、「北海道ではイージーなミスを二つしても何とかなるような場合でも、こちらでは一つのミスも許してもらえない」(富居監督)感覚も味わってきた。ただ、それこそが財産でもある。

「普段トレーニングで言っているようなことでも、体で感じないとなかなかわからない。でも、ここではそうした厳しさを感じさせてもらえるのは本当に大きい。北海道じゃなくてこちら(プレミア)に基準を合わせないといけないと思っているし、スタッフともそういう話をしています」(富居監督)

 あらためて下の学年からこの基準を意識しての強化が必要だと痛感したと言う富居監督。後期に向けてどういう戦いをしていくかは「また子どもたちと話し合って考えていきたい」と、チャレンジすることへフォーカスした前期から、また違う戦いを模索していくことも示唆する。

 その上で、まずはこのリーグで積み上げた経験を次の大舞台へ活かしたい考えだ。

「子どもたちには言ったんですよ。このリーグで当たるチームは、どこもインターハイに出てくれば優勝候補になるようなチームだぞ。4強だ、8強だと言うなら、このレベルのチームと戦えないといけないんだ、と」(富居監督)

 35分ハーフでの連戦となる高校総体はリーグ戦とは「異なる戦い方が必要になる」(富居監督)舞台ではあるものの、「球際の強さ、切り替えのスピードといった日ごろの積み上げが問われる部分」(同監督)については、手応えもあると言う。

 実際、当初プレミアリーグの強度の高さ、スピードに戸惑ったと言うDF渡邊航生(2年)は「1対1の守備とか自信もついてきた」と言う。主将のDF庄子羽琉(3年)も「高いレベルに基準を合わせてやることで、レベルアップできている部分は確実にある」と手応えを話す。単純に残したスコアだけでは推し量れない積み上げはチームの中で蓄積されているわけだ。

 地元開催となる高校総体に向けても、「このリーグで得たものを出せれば」と意気込む庄子主将は、こう語る。

「(地元開催で)凄く注目してもらえているのは感じていますし、応援もしてもらっている。色々な人の支えをもらって戦えると思う。自分たちが普段からやっている頑張りを出せる凄く良い機会になると思うし、そうしないといけない舞台だと思う」(庄子)

 プレミアリーグの戦いで得た財産を、地元開催のインターハイへ繋げていく。旭川実イレブンは、「旭川でやれることをプレッシャーじゃなくて、力に換えて戦っていく」(庄子)。


(取材・文 川端暁彦)
●【特設】高校総体2023

TOP