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1年夏から完全復帰まで約20か月の苦闘。旭川実MF工藤葵柊は周囲のサポートも力に乗り越え、「大好き」なサッカーに全力

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旭川実高MF工藤葵柊(3年=北海道コンサドーレ室蘭U-15出身)は長期離脱から復活。苦しい戦いでも前を向いて戦い抜いた

[5.21 高円宮杯プレミアリーグEAST第7節 流通経済大柏高 5-0 旭川実高 流通経済大柏高G]

 旭川実高(北海道)は、後半開始直後に守備の要・CB岡本染太郎(3年)がレッドカードを受け(シュートブロックした際のハンドの判定)、大黒柱の右SB庄子羽琉主将(3年)も負傷交代。数的不利を強いられる中、点差も開く厳しい展開となったが、残った選手たちは下を向かずに戦い続け、チャンスを3度4度と作り返していた。

 中でもピッチを離れた庄子からキャプテンマークを引き継いだMF工藤葵柊(3年=北海道コンサドーレ室蘭U-15出身)は、周囲への感謝や「自分が先頭に立ってやっていかないといけない」という思いをピッチで表現していた印象だ。

 後半45分、前線の選手を追い越す形でスプリント。PAへのラストパスから右足シュートを放った。直後にも中盤右寄りの位置から斜めのスルーパスを通してシュートシーンを演出。0-5というスコアに終わったが、背番号23は持ち味の運動量を駆使して最後まで走り切って試合を終えた。サッカーを欲していたMFにとって、どんな状況でもやり切るのは当然のこと。試合後にはサッカーができる喜びとこれからの意欲について語っていた。

 工藤はナショナルトレセンU-14歴を持ち、旭川実進学直後から強豪校で出場チャンスを掴むほどの注目株だった。だが、1年夏に古傷の第5中足骨の怪我を再発。脛の骨を移植する手術を実施したが、今度は脛を骨折したほか、中足骨の怪我も長引くなど2年時は全く全体練習に合流することができなかった。

「1年生の8月からずっと出ていないです。本当に精神的にはしんどかったです」「中学生の時に1回と高校で4回手術していて(復活することは)結構厳しいかなと思っていた」という日々。それでも、ピッチの外側でサッカーのことを勉強し、諦めずにリハビリメニューを続けてきた工藤は、先月にセカンドチームのプリンスリーグ北海道で待望の公式戦出場を果たす。

 そして、札幌大谷高戦でゴールを決めるなど段階を踏んで、5月7日の第5節・FC東京U-18戦でプレミアリーグEASTデビュー。そこから3試合連続先発出場し、この日はプレミアリーグで初のフル出場を果たした。

「家族や監督だったり、チームメートだったり、学校の友達だったりのサポートがあって頑張れて今、試合に出れているので、周りの人には感謝しか無いですね」と工藤。豊富な運動量、ハードワーク、キック精度を特長とするMFについて富居徹雄監督は「ずっと出れていなかった。悪くないですよね」。怪我を再発させないことが何よりも大切だが、今後フィットしてくれば、チームにとって大きな力になりそうだ。

 サッカーができなかった2年間を悔やむことよりも、今に全力。「約2年サッカーやっていなかった時のサッカーやりたいという欲や、ポテンシャルはあるので、サッカー大好きなので、(続けることで)自分のウィークポイントは出てくるので、そこを改善しながらやっていくだけですね。チームの真ん中でやっている選手なので全体を見て、守備も攻撃もどっちもチームの中心になっていきたいです」。まだ復帰したばかりだが、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグを3試合経験。自分の現在地を知る機会にもなっている。

「自分、全国の舞台ってあまり経験したことがなかったので、こういう感じなんだなと。全然通用するところがあるし、プレミアだからといってビビる必要はないんじゃないかなと思います」。この日、チームはスコアこそ0-5だったが、局面局面を見るとできていることは多かった。個人としても、チームとしても力を積み重ねていけば、もっとやれるという感覚がある。

 この後、旭川実はプレミアリーグ2試合を挟んでインターハイ予選に臨む。今年の全国大会の開催地は地元・旭川。「やっぱり旭川でやるんで。まずしっかりと道予選勝ち上がって、今2連覇しているんで3連覇目指して自分たちは準備していく」。重圧はもちろんあるが、プレミアリーグでの経験は大きなアドバンテージ。他にもこれから復帰予定の選手がいる中、工藤はどの試合も全力でやり切り、勝って感謝の思いを表現する。

(取材・文 吉田太郎)
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