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全てのベクトルが向かうのは「自分たちがどうあるべきか」。青森山田は國學院久我山に5発快勝で3回戦進出!

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青森山田高は5ゴールを奪って3回戦へ!

[7.30 インハイ2回戦 青森山田高 5-2 國學院久我山高 東光スポーツ公園球技場B]

 どのチームからもターゲットにされるのは承知済み。それでもすべての相手を上回った先に、求めるべき姿があると信じて、ひたすらベクトルを自分たちに向け続けられるのは、彼らの最大の武器であることに疑いの余地はない。

「やっぱりプレミアでやっているチームに対して、他のチームの方々の食ってやろうというモチベーションが高いと感じますし、それはウチに対しても感じます。でも、そういう相手に対して構えるのではなくて、もっと高いモチベーションでやってやろうということはミーティングでも喋っていますし、そこは今年の子たちは十分理解してくれているので、この2試合もキチッと勝ち切れているのかなという気がします」(青森山田高・正木昌宣監督)。

 際立つ力強さと勝負強さ。30日、夏の高校サッカー日本一を争う令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技2回戦が行われ、2年ぶりの日本一を狙う青森山田高(青森)と國學院久我山高(東京1)が激突。前半で3ゴール、後半で2ゴールと、合わせて5点を先行した青森山田が、國學院久我山に2点こそ返されたものの、5-2で快勝を収め、3回戦へと駒を進めている。

 まずは國學院久我山が高い強度で立ち上がる。右からFW小宮将生(3年)、FW保土原海翔(3年)、FW菅井友喜(3年)が並んだ3トップもハイプレスを掛け続け、中盤でもMF近藤侑璃(2年)とMF洪潤紀(3年)が肉弾戦もいとわない素早いアプローチを披露。青森山田のキャプテンを務めるDF山本虎(3年)も「入りで相手に押される部分もありました」と序盤を振り返る。

 だが、ワンチャンスで獲物を仕留めたのはプレミアリーグEASTの得点ランクトップに立つストライカー。前半7分。右サイドでMF福島健太(3年)が時間を作り、外側を回ったMF杉本英誉(3年)がクロスを上げると、飛び込んだFW米谷壮史(3年)のヘディングが鮮やかにゴールネットを揺らす。「試合の前からクロスに対する入り方はチームで共有していた」という11番の先制弾。青森山田が1点をリードする。

 一気に踏み込んだアクセル。24分。左サイドをMF川原良介(3年)が単騎で崩し、折り返しに合わせた米谷のシュートはDFに阻まれたものの、こぼれを福島が冷静に蹴り込んで、2点目。27分。中央からMF芝田玲(3年)が完璧なロングスルーパスを左へ通すと、抜け出した川原はGKも冷静にかわして、3点目。青森山田が止まらない。

 國學院久我山も35分には相手のパスミスを拾ったFW佐々木登羽(3年)の仕掛けから、MF山脇舞斗(3年)が決定的なシュートを放つも、ここは青森山田のGK鈴木将永(3年)がファインセーブで回避。「速い判断と速いパススピードで圧倒するのは久我山の形としてあるんですけど、そこで圧倒することができなくて、相手のサッカーに持ち込まれてしまったと思います」(近藤)。前半は3-0で35分間が終了した。

 再び魅せたのは青森山田の11番。後半7分。DF菅澤凱(3年)のロングスローから、川原がヘディングで競り勝つと、腕で抑え込みながらマーカーとボールの間に身体をねじ込んだ米谷が左足でゴールを射抜いてみせる。「ゴールへの道を自分で作ったという感じでしたね」と自ら口にするストライカーの強烈な一撃で、4点目。

 9分。左から芝田が叩いたボレーは、國學院久我山のGK太田陽彩(2年)がファインセーブで凌ぐも、直後に杉本が蹴り込んだ左CKを、高い打点から山本が打ち下ろしたヘディングもゴールネットへ突き刺さる。「相手がゾーンだったので、飛び込めば絶対に勝てると思っていました」というキャプテンのダメ押し弾で、5点目。大勢は決した。

「もう相手が5点も獲って勝負が終わったあとだから、力を抜いてくれたんだろうけど、私たちのイメージとしては最後の10分、15分ぐらいが一番良かったです」と李済華監督も話したように、終盤には國學院久我山が見せた意地の反攻。

 25分。高い位置での混戦へ果敢に山脇と近藤が突っ込み、粘って粘ってボールを残した流れから、左へ持ち出したFW下塩入俊佑(3年)が打ち切ったシュートは右スミのゴールネットへ吸い込まれ、ようやく1点を返すと、35+4分にもエリア内で山脇の巧みなキープから、佐々木の落としを思い切って叩いた近藤のミドルが、GKから逃げるような軌道でゴール右スミへ飛び込む。

 それでも、ファイナルスコアは5-2。「たぶん周りから見ている以上に、実力差を自分たちは感じました。5失点は入れられるべくして入れられたというか、それぐらいの差はあったのかなと思います」と話したのは國學院久我山のキャプテンを任されているDF普久原陽平(3年)。青森山田が3回戦へと勝ち上がる結果となった。

 試合後に國學院久我山の李監督が話していた言葉が印象的だった。「ウチに良いところもあったんですけど、逆にそれでも追い付かないんだから、相手の力があったんでしょうね。プレミアで何年も頑張って、選手権もタイトルを獲って、そういうところの強さは感じます。ウチの子たちもそれなりに頑張っているんだけど、それが押し潰されるぐらいの強さが向こうにあったんでしょう」。この指揮官からこういうニュアンスのフレーズが出てくるのは珍しいだけに、それだけ肌を合わせた者が突き付けられる青森山田の強さが、際立っているということなのだろう。

 実は青森山田はプレミアリーグでの直近8試合に加え、今大会のここまでの2試合を合わせて、“全国大会”では10試合連続で失点を喫している。「やっぱりトーナメントでここから勝っていくためには、この失点が少し邪魔になってくるかなと感じますし、逆に点を獲り切れなくなってきた時に、先に失点してしまうと、チームに与える影響も大きいので、勝ったことに関しては選手たちを褒めたいですけど、改善するところはあるかなと思います」と正木監督が話せば、「10試合連続失点というのは、山田のやるべきサッカーとしては凄く良くないことだと思うので、もう1回失点癖をなくしたいと思っています」と山本。2年ぶりの夏の覇権奪還に向けて、改善点は明確だ。

 だが、失点が続いている10試合の結果は、7勝2分け1敗。無得点だったのは、ここまで今シーズン唯一の黒星となっているプレミアのFC東京U-18戦だけで、他の試合はほとんどで複数得点を叩き出して、白星を引き寄せてきた。「前の選手のクオリティが上がって、攻撃のバリエーションが増えてきているので、そこが一番成長しているところかなと」(山本)。今年の青森山田は打ち勝てる逞しさも持ち合わせている。

「昨日も市船の波多(秀吾)監督と喋っていたんですけど、それこそ昔の市船や国見は、向かってくる相手をしっかりなぎ倒して勝ってきているわけで、そこで勝つために必要な部分って何かなと言ったら、たぶん自分たちのサッカーに自信を持っていたのだと思うので、そういったところをしっかり見習って、相手じゃなく、まず自分たちにベクトルを向けてやろうと。明日も明秀日立が何をしてくるかわからないですけど、そういう中でも、何が起きても良いような準備というのは、このインターハイに向けてやってきていたので、そこは今の成果として出ているんじゃないですかね」(正木監督)。

 得点を挙げても、失点を喫しても、ベクトルを向けるべきはすべて「自分たちがどうあるべきか」。ブレない基準を携えた青森山田は、やはりとにかく、強い。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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