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[MOM4387]尚志DF高瀬大也(3年)_高まる集中力。弾く球体。轟く咆哮。気合の守備で前回王者をシャットアウト!

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尚志高が誇る護り人、DF高瀬大也(3年=武南ジュニアユースフットボールクラブ出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.31 インハイ3回戦 前橋育英高 0-1 尚志高 東光スポーツ公園球技場B]

「1点獲って、そこからはずっとゼロで耐えるという試合の形になったので、最後は本当に気持ちで守るというところで、ヘディングでクリアしても、スライディングでブロックしても、みんなで声を張り上げることによって、チームの士気も高まって、全体の雰囲気も上がるので、そこはみんなで意識して声を掛けてやりました」。

 闘志が全身から発散されていた。ヘディングでクリアしても、スライディングでブロックしても、ワンプレーごとに大声を発する。時間を追うごとに気合が乗り、集中力を増していく。まさに獅子奮迅。尚志高(福島)を後方から支えるセンターバック。DF高瀬大也(3年=武南ジュニアユースフットボールクラブ出身)の存在感が、負けられないビッグマッチで一際輝いた。

 昨年度の大会で日本一を経験しているディフェンディングチャンピオン、前橋育英高と向かい合った3回戦。「やっぱり対戦表が決まった時に、3回戦で前橋育英と当たるヤマで、まず一戦一戦が大事でしたけど、ここが大一番というのはみんなで話していました」と高瀬。この試合の意味はみんなが理解していた。

 前半12分にPKで先制したものの、以降は基本的に相手がボールを握る展開に。尚志は守備の時間が長くなっていくが、それは高瀬にとっても織り込み済み。前に並ぶMF神田拓人(3年)とMF藤川壮史(3年)のドイスボランチに中央を閉じさせながら、自身も入ってきたボールにはセンターバックの相方でもあるDF市川和弥(3年)とともにシビアに対応。相手フォワードの自由を奪い続ける。

 今シーズンから復帰したプレミアリーグでの経験は、彼らに確かな自信をもたらしていた。「プレミアでも握られる試合が多くて、そこではよく経験できていたので、今日も握られることは予想していましたけど、握られた中でも全然負ける気はしなかったので、自信を持って戦えました。それこそプレミアはJクラブが多くて、みんな回してくるんですけど、レイソル戦は耐えて、耐えて、最後に点を決めて勝つことができましたし、今年はプレミアでも1点差のゲームも多くて、そういうリーグ戦を経験できて、耐える力がものすごく付いたと思うので、そこはもう尚志の弱みから強みに変わったと思います」(高瀬)。まさに『耐える尚志』。その中心にこの3番が逞しくそびえ立っている。

 吠える。ヘディングでクリアしても、スライディングでブロックしても、ワンプレーごとに大声を発する。それは仲村浩二監督も「大也も和弥も、あんなに声を出して盛り上げるヤツらじゃないんですけど、今日は本当に“山田みたい”でしたね」と言及するほど。ただ、彼らは意識的にそう振る舞っていたわけではなさそうだ。「1人1人の気持ちが入っていただけで、そういう打ち合わせとかはなかったです(笑)」(高瀬)。それだけ気持ちが乗っていたということだろう。

 最後は終盤に投入されたキャプテンのDF渡邉優空(3年)を中央に置き、左に入る市川と3バックを形成し、相手の猛攻を跳ね返し続けると、試合終了のホイッスルが耳に届く。「守備のところでは相手のキーマンを潰せましたし、そんなに相手のシュートもなかったと思いますし、守備陣としてゼロで終われたのは100点で捉えていいかなと思います」と笑った高瀬は、渡邉と市川と抱き合って、勝利の歓喜を共有した。

 準々決勝の相手は、インターハイの優勝経験もある強豪の桐光学園だ。難敵相手に勝利を収めた次のゲームだけに、高瀬も改めて気を引き締める。「1回戦と2回戦では3失点してしまったんですけど、守備の集中力は今日の試合で変えられたかなと。次の桐光戦もディフェンス陣がきっちり守れたら、攻撃陣は絶対に決めてくれると思いますし、絶対に勝てるので、守備はゼロで行きたいと思います」。

 今大会の尚志の登録メンバーは、20人すべてが3年生で占められている。「自分たちは1年生の時から『他の学年とはちょっと仲の良さが違うな』というのがあって、寮でも食堂でも僕らのは他の学年以上にみんなで固まってゴハンを食べているぐらい本当に仲が良いんです」。高瀬は仲間のことをそう語って、笑顔を覗かせた。

 厳しい戦いが続くのは、十分過ぎるほどわかっている。でも、入学してから2年半を一緒に過ごしてきた20人で臨んでいる、この最後の夏の全国をより最高の思い出として彩るためには、まだまだもうひと踏ん張りが必要だ。高瀬の決意が力強く響く。

「尚志にはベスト4という壁があるので、1つ1つ勝って、最後に優勝で終われたらと思います」。

 そのためにはこの男のさらなる奮闘が必要不可欠。尚志が誇る屈強な護り人。チームをまだ見ぬ景色へと導くため、すべての持てる力を勝利に捧げる高瀬の覚悟は、もうとっくに定まっている。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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