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[MOM4395]明秀日立MF吉田裕哉(3年)_「チームを勝たせたい」。キツイ時にも仲間のために走った司令塔

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全国決勝でも上手さと走力を発揮した明秀日立高MF吉田裕哉(3年=FOURWINDS FOOTBALL CLUB出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.4 インハイ決勝 桐光学園高 2-2(PK6-7)明秀日立高 花咲スポーツ公園陸上競技場]

 延長戦の苦しい時間帯でも献身的にファーストディフェンスを徹底。そして、ボールを奪い返し、精度を発揮し、ドリブルで仕掛けてCKを獲得した。「キツかったですね。去年からずっとそこも取り組んできて、一個上に(現新潟医療福祉大MFの)村田楓太選手っているんですけれども、あの選手もチームがキツイ時に走れるしというのがあった。自分もそこを憧れにしてやってきた」。明秀日立高(茨城)のMF吉田裕哉(3年=FOURWINDS FOOTBALL CLUB出身)は、全国決勝で先輩のように走り、萬場努監督も評価するパフォーマンスで優勝に貢献した。

 70分間でも一際多くの運動量。相手ボールホルダーに幾度もアプローチをかけ、スライディングタックルで突破を阻止。浮き球を巧みに収めるMFは、「セカンドボールを拾うということは、自分が1年生の頃から伊藤(真輝)コーチに口酸っぱく言われてきて、やってきたこと」というセカンドボールの回収も繰り返した。

 そして、ディフェンスラインにまで戻ってシュートをブロックするシーンや、インターセプトから一気に30~40mをスプリントするシーンも。「トップチームだけじゃなくて、セカンドチーム、サードチーム、フォースチーム全員が常にトップチームに入りたい、勝たせたいと思ってやっているので、競争してきた仲間がいるからこそ頑張ってチームを勝たせたいという思いでした」。2点リードを追いつかれ、その後も苦しい時間帯が続く中、「試合中一個球際で負けただけでも、悔しい」というMFは、その負けん気の強さを際の攻防で表現し、味方を鼓舞する声も続けていた。

 そして、4-1-4-1の2シャドーを務める吉田はチームで一番と自負するキープ力を発揮する。浮き球を収めてポイントとなり、コンビネーションでゴール前へ侵入。正確な展開のパスを見せたほか、2点目に繋がる組み立てのシーンにも絡んだ。ボールロストも増える試合だったが、目に見えにくいサポートの部分も見逃せない。「吉田はウチの司令塔なので、あれくらいやってもらわないと困る」と指揮官。他にもヒーローたちがいる中、コーチ陣と相談した上で、吉田を決勝のマン・オブ・ザ・マッチに推した。

 吉田は2回戦(対関西大一高、大阪2)で1ゴール1アシストの活躍。青森山田高(青森)との3回戦では縦に速くなる展開の中でボールを奪う力とプレスをかわして前進する力も見せ、勝利に大きく貢献した。自分のことよりもチームが勝つことを最優先しているが、全国トップレベルとの対戦で自信も掴んだようだ。

「(茨城県1部リーグに所属していることもあり、)これまで、静岡学園や青森山田だったり、高校年代トップレベルのチームとやる機会はそんなになかったんですけれども、大会を通してトップ・オブ・トップの選手にもやれることが多いと実感できた」

 一方で幾度も口にしていたのは「疲れている時に何ができるか」。この日は、相手よりも1試合消化ゲームの多い中、後半や延長戦で試合を決めるようなプレーをすることができなかった。「個人的な課題は疲弊している時に判断が遅くなってボールをつつかれることがあった。疲れている中でいつも通りに技術や推進力を発揮することは課題かなと思います」。大会優秀選手にも選出された「上手くて走るMF」は課題を改善し、より苦しい時に輝く選手になる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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