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首位との直接対決で課題露呈…城西国際大は関東昇格遠のく1敗

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[9.8 千葉県大学リーグ1部秋期第1節 城西国際大1-3明海大 明海大G]

 関東昇格は厳しい情勢となった――。平成25年度千葉県大学サッカーリーグ 1部は8日、秋期リーグが開幕。第1節が行われ、春期を3位で折り返した城西国際大は首位・明海大に1-3で敗れた。

 来季の関東大学リーグ2部参入を懸けた参入戦へ進出できるのは優勝した1チームのみ。勝ち点4差の首位・明海大と戦うこの試合がどれだけ重要かということは選手たちも十分に理解していた。ただ序盤こそ、試合の流れを掴んでいた城西国際大だったが決定機を逸すると、先発が1、2年生のみのチームは球際、競り合いの弱さを露呈。リードを広げられる中でアグレッシブさも欠くような内容で敗れ、首位との勝ち点差は7へ広がった(残り6試合)。試合後は涙する選手も。ゲーム主将を務めたMF橋本渉(2年=広島皆実高)は「前期の途中くらいからこの一発目の明海戦が大事な試合になるのはみんな分かっていて、夏休みもやってきたし、できることをやったと言えば、やったと言えるんですけど、もっと自分たちでやらなければいけない。上に行くためには、思っているよりも、もっと、もっと、やらなければいけない。それを痛感しました。簡単じゃないです」と唇を噛んだ。
 
 コンサドーレ札幌のチーム統括部長や横浜F・マリノスのゼネラルマネージャー、2010年FIFAワールドカップ日本代表のチームコーディネーターなどを歴任した小山哲司氏を監督に迎え入れた11年から本格強化2年目。Jクラブユースや強豪校から実力者が多数入部した昨年、千葉2部リーグを制した城西国際大は1年での千葉1部突破、関東昇格を目指したが、春期は5勝2敗に終わり、この試合は逆転優勝への大一番だった。

 4-3-3システムを組んだ城西国際大の先発はGKが大野哲煥(2年=広島ユース)で4バックは右から津川暢彰(2年=札幌U-18)、廣瀬智行(1年=北海道大谷室蘭高)、重行拓也(2年=広島ユース)、中原翔矢(1年=広島ユース)。中盤の底の位置に橋本と桑野淳史(福岡U-18)が入り、トップ下が加藤潤也(1年=米子北高)。3トップはFW浜田幸織(1年=諫早商高)を頂点に、右FWが竹本佳(1年=関東一高)、左FWを鯉沼将希(1年=東京Vユース)がそれぞれ務めた。

 その城西国際大は開始2分にいきなりビッグチャンスを迎える。相手をPAへ押しこむと、浜田が右前方へ出したスルーパスから鯉沼が決定的な右足シュート。ただ、これは飛び出したGKに阻まれて絶好の先制機を活かすことができない。ただ主導権を握った城西国際大は加藤が鋭いターンでマークを外し、橋本の背後を突くボールなどからチャンスメーク。サイドの高い位置へボールを運ぶと鯉沼がキレのあるドリブルで仕掛け、SBのオーバーラップを交えた攻撃でゴールへ迫った。

 15分には左サイドからドリブルで仕掛けた鯉沼が右足シュート。24分には加藤がDF3人に囲まれながらもキープして左サイドへ展開すると、中原のクロスを浜田が決定的な形で合わせた。ただ、前半半ば頃からセカンドボールなど球際の競り合いで劣勢となり、中盤で相手に前を向かれるシーンが増加。ボールホルダーへのプレッシャーが遅れ、最終ラインがズルズルと下がってしまうなど相手に押し返されてしまう。

 そして30分だ。ハーフウェーラインを越えた位置で桑野がボールを失うと、カウンターから先制点を献上してしまう。PA手前でボールを動かされ、最後はスルーパスからFW高橋完治(4年=千葉U-18)にゴールへ押し込まれてしまった。先制された城西国際大も前半終了間際の41分にチャンスをつくる。右スローインから浜田が中央へフリックし、加藤が左前方へスルーパス。これに鯉沼が反応したが、決定機は再びGK清水章登(3年=千葉U-18)に阻まれてしまった。

 逆に後半5分、自陣PAからクリアしようとした廣瀬がFW田中輝(4年=かえつ有明高)に激しく当たられてボールを失うと、そのままGKとの1対1を決められて痛恨の失点。さらに8分には相手の右クロスを逆サイドで拾われると、PAでMF加藤博人(2年=仙台ユース)にシュートを許して0-3となった。重行が「入りは悪く無いと思った。チャンスも結構作れていた。でも、そこで点を取れないというのが今の自分たちの実力だし、ミス1本で失点してからそれまでしていたサッカーができなくなってしまうというのも今の自分たちの実力。そういうところから積み上げていかないと、関東に上がることは難しいし、千葉も勝てない」と指摘した攻守でのミスと3失点。これで白星は遠のいた。

 一方、3-0で余裕のできた明海大は城西国際大のプレッシャーをいなしてショートパスをつなぎ、巧みに時間を削っていく。それでも勝機はまだあった。城西国際大は11分に浜田と鯉沼に代えてFW湯本直矢(4年=東京都市大塩尻高)とFW井之元和之(2年=都城高)を同時投入。すると、17分には左オープンスペースを突いた湯本からPAの井之元へパスが入り、そのリターンを受けた湯本がパンチのある右足シュートを放った。そして20分には早くも3枚目のカードとなるMF米澤康太(2年=都城工高)を竹本に代えて送り出す。

 技巧派の1年生に代えて推進力のある上級生3人が加わったことで攻撃に迫力が出てきた終盤。湯本の飛び出しと津川の攻撃参加などからチャンスもつくった。そして30分を過ぎると、小山監督は185cmのCB廣瀬を前線へ上げてパワープレーに出る。対する明海大は足を攣らせる選手が続出。城西国際大は1点を奪えば一気に飲み込むチャンスもあったが、PAへのフィードからDFと入れ替わった米澤がゴールを決めたのは後半アディショナルタイム突入後で反撃はあまりにも遅すぎた。

 小山監督は「コンディションが悪いわけではないと思う。入れ込み過ぎて悪かったのか、これは分からないから選手に聞いてみたい。初戦なのに負けて泣いている選手もいたし、やらなきゃ、っていうのはあったけど、良い方に出ていなかった」と無念の表情。両チームに大きな差があったとは思えない。橋本も「1試合では誰でも1、2回はミスするから100パーセントでできる訳ではない。そういうところを潰していくことも大事なんですけど、練習したことが出ていない訳ではない試合だった」と振り返る。夏休みには柏レイソルと練習試合を行ったほか、約2週間、連日の2部練習。ホームグラウンドのPRINCE TAKAMADO MEMORIAL SPORTS PARK(高円宮殿下記念スポーツパーク)で徹底してトレーニングを積んできた。その成果は随所で発揮されていた。

 ただ、課題を突きつけられた90分間でもあった。失点に直結してしまうミスが出てしまったほか、決定機を逸して流れを掴みきれなかった。そして球際の攻防で下回り、ビハインドを跳ね返すようなパワーもなかった。試合前に指揮官が「まだまだ甘い」と指摘していた通りの結果。小山監督は「これが今の、ウチのチームの現実です。フィジカルの弱さ、球際の弱さ。それはこれからの課題です」。

 リーグ戦はまだ始まったばかり。優勝は他力本願となったが、この敗戦を糧に成長し、勝ち続けるしかない。重行は「まだリーグ戦は続きますし、状況はかなり難しいと思いますけど、消化試合にするのと、ちゃんとした目標にしてやるのとでは意味の違う試合になると思うので、先につながるいい準備をして、リーグ戦をやっていきたいです」と前を向いた。主力は1、2年生。将来を見据えて、今できることを続けていくしかない。

(取材・文 吉田太郎)

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