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壁を越える手前の成長の時期…城西国際大は苦しみながらも勝ち点3獲得

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[9.22 平成25年度千葉県大学サッカーリーグ 1部秋期リーグ第3節 千葉大2-3城西国際大 城西国際大G]

 2010年FIFAワールドカップ日本代表のチームコーディネーターなどを歴任した小山哲司氏を監督に迎え、本格強化2年目の城西国際大は22日、ホームグラウンドのPRINCE TAKAMADO MEMORIAL SPORTS PARK(高円宮殿下記念スポーツパーク)で開催された平成25年度千葉県大学サッカーリーグ 1部秋期リーグ第3節で千葉大と対戦。2-2の後半20分にFW加藤潤也(1年=米子北高)が決勝ゴールを決めて3-2で競り勝った。

 勝ち点4差を一気に詰めたかった秋期第1節の首位・明海大戦(9月8日)を1-3で敗戦。優勝チームが出場する関東大学リーグ参入戦出場が非常に難しい状況となっている。小山監督が「上がったり、下がったり、チームに波がある中でここまで来ているけれど、今は底に近い状態。夏の最初の頃が一番良かったかもしれない。今はつくしが土から頭を出す前のところにいる」と説明するように、チームは現在、ぶつかっている壁を乗り越える手前の成長段階だ。まだ思うようなサッカーを表現しきれていない中、我慢しながら精神面、技術面でも成長して前に進むことができるか。

 1、2年生中心のチームは対戦相手の4年生にフィジカル差を見せつけられるなどゲームで苦しみ、優勝争いから一歩後退した不安感もある。MF米澤康太(2年=都城工高)は「先々週の負けから気持ちの切り替えはみんなできていると思っていましたが、引きずっている部分もあったかなと感じています」と指摘。ただ、第1節の敗戦から台風18号の影響によって順延となった第2節を挟んで2週間、イレブンは目の前の試合に集中してトレーニングを重ねてきた。そして後期開幕戦から先発メンバーを6人チェンジするなど、新たな意欲もパワーとした城西国際大はこの日、苦しい展開の試合で勝ち点3を奪い取る。

 4-5-1システムのGKはリーグ戦デビューとなる松永安彦(2年=大津高)で4バックは右から、梅野健太郎(1年=福岡U-18)、廣瀬智行(1年=北海道大谷室蘭高)、重行拓也(2年=広島ユース)、津川暢彰(2年=札幌U-18)。中盤は橋本渉(2年=広島皆実高)と小栗和也(1年=北海道大谷室蘭高)がダブルボランチを組み、両ワイドは右が鯉沼将希(1年=東京Vユース)で左が米澤。シャドーストライカーの位置に加藤が入り、最前線にはFW香川滉太(2年=瀬戸内高)が配置された。

 先発復帰した米澤が決めた先制点はまさに“電光石火”とも言える一撃だった。試合開始直後の前半1分、スルーパスで右サイドからPAへ飛び込んできた梅野の折り返しを米澤が身体ごとゴールへ押し込んで早くもスコアを動かす。ただ、あまりにも早すぎた先制点がチームのリズムを崩した。一気に追加点を狙ったチームは攻める意識が強すぎて攻撃偏重に。そして14分にスルーパスで抜け出した香川のシュートがゴールラインすれすれで相手DFにクリアされると、展開は一変した。直後にCKから相手のカウンターを食らうと、切り替えの速さで完全に相手の遅れを取るなど立て続けに相手に攻めこまれ、16分には千葉大MF大橋幸司(1年=麗澤高)に左サイドからニアサイドへ左足シュートを叩きこまれてしまう。
 
 それでも城西国際大はいつもよりも高いポジション取りから高い技術で崩しに関わる橋本や加藤のパスにダイナミックな動きが持ち味の香川や米澤が絡んで相手を押し込んでいく。ただ、PAで粘る千葉大から勝ち越し点を奪うことができない。逆に34分には縦パス1本でDFが相手FWに振り切られて決定的なピンチ。それでもこの日が初出場で「高校3年の時はずっとトップチームで出ていたので、逆にBチームというのはあまり経験もしたことがないですし、初めてこういう環境でBチームというのを経験して気持ちが折れそうになった時もあります。でも、目標だけは見失わないようにずっと練習してきたので今回は出られて嬉しい」と気迫十分だった松永がビッグセーブでチームを救う。すると直後の攻撃で右サイドへボールを運んだ城西国際大は、鯉沼の右クロスを香川が打点の高いヘディングシュートでゴールへ叩き込んで勝ち越した。

 ただその後、城西国際大はサイドをコンビネーションで崩すシーンなどがありながらもゴールが遠かった。左サイド中心のやや攻め急いだ攻撃と守備のバランスを欠いたこともあり、後半はFW秋谷直紀(4年=宇都宮東高)のキープ力と両サイドのスピードを活かして攻める千葉大の前にピンチの連続。ボールの失い方が悪く、前からプレッシャーをかけきれなかったチームは立て続けにカウンターから右サイドを崩されてピンチを迎えると11分、相手の左クロスをクリアしきれずにこぼれ球を千葉大MF古村広明(4年=公文国際学園高)にゴールへ叩きこまれてしまった。

 追いつかれた城西国際大は13分に小栗に代えてMF田中崚平(1年=広島皆実高)、17分には鯉沼に代えてMF竹本佳(1年=関東一高)をピッチへ送り出す。田中が思い切ったミドルシュートへ持ち込み、「それまでシュートが少なかったと思いますし、ディフェンスの人はディフェンスだけ、攻撃の人は攻撃だけという感じだったので得点もできなかったし、失点もしてしまったように思ったので、自分は攻守に絡んで行こうかなと思っていました」と振り返った竹本がスペースを巧みに突くなどゴールへ迫った。そして20分、PAでの混戦からボールを拾った加藤が個人技でDFを外して勝ち越しの右足シュートをゴールへねじ込んだ。

 30分には梅野に代えてDF中原翔矢(1年=広島ユース)を投入。対人に強い津川を右サイドへ移して相手の突破口に蓋をした城西国際大は逆に32分に竹本のラストパスに米澤が飛び込み、35分にも津川と竹本のコンビで右サイドを崩すなど外からの攻撃でチャンスをつくり出す。4点目を奪うことはできなかったものの、終盤はサイド攻撃で押し切って3-2で勝利。苦しんだ試合を勝利して勝ち点3を加えた。

 1点差で競り勝ったものの内容は決して良いものではなかった。明海大が勝利したため、優勝争いも依然厳しい状況のままだ。関東昇格への道のりは決して平坦なものではない。その中で現在、自分たちを苦しめている壁を破らなければいけないことは選手それぞれが感じている。香川は「練習ではみんな失敗を恐れずに思い切ってプレーしていますけど、公式戦になるとやっぱり『負けられない』といった思いがあって、前に出すべきところを横だったり、後ろだったり消極的になったりしている。もっと伸び伸びやってミスしたらカバーしてというように、思い切ってやった方がいい」と語り、米澤は「去年に比べたら(相手のレベルは)高くなっているし、相手も引いてきたりするので、そこで崩せるような能力をつけていかないとこれから先、またキツくなってくる。練習で頑張って、試合で出せるようにしていくしかないと思います」。指導陣に頼るのではなく、選手たちそれぞれがよりがむしゃらにサッカーに取り組み、壁を突き破らなければ何も変わらない。昨年、圧倒的な実力差を見せつけて千葉リーグ2部を制し、Jクラブや関東リーグクラスの練習試合を経て経験値を高めてきたチームが迎えている試練の時期。1、2年生中心の城西国際大は苦しんでいるシーズンの中で、個人、チームとして変わるきっかけを掴むことができるか。

[写真]後半20分、城西国際大はFW加藤が決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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