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[MOM904]流通経済大FW前田陸王(4年)_名門でレギュラー争いを勝ち抜いた成長株「今出られない選手は感じてくれるものがあると思う」

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大学入学後初の1試合2ゴールを決めたFW前田陸王

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.30 関東大学L1部第15節 拓殖大1-3流通経済大 拓殖大G]

 約1か月半の中断を明けても、流通経済大の勢いは衰えなかった。拓殖大と対戦すると、前半12分にMF鈴木奎吾(2年=清水ユース)のクロスをFW宮田和純(4年=FC東京U-18)が頭で合わせて先制。同点に追いつかれて折り返した後半には、15分に宮田のシュートのこぼれ球を押し込んだFW前田陸王(まえだ・りお、4年=東海大札幌高)のゴールで勝ち越し。さらに同35分には宮田の左クロスから前田が左足で蹴り込んで、ダメを押した。負けなしを9戦に伸ばし、勝ち点を30に伸ばした流経大は、暫定で首位の筑波大と同勝ち点で並んだ。

 今年のチームを立ち上げたときでも、今の姿を想像することは出来なかったという。前田は昨年まで主にセカンドチームに帯同。そのセカンドチームでもコンスタントに試合に絡むことが出来ない選手だった。最終学年となった今年からトップチームに加わったが、「ピッチに出ているイメージよりも、応援だったり、チームのためにやろうと考えていた」。

 しかし練習から真面目に取り組む姿を、首脳陣は見ていたようだ。さらにこれまでボランチを主戦場とし、トップ下ではプレー経験のあった前田に、ウイングでのプレーを指示。「最初は自分の良さが出しにくいポジションかなと思った」という前田だが、練習で一から取り組むことで新境地を開拓。「自分の良さはこういうところだったんだ」という新たな発見があったという。

 そして5月13日の桐蔭横浜大戦に途中出場して関東大学リーグデビューを飾ると、出場4試合目の東洋大戦で初ゴールを記録。そしてこの日、初めて1試合2ゴールを決めるなど、ここまで8試合に出場して、チーム内4位の4得点を決める活躍を見せている。

「チームにいい影響を出したいと思ってやっていたら自然と試合に絡めるようになった。真面目にやってきたと思っているし、そこは自分でも評価していいのかなと思うけど、まだまだやらないといけないことはたくさんあると思っているので、積み上げていきたいです」

 プロ入りに憧れて北海道から上京。ただ2年生の時の4年生がFW満田誠主将(広島)を筆頭に12人がJリーグ入りした伝説の世代だったように、「プロを考えて流経大を選んだけど、トップチームの試合を見たときに、これは無理だなと正直思いました」と振り返るほど、絶望した思い出がある。

 しかし3年経った今、当時の先輩たちが立っていた舞台、羨望の眼差しを向けていた舞台でプレーし、活躍することが出来ている。だからこそ前田も「練習からしっかりやっていれば、こういうところで結果を出せるというのを自分が見せられたらと思う。今試合に出られない選手は感じてくれるものが、絶対にあると思います」と実感を込めて話す。

 残り7試合となったリーグ戦、そして大学選手権(インカレ)へと続く道で、未来が変わる可能性は十分にある。サッカーとは関係のない会社から内定を貰っているという前田だが、プロ選手としてプレーする夢を諦めたわけではない。「チャンスを掴むために毎日、毎日を積み上げて、それがダメでも得るものはあると思うので、やり続けるしかないと思っています」。どんな結末になろうとも、名門・流経大でレギュラー争いを勝ち抜いた経験は、人生の大きな糧になっていくはずだ。

(取材・文 児玉幸洋)
●第97回関東大学L特集
児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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