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2度の監督交代乗り越え…長友「サッカー選手としての土台ができた」

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 ナイキフットボールが世界規模で展開しているスカウトプロジェクト「THE CHANCE」の特別スカウトとして日本代表DF長友佑都(インテル)が19日、都立駒場高を訪問した。紅白戦形式で行われたセレクションから選ばれたのはMF今井淳貴(2年)。長友は選考理由について「テクニックもそうだけど、オフザボールの動きが素晴らしく、両足で蹴れる」と説明。今井は7月21日~22日に開催されるジャパンファイナルへの切符を手にした。

「初めての経験だったので、すごく新鮮で楽しかった。責任もあるし、選手の人生がかかっている。僕自身も緊張しました」。“スカウティング”を終えた長友はそう言って笑顔を見せた。「意欲や、チャレンジしているかどうか、ストロングポイントを持っているかどうかを見ていた」と明かし、「うまいだけでは世界に通用しない。今のサッカーは、まず走れないと通用しない。すべての能力をバランスよく持っている選手がいいですね」と持論を展開した。

 無名の高校時代を過ごした長友自身、明治大在学中にF東京と行った練習試合でクラブ関係者の目に留まり、プロへの道を切り開いた。北京五輪、南アフリカW杯、海外挑戦――。目の前のチャンスをつかみ、一歩一歩、時には一気にステップアップしていった。

「僕自身、チャンスをつかんできて今の自分がいる。チャンスがめぐってくるかどうかは日々の自分の行いや努力次第で変わってくる。日々、やるべきことをやって、いざチャンスが来たときには冷静に平常心で、そしてチャレンジしていくことが大事になる」

 日本代表のレギュラーになり、インテルという世界有数のビッグクラブでプレーする長友だが、今なお目の前のチャンスをつかもうと、日々の精進を欠かさない。昨季のインテルでは2度の監督交代を経験し、そのたびに先発を外れる時期もあったが、最終的にはすべての監督の下でレギュラーを任された。「苦しいことが多かったシーズンだった」と振り返るが、だからこそ価値ある1年になった。

「苦しい分だけ自分が成長できたと思っている。やっとサッカー選手としての土台ができたかなと。あとから振り返ったとき、この1年を除くことはできないと思うぐらい、大きな1年だったと思います」

 ようやくできたという土台。それはプレー面ではなく、メンタル面だという。「メンタルでプレーは変わってくる。いくら技術があって能力があっても、メンタルがなかったらそれをプレーで発揮できない」。試合中に何が起きようと、慌てず、冷静さを保つ。あるいはピッチ外でクラブに何が起きようと、自分自身の立場がどう変わろうと、ブレない精神面の強さを持つ。

 長友は、監督が何度代わろうと「またチャンスが訪れたなという感覚だった」という。「自分が成長するチャンスを与えてもらったなと。自分と向き合う時間もつくれたし、努力も今まで以上にできた。そういった意味では僕にとってチャンスだった」と胸を張った。

「僕はすべての出来事をチャンスだと捉えている。それは毎日の練習とか、サッカーだけではなくて、出会いもそうだし、食事もそうだし、寝ることもそう。すべてがチャンスだと思う。僕には世界一のSBになりたい、世界一になりたいという夢がある。そのために、自分に起こる出来事はすべてチャンスだと思って取り組んでいきたい」

 そう誓う長友の言葉は、これからプロサッカー選手を目指すプレイヤーに向けたメッセージでもある。

[写真]長友佑都に“スカウト”された都立駒場高のMF今井淳貴(左)

(取材・文 西山紘平)

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