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開催国カタールがアジア連覇に王手!! 緊急就任から2か月での快挙にスペイン人指揮官「全てを変えたつもりはない」

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マルケス・ロペス監督

[2.6 アジア杯準決勝 イラン 2-3 カタール アルトゥママ]

 開催国カタールが準決勝でイランとの死闘を制し、前回大会に続く連覇に王手をかけた。大会直前に就任したスペイン出身のマルケス・ロペス監督は、わずか3か月間の在任でタイトルマッチに導いた。

 イラン戦ではこれまで採用していた3-5-2のポゼッションスタイルではなく、公式登録199cmの長身SBホマム・アフメドを左サイドハーフで初先発させる4-4-2の速攻スタイルを採用。前半早々にFWサルダル・アズムンのスーパーゴールで先制されたものの、中盤を削ってあえてオープンな展開にすることで打ち合いに持ち込み、FWアクラム・アフィフの1ゴール1アシストで前半のうちにひっくり返した。

 後半は選手交代も駆使しながら主力選手を起用し、普段どおりの試合運びに近づけると、最後は後半37分にエースのFWアルモエズ・アリが決勝ゴール。前回王者でなおかつホスト国という大きな重圧を跳ねのけ、2大会連続の決勝進出を果たした。

 1ゴール1アシストの結果に加え、相手に退場者も出させたアフィフは「とても誇りに思っている」と喜びのコメント。カタールW杯に続く母国開催に「W杯は非常に難しかったが、アジア杯は2度目の経験になる。前回経験を積んで大きな助けになったので、次の試合も良いパフォーマンスを発揮できると思う」と前向きに語った。

 全敗でのグループリーグ敗退に終わったW杯から一転、新指揮官の下で再び輝きを取り戻した。カタール代表は母国開催のW杯を終えて迎えた昨年2月、ポルトガル出身のカルロス・ケイロス監督を招聘したが、同年12月上旬に電撃退任。スペインで長年指導者キャリアを積み重ね、18年からカタールのアルワクラを率いていたマルケス氏が後を継いだ。

 指揮官は大会前の親善試合を1勝1敗で終え、アジア杯を厳しい状況で迎える形となったが、グループリーグは無失点の3連勝で首位通過。決勝トーナメントではパレスチナに2-1、ウズベキスタンに1-1のPK勝ち、そしてこの日はイランに3-2と失点を重ねつつも、接戦をしぶとく制しながら決勝に辿り着いた。

 難しい仕事をやり遂げようとしている指揮官はイラン戦後、この2か月間の歩みを振り返った。

「時間が足りない中で就任したのは事実だが、私は長い間カタールのリーグにいたので選手たちとの関係にはアドバンテージがあった。その道のりは困難だったが、選手たちが我々のアイデア、我々のゲーム、我々の哲学を共有してくれた。それがとても嬉しい」

 本大会までに与えられた時間は長くなく、大きな改革を断行するつもりはなかった。マルケス監督は前回アジア杯やカタールW杯を率いたスペイン人指揮官のジョアン・フェリックス氏の名前も挙げつつ、自身の取り組みを明かした。

「カルロスとフェリックスは素晴らしい仕事をしていたので、全てを変えたと言うつもりはない。2人のことをリスペクトしているので、私はサッカーについて自分が感じているアイデアをそこに乗せようとしてきた」

「自分のアイデアや自分の哲学を実践し、選手に伝えようとは心掛けてきたが、全てを変えたとは言わない。あらゆる監督にはそれぞれのスタイル、それぞれのアイデア、それぞれの哲学がある。私もただ自分のやり方を行い、選手たちに伝えることだけを心掛けていた」

 もっとも、大胆な改革は行わなかったといっても、この日採用した4-4-2のオプション布陣など采配が結果につながったのも確かだ。記者会見では決勝戦に向けた布陣に関する質問も飛んだ中、「まだ分からない。まずは今日の勝利を祝い、明日から準備したい」と手の内は明かさなかったマルケス監督。奇しくも決勝で戦うヨルダンとは、アジア杯前最後のテストマッチで対戦済み。その試合は1-2で敗れていたが、アジアの頂点を決めるビッグマッチでのリベンジを期する指揮官の采配にはさらなる注目が集まりそうだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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